2018年12月9日(日)



2018年11月17日(土)日本経済新聞
銘柄診断 RIZAP
2日連続ストップ安 赤字転落で見切り売り
(記事)





2018年12月3日(月)日本経済新聞
「特例」過大計上 税収減か 貸倒引当金 検査院が調査
(記事)


 

「グループ経営(業務提携等)ということを鑑みれば、債権というのは現実にはその保有者によって弁済可能額が変動し得る。」、
という点について書いた昨日のコメント↓。

2018年12月8日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181208.html

 

 

 


【コメント】
昨日は、RIZAPグループの債権譲渡の事例を取り上げ、
債権の保有者が株式会社ニッセンホールディングスから夢展望株式会社へ変わった結果、
債権の弁済額が0円(株式会社ニッセンホールディングスの見込み額)から満額に増加した、という点について考察を行いました。
理論的には、債権の弁済可能性は債権の保有者(つまり債権者)には一切依存しないのです(債務者の会社財産のみに依存する)が、
債権の譲渡に伴い債務者に関して債権者との間で新たなグループ経営(業務提携等)が行われる場合は、
そのグループ経営(業務提携等)が債務者の会社財産そのものに直接的なもしくは間接的な影響を与えることがあり得ますので、
結果、債権の弁済可能性が変動する、ということになるわけです。
株式会社トレセンテが負っている借入金(債権者にとっての貸付金)の価値は、
株式会社ニッセンホールディングスにとっては0円なのかもしれませんが、夢展望株式会社にとっては債権の満額なのです。
債権というのは、債務者がどんなに多額のキャッシュフローを獲得しようがその価値(弁済額)は一定不変であるわけですが、
債務不履行が起こる疑義が生じているという場面では、現実には「0円から満額まで」の間でその価値が変動し得るのです。
北海道と言えばカニ("crab")が有名ですが、札幌証券取引所アンビシャス市場上場のRIZAPグループの一員である夢展望株式会社は、
株式会社トレセンテに対する貸付債権を株式会社ニッセンホールディングスから取得する際、
決して暗中模索("grope")して債権の取得を決めたわけではありません。
「自社グループとの経営戦略や業務提携を考慮すれば、債権の弁済額は満額になる。」という将来の展望を十分に描いた上で、
債権の取得を決めたのです。
自社グループとの相乗効果を見込むことができる潜在的に有望な債権を株式会社ニッセンホールディングスは手放したがっている
という機会を、夢展望株式会社は逃さずに捕らえた("grab")のです。
株式会社トレセンテに対する貸付債権の弁済額を0円から満額にまで高めるという債務者の事業再生計画は、
夢展望株式会社にとって"ambiguous"(あいまいな、不明瞭な、どうなるか分からない)なものでは決してなく、
"ambitious"(熱望している、意欲的な、やり遂げてやろうと燃えている)なものだったのです。
さて、関連する議論として、今日は貸倒引当金に関する記事を紹介しているわけですが、記事の冒頭を引用したいと思います。

>中小企業などの負担を減らすため設けられた貸倒引当金の特例措置を会計検査院が調べた結果、
>引当金が過大に計上されて法人税の減収につながっている恐れがあることが2日までに分かった。

貸倒引当金の繰入限度額の計算方法としては、法人税法上は@「法定繰入率」とA「実際の貸し倒れ発生率」の
2つが認められているとのことですが、現実には@「法定繰入率」がA「実際の貸し倒れ発生率」を大幅に上回って推移しており、
会計処理(@「法定繰入率」の採用)と実態(貸し倒れの低い発生率)とが懸け離れている、と記事では指摘されています。
確かに、会計上の論点としては正しいのですが、少なくともこの乖離が法人税の減収につながっているという指摘は間違いです。
なぜならば、債権に関連する損金の金額は究極的には「貸倒損失」の金額(実際に貸し倒れが生じたか否か)で決まるからです。
たとえ法人が@「法定繰入率」を採用して貸倒引当金を計上しても、対象としている債権が実際には貸し倒れなかった場合は、
債権の弁済に伴い、会計上は貸倒引当金戻入益が計上されることになります(そして、法人税法上はそれが「益金」になります)。
すなわち、貸倒引当金の計上というのは、ただ単に、会計上は損失の早期計上(法人税法上は損金の早期申告)に過ぎないのです。
実際の損金の金額(すなわち、法人税の減収額)は、「実際に生じた貸し倒れ」によってのみ決まるのです。
実際の損金の金額(すなわち、法人税の減収額)は、貸倒引当金の繰入限度額の計算方法では決まらないのです。
実際の損金の金額(すなわち、法人税の減収額)は、債権の弁済の時もしくは債権の実際の貸し倒れの時に決まるのです。
「仕訳」で考えないから、この記事のような的外れな("irrelevant"、"misdirected")指摘が出てくるのです。
検証を求めないといけないのは、作況指数や治水工事ではなく、会計検査院の職員の会計の知識や理解能力だと思いました。
会計検査院の職員には、「日商簿記4級くらいからやり直してこい。」と言わなければなりません。