2018年10月8日(月)
ふるさと納税 見直しへ 利他的動機の行動 尊重を
原点回帰 返礼品禁止が筋
ポイント
○どの自治体も対象になる仕組みに問題点
○被災地が返礼品を導入すると納税額激減
○経済取引導入でモラル起点の制度ゆがむ
(記事)
総務省|ふるさと納税ポータルサイト
ttp://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html
税金の控除について
ttp://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
地方交付税(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E4%BA%A4%E4%BB%98%E7%A8%8E
>地方交付税(ちほうこうふぜい)は、日本の財政制度のひとつ。
>国が地方公共団体(都道府県及び市町村をいう。)の財源の偏在を調整することを目的とした地方財政調整制度である[1]。
>地方交付税は、地方公共団体の運営の自主性を損なうことなくその財源の均衡化を図り、
>国が必要な財源の確保と交付基準の設定を行い、地方行政の計画的な運営を保障することによって地方自治の本旨の実現と
>地方公共団体の独立性を強化することを目的としている[1]。
>目的の項で述べたとおり、地方交付税は財源の偏在を調整するための制度であり、地方公共団体の固有かつ共有の財源である。
地方交付税(総務省)
ttp://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html
>地方交付税は、本来地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を
>維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、
>いわば「国が地方に代わって徴収する地方税」 (固有財源)という性格をもっています。
「ふるさと納税」の訳例として、"tax reduction given to tax payers who donate to local
municipalities"
と"Tax deductible donation
system"の2つを紹介し、
「『ふるさと納税制度』の法的メカニズムは特定の寄附金についての税控除である。」、
という点について指摘をした時のコメント↓。
2018年9月23日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180923.html
【コメント】
昨今話題となっている「返礼品を贈呈するふるさと納税制度」には、大きく分けると2つの問題点があると私は思います。
1つ目は「地方自治体の財政支出が偏る」という問題点であり、2つ目は「地方自治体の財政収入が偏る」という問題点です。
以下、2つの問題点について説明を試みたいと思います。
まず、1つ目の「地方自治体の財政支出が偏る」という問題点についてです。
これはどういう意味なのかと言いますと、地方自治体が返礼品を納税者に贈呈することにしますと、
「地方自治体による財政支出先(現金の支払先・税の使途)が返礼品を取り扱う一部の業者に偏ってしまう。」
という意味です。
地方自治体自体は返礼品を保有しているわけではないわけです(自治体の職員自身が返礼品を産出できるわけではない)。
ですので、返礼品を贈呈しようと思えば、地方自治体は返礼品を取り扱っている業者から商品を仕入れなければならないわけです。
もしくは、取り扱っている業者に対し商品代金を支払った上で納税者に所定の商品(返礼品)を発送してくれるよう依頼をする、
というようなことを地方自治体は行っていくことになるわけです。
しかし、そもそもの話をすると、地方自治体は「人々の日常生活に密接に結びついている公的サービス」を行うために
財政支出を行う社会的義務があるわけです(地域住民に共通の公共サービスを普遍的に行う社会的義務が地方自治体にはある)。
返礼品を贈呈する場合は、地方自治体は一部の業者のみに返礼品として選ばれた商品の代金を支払うことになるわけですが、
他の業者から見ると「弊社の商品も是非返礼品として取り扱っていただきたい。」と言いたくなるわけです。
一見すると、「受け取ったふるさと納税の金額(税収入額)>業者に支払った返礼品の商品金額(税支出額)」の状態であれば、
たとえ返礼品を贈呈しようとも、地方自治体の税収額(地方自治体が使用可能な現金額)はトータルでは増加することになります。
したがって、昨今話題となっている「返礼品を贈呈するふるさと納税制度」は地方自治体の税収の増加に資するのではないか
と思われるかもしれません。
確かに、そのこと自体は確かに正しいのですが、実は一番の問題点は、返礼品の仕入先がどうしても偏ってしまうことなのです。
例えば、ある業者が地域住民に共通の公共サービスを提供しているというような場合は、結果的にその業者がサービスの提供を通じて
利益を得るということがあってもよい(地方自治体による税の使途としては正当であると言える)わけですが、
「返礼品となる商品の地方自治体への販売」は地域住民に共通の公共サービスとは関係がない(財の提供先が地方自治体)わけです。
地域住民に共通の公共サービスとは無関係に返礼品を取り扱う一部の業者のみが利益を得る、という構図になってしまうのです。
以上が、1つ目の「地方自治体の財政支出が偏る」という問題点です。
次に、2つ目の「地方自治体の財政収入が偏る」という問題点についてです。
一見すると、「地方自治体の財政収入の偏りをなくするために『ふるさと納税制度』があるのではないか?」
