2018年12月15日(土)



2018年12月14日(金)日本経済新聞
郵政、米アフラックに出資 3000億円 実質筆頭株主に 国内外で共同投資も
(記事)





日本郵政、アフラックに出資へ 4年後にグループ会社化

 日本郵政は、米保険大手アフラックグループに3000億円規模で出資する方針を固めた。
将来は議決権の2割程度を握る筆頭株主になる見通し。日本郵政はかんぽ生命保険とゆうちょ銀行の保有株の売却を進める
ことになっており、アフラックを新たな収益源とする考え。アフラックも日本郵政の販路で基盤を強化する。
 日本郵政はアフラックの持ち株会社の株式の7〜8%を取得する。アフラックの内部ルールでは、
4年後をめどに議決権が20%にあたる比率まで行使可能になる。日本郵政はアフラックを持ち分法適用会社とし、
グループ会社化する。ただ、日本郵政はアフラック側の経営には関与しない方向という。近く記者会見して発表する。
 アフラックは日本法人のアフラック生命保険が事業の柱で、がん保険では国内最大手。
売上高にあたる保険料等収入は1・4兆円と中堅生保規模だ。
 日本郵政はアフラックをグループ化することで、全国に約2万ある郵便局でのがん保険の販売を強化するとともに、
新商品の開発や資産運用などでの協力も進めるとみられる。
(朝日新聞 2018年12月13日23時46分)
ttps://www.asahi.com/articles/ASLDF64BVLDFULFA034.html

「日本郵政とアフラックが資本提携する」





企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(最終改正平成23年3月25日)

適用指針
会計処理
議決権の所有割合の算定
「第4項、第5項、第6項」

結論の背景
会計処理
議決権の所有割合の算定
「第36項」



 


【コメント】
日本郵政の保有議決権割合についての記載を日本経済新聞と朝日新聞の記事からそれぞれ引用したいと思います。

>米国は生保が外国政府に支配されることを禁じている。郵政は民営化したが政府が過半を出資する。
>ルール抵触を避けるため、郵政は信託会社を通じて出資する。米アフラック株は一定期間保有すれば、
>条件次第で議決権が20%まで増す独自のルールがある。適用を受ける4年後をメドに郵政は事実上の筆頭株主となる見通しだ。

>アフラックの内部ルールでは、4年後をめどに議決権が20%にあたる比率まで行使可能になる。
>日本郵政はアフラックを持ち分法適用会社とし、グループ会社化する。

記事を読む限り、日本郵政は信託会社を通じて米アフラック株式を所有し米アフラックを持分法適用関連会社とする、
という方針なのだと思います。
日本郵政は信託会社に対し議決権行使に関する指図を行うということなのだろうと思います。
記事を読んで、「議決権の所有割合はどのように計算を行うべきなのだろうか?」と改めて思いました。
会計基準や適用指針や実務指針の中では、議決権割合の計算については
紹介している「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」に最も詳細な説明があるようです。
この論点について考えていましたら、理論的には「議決権の所有割合は株主名簿に基づく。」というだけではないだろうか、
とふと思いました。
例えば、紹介している適用指針には「自己の計算における議決権の所有」という文言があります(第7項等)が、
「議決権の所有」に「自己の計算」という概念はないのではないだろうかと思いました。
「緊密な者及び同意している者がいる場合」(第8項、第9項、第10項)を鑑みて、
「自己の計算」という仮想的な議決権所有や自己都合による計算方法を連結会計上導入しているのだと思いますが、
理論的には、「議決権の所有」に「自己の計算」という考え方はないのだと思います。
信託会社は、まさしく「自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していると認められる者」であるわけですが、
このたびの事例で株主名簿に記載されるのは、日本郵政ではなく信託会社であるわけです。
現実には言い出すとキリがない論点になるのかもしれませんが、
「議決権の所有」は、株主名簿のみで一意に決まる、というだけのことではないだろうかと思います。
「自己の計算」とは裏を返せば「株主名簿には基づかない。」という意味ではないでしょうか。
「私の名前は株主名簿には載っていませんが私は株主なのです。」などと主張をされても、会社は困るわけです。
「自己の計算における議決権の所有」を連結会計上認めるならば、
株主名簿上は1株も保有していなくても議決権の全てを所有していると主張することができるということになりますし、
また逆に、株主名簿上は全株式を保有していても1株も保有していないと主張することができるということになります。
このたびの事例では、日本郵政と米アフラックは極めて友好的に業務提携を進めていくことになっていますので問題はないのですが、
例えば敵対的な株式取得の場面では、会社(被投資会社)としては株主総会決議のみで白黒を付けることを主張するわけです。
その際、ある株主と緊密な者や同意している者との間の契約は会社側にとっては一切関係がないわけです。
株主間で何らかの約束事をするのは全く構わないことであるわけですが、その約束事は会社には関係がないわけです。
会社としては淡々と株主名簿のみに基づき議決権の個数を計算するだけのことであるわけです。
「自己の計算によると、私の保有議決権割合は合計すると20%なのです。」など主張されても株主総会においては通らないわけです。
「『行使し得る議決権の総数』は『株主名簿』のみにより把握される。」、理論上はこの考え方が答えだと思いました。
保有議決権割合は、株主の側(私的な約束や「自己の計算」等)で決まるのではなく、会社側(「株主名簿」)で決まるのです。
不動産の所有権の発生原因は登記簿であるように、株式の議決権の発生原因は株主名簿なのです。

 

 


Control by a shareholder means exercising a voting right.

株主による支配というのは、議決権を行使することなのです。

 

In theory, the ratio of voting rights is determined exclusively on the basis of a shareholder register.

理論的には、議決権割合というのは株主名簿によって排他的に決定されるのです。

 

To put it simply, Japan Post can't attend the meeting of shareholders nor exercise its voting rights
because it doesn't own the share at all.

簡単に言えば、日本郵政は米アフラック株式を所有していないので
株主総会に出席することもできませんし議決権を行使することもできないのです。

 

Ultimately speaking, those who calculate the ratio of voting rights are not each shareholder himself but a company.
Concerning voting rights and the exercise of them, there doesn't exist the concept "self-calculation."

究極的には、議決権の割合を計算するのは各株主自身ではなく会社なのです。
議決権や議決権の行使に関して言えば、「自己計算」という概念はないのです。

 

In the context of today's discussion, a company (an investee) wants to say to a shareholer (a hostile acquirer),
"Your parivate contract between the shareholders has nothing to do with us.
For we can't see your private contract on the company system.
All we can see is a shareholder register."

今日の議論の文脈では、会社(被投資会社)は株主(敵対的買収者)に対してこう言いたいのです。
「株主様の間の私的な契約は私共には関係がありません。
会社制度上私共には株主様の契約を確かめることができないからです。
私共に分かるのは株主名簿だけなのです。」