2018年9月20日(木)



2018年9月20日(木)日本経済新聞
TKCの今期 営業益横ばい クラウド好調
(記事)





記帳適時性証明書の真正性確認(TKC全国会)
ttps://www.tkc.co.jp/tekiji/requestForm.aspx

> 「会計帳簿作成の適時性(会社法第432条)と電子申告に関する証明書」(以下、記帳適時性証明書といいます)は、
>TKC全国会に所属する会計事務所が、毎月、関与先企業に出向いて巡回監査を実施し、日々の会計記帳を確認し指導した上で
>月次決算を行い、さらに期末には決算書と法人税申告書等を作成し、税務申告を電子申告で行った場合に、
>株式会社TKCが発行しているものです。
>記帳適時性証明書は、会社法第432条に基づく会計帳簿作成の適時性及び継続性並びに月次決算の実施日及び決算書と
>法人税申告書等の作成に関してその事実を証明しています。
>この記帳適時性証明書は、株式会社TKCからTKC会員に対して提供されます。
>紙に印刷された記帳適時性証明書の検証は、以下の「真正性の確認」欄で、発行日と発行番号を入力することにより行えます。

「記帳適時性証明書のサンプル」

「『記帳適時性証明書』の解説」




会社法第四百三十二条(会計帳簿の作成及び保存)

>(会計帳簿の作成及び保存)
>第四百三十二条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
>2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

 

「理論的には、会計監査人は、与えられた証憑と経営者による意思決定と経営判断を基にして、
定められた会計基準に照らして『仕訳が正しいのか否かを検査する。』だけであり、
『会社が行っている仕訳は会計基準に照らして正しい。』ということのみを理由に、無限定適正意見を表明しなければならない。」、
という点について指摘をした時のコメント↓。

2018年9月3日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180903.html


 



【コメント】
紹介している記事には、中小企業が金融機関から融資を受ける際の最近の現状について、次のように書かれています。

>最近は中小企業が金融機関に融資を申請する際、提出する決算書の信頼性を担保するために、
>税理士が確認内容などの書面を添付する動きが広がっている。

記事に書かれています「決算書の信頼性を担保するための書面」というのは、
インターネットで検索してみますと、「記帳適時性証明書」と呼ばれる書面であるようです。
「記帳適時性証明書」については、時々(数ヶ月に1回程度)、日本経済新聞に全面広告が載っています。
TKC全国会が主宰して「記帳適時性証明書」の作成を推進しているという状態であるようです。
「記帳適時性証明書」が添付された決算書は金融機関からの信頼度が格段に上がる、という触れ込みとなっており、
「記帳適時性証明書」には次のような効果があると書かれています。

>株式会社TKCが「記帳適時性証明書」を発行し、会計帳簿と決算書、法人税申告書の作成に関する
>適時性と計算の正確性を証明します。これを融資や金利優遇の判断に活用する金融機関が増えています。

会社の取締役が作成しただけの計算書類や会社の監査役が監査を行っただけの計算書類では相対的に客観性がない、
と金融機関等からは感じられたりしますので、会社から独立した第三者である税理士が「記帳適時性証明書」を作成する、
というのは計算書類の信頼性の向上に資するのは間違いないと思います。
ただ、「記帳適時性証明書」について調べていて、いくつか気になる点がありました。
まず1つ目は、「記帳適時性証明書」は会社法上の書類(法定作成書類)ではなく、法律上は任意に作成される書類である点です。
会計監査人が意見を表明する金融商品取引法上の法定作成書類である「監査報告書」とは法的位置付けが全く異なると言えます。
会計監査人は「監査報告書」に関して金融商品取引法上の一定の義務を負う(公認会計士資格を失いかねない)のに対し、
税理士は「記帳適時性証明書」に関して税理士法や会社法上の義務は一切負わない、という違いがあります。
解説には、”税理士がその書面に虚偽の記載をした場合は懲戒処分を受けることになります。”と書かれてはいますが、
その懲戒処分とはTKC全国会の会員規約等に基づく自主的処分に過ぎない(例えば税理士資格を失う等ではない)わけです。
簡単に言えば、「監査報告書」と「記帳適時性証明書」とでは法的な重さ(≒法律上の信頼性)が違う、と言えると思います。
それから、解説には、次のように書かれています。

>この「証明書」は、その適時性並びに計算の正確性を証明するものです。(内容の正確性を証明するものではありません。)

この点は、金融商品取引法上の財務諸表監査に共通する問題(監査と呼ばれるものの限界)だと思います。
金融商品取引法上の財務諸表監査を行い「監査報告書」を作成する会計監査人も
毎月関与先企業に出向いて巡回監査を実施し「記帳適時性証明書」を作成する税理士も、
煎じ詰めれば「仕訳が正しいのか否かを検査する。」だけなのです。
他の言い方をすれば、上記会計監査人も上記税理士も、「計算の正確性を検査する。」だけなのです。
上記会計監査人も上記税理士も、「会計帳簿(そしてそこから最終的に作成される計算書類)は正確であるか否か?」について
監査をするだけであり、会計帳簿の前段階である「証憑」(会社が行った商取引の記録(伝票や契約書等))については
監査はしないのです(「証憑」が正しいか否かについては監査上は確認はせず、「証憑」が正しいことは監査の前提です)。
「証憑」が間違っている場合は、どんなに正しい仕訳を行っても正確な計算書類にはなりません。
投資家や金融機関が究極的に望んでいるのは、「証憑」の正確性までもが確認された「監査報告書」や「記帳適時性証明書」
なのだと思いますが、その点については、別途金融商品取引法や法人税法に基づく牽制(処罰)に依存する他ないと思います。