2018年12月16日(日)



2018年11月30日(金)日本経済新聞 公告
所在不明株主の株式の競売又は売却に伴う異議申述の公告
株式会社サンプラネット
(記事)






「ゼミナール 会社法入門 第7版」 岸田雅雄 著 (日本経済新聞出版社)

第2章 株式と株主
T 会社法TODAY
3 株式はどうやって譲渡するのか
株券の取得と名義書換
株主名簿
株主の名簿記載の効力
「スキャン1」

「スキャン2」

 

 



「一に満たない端数の処理」に関する会社法の条文の一例

第二百三十四条
 次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において、
その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、
その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に
相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。

第二百三十五条
株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、
その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に
相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。

 

 

「保有議決権割合は、株主による『自己の計算』で決まるのではなく『株主名簿』で決まる。」
という点について書いた昨日のコメント↓。

2018年12月15日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181215.html

 

 


【コメント】
昨日のコメントでは、「保有議決権割合は、株主による『自己の計算』で決まるのではなく『株主名簿』で決まる。」
という点について考察を行いました。
昨日のコメントでは、”現実には言い出すとキリがない論点になるのかもしれませんが、”と書きましたが、
実務上の問題点を踏まえた上で「保有議決権割合」について議論をし出すと、
非常に様々な「保有議決権割合」の捉え方(計算方法)が考えられるわけです。
連結会計上は実質基準と言ったり支配力基準と言ったりしますし、証券制度上は共同保有と言ったりしますが、
実際には他者の保有分まで含めて「保有議決権割合」を算定した方が合理的な場面もあると言えるわけです。
ただ、最も明確であり判断の分かれようのない線引きは、
「保有議決権割合は、株主による『自己の計算』で決まるのではなく『株主名簿』で決まる。」
という考え方だと思います。
「『株主名簿』一本で『保有議決権割合』を算定する。」という考え方を行えば、
各株主の「保有議決権割合」は絶対的に一意に決まるのです。
また、「連結子会社株式を間接的に保有している場合」の取り扱い(連結上の種々の会計処理方法)についてふと思ったのですが、
例えば親会社が連結子会社から受け取った「受取配当金」勘定(営業外収益)は連結上相殺消去されるわけですが、
連結子会社株式を親会社が間接保有をしている場合は、
「連結子会社が連結会計上の親会社に対し支払った配当金額」(グループ内に支払った、内部取引として支払った配当金額)と
「親会社自身が当該連結子会社から受け取った配当金額」(個別上計上される配当金額)との間に差異が生じることになるわけです。
なぜならば、親会社自身は「連結子会社が連結会計上の親会社に対し支払った配当金額」のうち、
一部分の金額しか受け取らない(残りは連結子会社株式を共同保有しているグループ会社が受け取ることになる)からです。
連結子会社が株主に支払った配当金は、連結子会社株式を共同保有しているグループ会社をパススルーはしないのです。
連結子会社株式を、親会社は31パーセント、他のグループ会社は20パーセント保有している(計51パーセント保有している)として、
親会社に計上される連結子会社からの受取配当金勘定は配当金総額の31パーセント分である一方、
連結上は計51パーセント分の受取配当金勘定を相殺消去しなければならない、ということになるのではないでしょうか。
配当金総額の20パーセント分は、連結子会社株式を共同保有しているグループ会社に滞留する形になるのではないかと思いました。
連結精算表上、ごまかすような形になりますが、連結子会社株式を共同保有しているグループ会社が計上する受取配当金勘定をも
相殺消去できるのだと思いますので、結果的には数値上は辻褄は合うかもしれませんが、理論上は少しおかしいように思いました。
それから、「株主名簿」について会社法の教科書をスキャンして紹介しています。
「株主の名簿記載の効力」の説明には、昨日私が書きました内容と非常に類似した事柄が多数書かれているなと思いました。
名義書換をしない日本郵政(間接的な株主)を米アフラックの側から米アフラックの責任で持分法適用上の親会社と扱うことに
差し支えはない、という考え方に会社法制度上はなるのだと思います(直接の株主である信託会社はそのことに同意をするでしょう)。
最後に、紹介している2018年11月30日(金)付けの日本経済新聞の公告についてなのですが、所在不明という論点は度外視しますが、
「端株を所有している株主が株主名簿上存在している(株主名簿に端株を所有している株主が記載されている)。」という事例になります。
会社法の条文を読みますと、「一に満たない端数」や「一株に満たない端数」という文言が多数あります。
「新株予約権を行使した場合において、当該新株予約権の新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数が生じる場合」や
「新株予約権の数に一に満たない端数が生じる場合」のことまで会社法では想定されています(その趣旨の規定・条文がある)。
しかし、株式の単位(株式を把握する単位)は、現実には「1株」(現実には株式に端数は存在しない)だけだと思います。
その理由は、「株券」は1株単位で発行されるからです(そして、株主名簿上も1株単位で株主の名義を把握・管理します)。
「株券」に「0.5通」という概念(数え方)や「1.5枚」という概念(数え方)があるでしょうか。
「株券」というのは、「株式を所有している」という事実を証明するために作った証書(文書、紙)です。
会社法にも一定の規定がありますが、端株は即時金銭で処理し、会社には常に端株がない状態にしておかなければならないのです。


 



Effect of a shareholder's being entered up in a shareholder register.

株主の名簿記載の効力

 

In reality, there doesn't exist a shareholder who owns a fraction of less than one share.

現実には、一株に満たない端数を所有する株主というのは存在しないのです。

 

A share is issued in an integer (i.e. No fractions. No less than one. No more than one).
The reason why a share is issued in an integer is that a "share certificate" is issued in an integer.
Can you shop for "1.5 buns with a bean-jam filling" at a supermarket?
A company can't issue "0.5 share" nor "1.5 shares."
And a shareholder can't own "0.5 share" nor "1.5 shares."
A shareholder register manages a serial number on each share as well as a name of the shareholders.
Even in a Share Certificate-Not-Issuing Company, the company must manage a serial number on each share.
Just as you should think not in terms of a "click" but in terms of a "brick,"
you should think not in terms of the "digital" but in terms of the "analogue."

株式というのは、整数単位で(すなわち、端数が一切ない、1未満はない、1超はないという状態で)発行されます。
株式が整数単位で発行される理由は、「株券」が整数単位で発行されるからです。
スーパーで「饅頭を1.5個」を買うことができるでしょうか。
会社は「株式を0.5株」発行することはできませんし「株式を1.5株」発行することもできません。
そして、株主は「株式を0.5株」所有することはできませんし「株式を1.5株」所有することもできません。
株主名簿では、株主の名義と同様に、各株式の番号を管理します。
株券不発行会社においても、会社は各株式の番号を管理しなければなりません。
「クリック」ではなく「ブリック」で考えるべきであるように、「デジタル」ではなく「アナログ」で考えるべきなのです。

 

Each share has its own serial number on it,
even in a Share Certificate-Not-Issuing Company.

株式1株1株には固有の番号が付されているのです。
株券不発行会社においても、です。