2018年9月15日(土)

2018年9月15日(土)日本経済新聞
国際会計基準「のれん」処理見直し 「議論の必要がある」 日本会計士協会長も支持
(記事)




2018年9月15日(土)日本経済新聞
銘柄診断 富士フィルム
年初来高値 「チェキ」の販売が好調
(記事)



 

「『株式の取得価額』は、買収先企業の資産価値(買収先企業の将来キャッシュフロー)から
分離・独立している(会計上の論理的なつながりは両者の間にはない)。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓。

2018年9月14日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180914.html

 

 



【コメント】
昨日のコメントでは、IFRSを題材に、「株式の取得価額」は、買収先企業の資産価値(買収先企業の将来キャッシュフロー)から
分離・独立している(会計上の論理的なつながりは両者の間にはない)、という点について指摘をしました。
「株式の取得価額」は買収先企業の資産価値(買収先企業の将来キャッシュフロー)から
分離・独立している(会計上の論理的なつながりは両者の間にはない)からこそ、
「株式の取得価額」が買収先企業の無形資産を構成するということが論理的にあり得ませんし、
「株式の取得価額」が超過収益力を表すということが論理的にあり得ないわけです。
仮に、株式取得の結果、無形資産や超過収益力が生じるというのなら、それらの価額・金額は、
「株式の取得価額」がいくらであろうとも(「株式の取得価額」に関わらず)、常に一定のある価額・金額となるはずです。
なぜならば、それら無形資産や超過収益力は、あくまで株式取得の結果(つまり、議決権や経営支配権を獲得した結果)として
生じるものであり、決して株式の取得価額(つまり、株式取得のための現金支出額)には左右されないものだからです。
ある買収先企業の株式を、100円で買ったら無形資産や超過収益力の価値・金額は小さく、
130円で買ったら無形資産や超過収益力の価値・金額は大きい、などということがあるでしょうか。
仮に、無形資産や超過収益力の公正な・客観的な価値・金額が(すなわち、連結上ののれんの金額が)20円なのだとすると、
買収先企業の株式を、100円で買おうが130円で買おうが、
無形資産や超過収益力の価値・金額は(すなわち、連結上ののれんの金額は)常に20円になるはずです。
しかし実際には、「株式の取得価額」に応じて無形資産や超過収益力の価値・金額は(すなわち、連結上ののれんの金額は)変動します。
株式の取得額次第で無形資産や超過収益力の価値・金額が(すなわち、連結上ののれんの金額が)変動するのはおかしいわけです。
昨日も書きましたが、連結上ののれんの金額で無形資産や超過収益力を表現しようとすることが自体が論理的に間違っており、
連結上ののれんの金額は特段何を表しているわけでもない(純資産の簿価と投資金額との差額というだけ)のです。
次に、紹介している2つ目の記事には、富士フィルムホールディングスによるゼロックスの買収計画について、
次のように書かれています。

>「ゼロックス買収に支払う金額の積み増しを強いられれば、株価にはネガティブに働くだろう」

確かに、ゼロックス株式の取得価額が増加すれば増加するほど、富士フィルムホールディングス株式の本源的価値は低下します。
しかし、ゼロックス株式をいくらで取得しようとも、ゼロックスを子会社化したことにより生じるシナジーは一定なのです。
従業員に対する「ホーソン実験」ではないわけですから、株式の取得価額で経営上のシナジーが変動したりはしないわけです。
むしろ逆に、ゼロックスを子会社化したことにより生じるシナジーは一定だからこそ、
富士フィルムホールディングスはゼロックス株式をできる限り低い価額で取得するように努めなければならないのです。

 


それから、昨日は、貸借対照表の純資産(純資産の簿価)について、次のように書きました。

>買収先企業の純資産(簿価)が解散価値を表しているわけでもありません。

貸借対照表の純資産(純資産の簿価)が会社の解散価値(株式の本源的価値)を表すわけではないという点については、
清算手続き(所有財産の処分等)を鑑みれば明らかであるわけですが、
では、資産の部が現金だけの場合は、貸借対照表の純資産は会社の解散価値(株式の本源的価値)を表すでしょうか。
答えは、「資産の部が現金だけの場合は、貸借対照表の純資産は会社の解散価値(株式の本源的価値)を表す。」です。
ただし、「今すぐ会社を解散させる場合は」、という条件が付きます。
会社が事業継続の途中である場合は(すなわち、清算期日の前の時点では)、
たとえ貸借対照表の資産の部が現金だけの状態であっても純資産が解散価値を表すわけではないのです。
より議論の焦点を絞るために、そして、理解のヒントのために、次のような設例を考えましたので参考にして下さい。
次の設例では、2005年3月31日時点の株式の本源的価値は、実は「200円超」のある金額なのです。
ですので、例えば株主は所有株式を200円では売らない方がよい、といった結論になるのです。


「事業継続途中の貸借対照表の純資産の金額は、会社の解散価値(株式の本源的価値)を表すわけではない。」

【設例】
最も元来の・最も簡略な株式会社制度を想定する。
すなわち、会社は、債権者にも債務者になれず、棚卸資産も固定資産も所有できない、とする。
会社は事業継続の途中で配当は支払えないとする。
貸借対照表の借方(会社の所有資産)は現金のみ、貸借対照表の貸方は資本のみ(負債は常に0円)、という状態を想定する。
会社設立日は2000年4月1日、会社清算日は2010年3年31日であり、会社は計10事業年度の営業を営む、とする。
2000年4月1日から営業を開始し、順調に利益を積み重ねることができ、第5期が終了した時点で、右記の貸借対照表となった。
会社に債権債務は一切ないが、この時(2005年3月31日時点で)、株式の本源的価値はいくらであろうか?

【解説】
「会社の清算価値は200円なのではないか。」、と思われるかもしれないが、それは間違いである。
なぜならば、会社は、今後も(2005年3月31日以降も)、事業を継続するからである。
現時点で清算価値を算定することも右記貸借対照表だけで株式の本源的価値を算定することも不可能である。
仮に、会社を今すぐ清算するとしたら、確かに清算価値は「200円」である。
しかし、会社は、今後も利益剰余金を増加させるべく事業を継続することになっている。
したがって、現時点では、「会社の清算価値は『200円』」である。」とは言えないのである。


The amount of equity on a balance sheet doesn't represent a liquidation value
if a company is in operation or on the way of business (i.e. before a liquidation date).

会社が事業活動中の場合はすなわち事業を営んでいる途中の場合は(すなわち、清算期日の前は)、
貸借対照表の資本の金額は清算価値を表してはいないのです。