2018年12月4日(火)
「未払い賃金」や「未払い給与」について考察を行った時のコメント↓。
2017年11月1日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201711/20171101.html
"pay"の英和辞書からの引用
pay
━ 【名】
【U】 給料, 俸給, 賃金, ペイ (類語 pay は口語的な語で, 給料を意味する最も一般的な語;
wages
は時間・日・週などの短期間の単位として, または肉体労働の量に応じて支払われる賃金;
salary
は知的・専門的な仕事をする人に固定的に支払われる賃金;
fee は医師・弁護士・芸術家などの仕事にそのつど支払われる謝礼)
「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章 編著 (中央経済社)からのスキャン
「未払金、未払費用、未払法人税等」
「未履行契約」 「費用・収益対応の原則」
【コメント】
「未払い賃金」や「未払い給与」については、2017年11月1日(水)にコメンを書きました。。
2017年11月1日(水)のコメントも参考にしていただきたいのですが、
会計上「未払賃金」勘定や「未払給与」勘定が計上されるだけであれば雇用者は決して債務不履行を起こしていない状態なのですが、
「雇用者が支払うべき賃金や給与を所定の期日に支払わなかった」という状態は雇用者債務不履行を起こしたことを意味しています。
そのことを鑑みますと、雇用者が約束した通りの賃金や給与を被雇用者に支払わなかった時点で、
被雇用者への弁済額を最大化させるために、雇用者は清算の手続きに入ることになるわけです。
つまり、「賃金債権の消滅時効は何年か?」という問い自体がそもそも観念できないように私は思います。
この記事の議論は根本部分を間違っているように思います。
賃金債権とは、被雇用者が所定の期日に雇用者から賃金を受け取る権利です。
雇用者が賃金を支払わなかった時点で、雇用者の債務不履行です。
記事を読んで、雇用者が賃金を支払わなかった時点で、清算の手続きに入るだけのことではないかと思いました。
それから、会計辞典を読んでいて、今日は"executory"という用語を知りました。
"executory"とは「未履行の」や「未済の」という意味であり、取引の推移ということを踏まえてやや意訳すれば、
「これから履行を行うべき、今後所定の期日に履行を行うことになっている」という意味合いになるのだと思います。
会計上「未払賃金」勘定や「未払給与」勘定が計上されるだけであれば、雇用者は"executory"というだけなのですが、
所定の期日に賃金や給与を支払わなかった場合は、雇用者は"default"を起こしたということになるのです。
契約や取引においては、"executory"と"default"は根本的に異なるということを正しく理解しなければならないと思いました。
会計上の「未払賃金」勘定と「未払給与」勘定は、それぞれ「未履行賃金」勘定と「未履行給与」勘定に
名称変更してはどうだろうかと思いました(英訳も"executory
salaries"と"executory
wages"に名称変更してはどうでしょうか)。
また、会計上の給与と賃金の違いについては、「費用・収益対応の原則」の考え方が重要だと思いました。
スキャンして紹介している会計辞典の「費用・収益対応の原則」の項目を読んでいただきたいのですが、
賃金は「費用・収益対応の原則」に厳密に基づいて費用計上が行われるのに対し、
給与は給与の支払時に基づいて費用計上が行われるのです。
別の言い方をすれば、賃金は費用と収益の個別的対応が取れるのに対し、
給与は費用と収益の個別的対応が取れない(費用と収益の期間的対応しか取れない)、という相違点があるのです。
賃金と給与は、費用計上の考え方が会計理論上は根本的に異なるのです。
次のようなタイムラインを作成してみましたので参考にして下さい。
「給与の支払いについてのタイムライン」
「賃金の支払いについてのタイムライン」
As soon as unpaid salaries are generated in a company, the company has gone into default.
未払いの給与が会社で発生すると同時に、その会社は債務を履行しなかったことになります。
Concerning a payment of salaries, the "Principle of Matching Costs with
Revenues" is not applied to the accounting treatment,
whereas, concerning
wages, the "Principle" is applied.
In other words, salaries are recorded in
full in an accounting period when a company pays them to its office
workers,
whareas wages are not always recorded in full in an accounting
period when a company pays them to its factory workers.
Wages are recorded in
full in an accounting period when a company sells the product or the revenue is
realized.
給与の支払いに関しては「費用・収益対応の原則」はその会計処理に適用されませんが、
賃金の支払いに関しては「費用・収益対応の原則」が適用されるのです。
他の言い方をすれば、給与は会社が事務従業員に支払った会計期間に全額が計上されるのに対し、
賃金は会社が工員に支払った会計期間に全額が計上されるとは限らないのです。
賃金は、会社が製品を販売した会計期間にすなわち収益が実現した会計期間に全額が計上されるのです。
To put it in the abstract, "payable" is "executory" and "unpaid" is
"default."
抽象的に言えば、「支払うべき」は「未履行の」であり「支払わなかった」は「債務不履行」なのです。
I am not a chartered accountant in a certain country,
but I want both
an "executory salaries" accoount and an "executory wages" account to be charted
in the whole world.
私は某国の勅許会計士ではないのですが、
「未履行給与」勘定と「未履行賃金」勘定の両方が全世界で公認されることを望んでいます。