と思われるかもしれませんが、実は「ふるさと納税制度」はその正反対の効果を生じさせるのです。
つまり、「『ふるさと納税制度』は、実は財源の偏在を助長・加速・促進する。」のです。
公共政策版「逆コース」とでも言いましょうか、「ふるさと納税制度」は実は「財源の均衡化」に完全に逆行しているのです。
どういうことかと言いますと、一言で言いますと、実は「国と地方の総税収入額は一定だ。」ということなのです。
ある地方自治体が「ふるさと納税制度」により得ることができた税収入は、その地方自治体固有の収入となるのだと思います。
すなわち、ある地方自治体が「ふるさと納税制度」により得ることができた税収入をその地方自治体は自治地域内で
自由に使う(財政支出を行う)ことができるのだと思います。
そうしますと、「ふるさと納税制度」による税収入が増加すれば増加するほど、論理的には地方自治体の税収入は偏在する、
という結果になるわけです。
現時点では、「ふるさと納税制度」による税収入がどの地方自治体も少ないので、この問題点が見えづらくなっているだけなのです。
極端な話をしてみますと、ある地方自治体の「ふるさと納税制度」による税収入が何兆円にもなったという状態を
頭に思い浮かべてみてください。
ふるさと納税が行われた分、他の地方自治体の税収入額は減少するでしょう。
論理的には、「ふるさと納税制度」を活用している地方自治体のみが税収が潤い、
「ふるさと納税制度」を活用している地方自治体の税収は枯渇する、という状態に行き着くはずです。
現在の「地方交付税」は、本来は「地方交付金」と表現するべき国から地方への交付金なのですが、
「地方交付金」を通じた国による財源の調整が間に入っているので、この辺りの問題が分かりづらくなっているのだと思います。
地方自治体により「ふるさと納税制度」が活用されれば活用されるほど、国の総税収入額が減少することになるわけですが、
それはイコール、国から地方へ交付される「地方交付金」の総額も減少する、ということを意味するわけです。
これは明らかに「財源の偏在」につながるのです。
現時点では、どの地方自治体も「ふるさと納税は通販ではないか?」などと揶揄されている程度の金額(インパクト)しかないので、
「ふるさと納税制度」の問題点が見えづらくなっているだけなのです
おそらく、「ふるさと納税制度」による税収入を加味しても、どの地方自治体も地方交付金を国から交付されている状態なのでは
ないかと思います。
「ふるさと納税制度」による税収入を加味しても、どの地方自治体も国が定めた「基準財政需要額」に総税収入額が達していない、
という状態なのではないかと思います。
そのような状態ですと、結果として、「ふるさと納税制度」は他の地方自治体の総税収入額に影響を与えません。
「ふるさと納税制度」により追加的な収入を得るのか「地方交付金」により追加的な収入を得るのかの違いに過ぎないからです。
いずれにせよ、「国と地方の総税収入額は一定である。」以上、現行の制度のままでは、
実は論理的には「ふるさと納税制度」は「財源の偏在化」につながるだけなのです。
以上が、2つ目の「地方自治体の財政収入が偏る」という問題点です。
>訳出では、「税務上損金とすることが可能な寄附金」という意味合いを表現することが重要であるようです。
と書きましたが、まさに「ふるさと納税額を税務上損金とすることが可能である。」という点が財源の偏在化の本質なのです。
「ふるさと納税額を税務上損金とすることが可能な場合は、紹介している記事にも書かれていますように、
”ふるさと納税は地域間の税収の移転効果がある”ということになります。
個人的な私案になりますが、「ふるさと納税額」を税務上損金とすることはできないとし、さらに、
国が定める「基準財政収入額」にも算入しない、というふうな取り扱いにすればにすれば、
他の地方自治体の総税収入には影響を与えないままに恩返しをしたい地方自治体の総収入を増やすということが可能になるわけです。
特に、地方自治体が受け取った寄附金は国が定める「基準財政収入額」に含めない、という点が本質的に重要なのだと思います。
今改めて紹介している総務省の「地方交付税」の解説ページを見てみたのですが、現行の制度においても、
地方交付税法上「ふるさと納税額」は「基準財政収入額」に算入されないようです。
そうしますと、ある地方自治体が納税者から受け取る「ふるさと納税額」は国から受け取る地方交付金の金額に影響を与えない、
ということになります。
ただ、地方自治体が「ふるさと納税」を受け取った分、国の総税収入額が減少する結果、国が地方へ交付する地方交付金の総額が
減少しますので、その意味では、ある地方自治体が納税者から受け取る「ふるさと納税額」は
国から受け取る地方交付金の金額にわずかな影響を結果的に与えると言えるでしょう。
地方交付税法上「ふるさと納税額」は「基準財政収入額」に算入されない方が「ふるさと納税制度」の趣旨に適うと思います。
先ほど書きました2つ目の「地方自治体の財政収入が偏る」という問題点についての説明では、
「地方交付税法上『ふるさと納税額』は『基準財政収入額』に算入される。」
ということを前提に書いてしまったのですが、その点は間違っていたようです。
いずれにせよ、「ふるさと納税制度」は地域間の税収の移転効果が生じないような制度でなければならないと思います。
つまり、国の総税収入額や他の地方自治体の総税収入額が減少しないような税制度でなければならないと思います。
地方交付税法上、個人や企業から地方自治体が受け取った寄附金は「基準財政収入額」に算入されないようです。
ふるさとへ恩返しをしたいという人は、純粋に地方自治体へ寄附をすればよいのです(地方交付金の金額にも影響を与えません)。