2018年9月2日(日)



「2017年版 U-CANの宅建士 速習レッスン」 ユーキャン宅建士試験研究会 編 (自由国民社)


第2編 権利関係
第5章 権利関係・その他
レッスン18 区分所有法
1 専有部分と共用部分
2 共用部分等の管理
3 敷地利用権
4 管理組合
5 規約
「420〜421ページ」 

「422〜423ページ」 

「424〜425ページ」 


レッスン20 不動産登記法
8 区分建物の登記
「452〜453ページ」 

「454〜455ページ」 

 

 

「『共有』と『区分所有』は根源的に異なる。」、という点について指摘をした昨日のコメント↓

2018年9月1日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180901.html

 

 



【コメント】
昨日のコメントでは、「『共有』と『区分所有』は根源的に異なる。」、という点について指摘をしました。
昨日コメントを書き終わった後にいろいろと思い出したことがありますので、昨日のコメントに追記をしたいと思います。
ただ、思い出話をすると長くなりますので、以下、思い出したことの要点と補足したい点だけを記していきたいと思います。
区分所有法の教科書の中には、「区分建物において、『共有』と『区分所有』とは同じような概念のものだ。」、
と説明されている教科書もありますが、その説明は実は間違いであり、少なくとも法の観点から言えば、
「『共有』と『区分所有』は根源的に異なる。」と言わねばなりません。
法の観点から言えば、「共有」と「区分所有」とは、「根源的に」と言わねばならないくらい、完全に異なっているのです。
法の観点から言えば、建物の区分所有者は建物の共有者ではないのです。
ただ、建物の大修繕や建て替えや解体の意思決定に際しては、当然に区分所有者の意思を反映させねばなりませんので、
結果的に、建物の区分所有者をあたかも建物の共有者であるかのように取り扱うことが実務上は求められる、
という言い方はできるわけです。
建物の区分所有者をあたかも建物の共有者であるかのように取り扱うのは、あくまでも現実を踏まえた実務上の対応であって、
法理から導かれる必然的帰結ではありません。
建物の区分所有者を現実には建物の管理(大修繕や建て替えや解体)に関する意思決定に参画させねばなりませんので、
建物は本来は区分所有者の共有物ではないにも関わらず、実務上は区分所有者の共有物であるかのように見なす必要があるのです。
区分所有者は、自身の区分を所有するに過ぎず、建物自体を他の区分所有者と共有しているわけでは決してないのです。
そして、区分所有者は、自身が所有する区分について、他の人物と共有をすることもできます。
つまり、「共有」の概念と「区分所有」の概念は完全に別の概念なのです。
ただ、マンション管理の実務上、建物の区分所有者を建物の共有者であるかのように取り扱う必要がある、というだけなのです。
「区分所有」や「区分所有者」について、現行の規定を度外視した上で、改めて概念整理をしなければならないと思いました。
私が今日辿り着きました結論は、
「区分建物については、区分の真の所有者は分譲後も『最初に専有部分の全部を所有する者』のままとする。」
という考え方です。
区分建物については、「最初に専有部分の全部を所有する者」を「上位所有者」(metaowner)と位置付けるわけです。
「最初に専有部分の全部を所有する者」とは、一言で言えば、「分譲業者」のことです。
建物の管理(大修繕や建て替えや解体等)に関しては、常に「最初に専有部分の全部を所有する者」(分譲業者)が
言わば総責任者(区分所有者が加入する管理組合の長であり集会の議長)となる、と位置付けるわけです。
「最初に専有部分の全部を所有する者」(分譲業者)は、その管理のために建物の"superowner"(超越所有者)となるわけです。
"super"には「アパートの管理人」(superintendent)という意味がありますが、
「最初に専有部分の全部を所有する者」(分譲業者)は必ず管理組合の管理者である、と位置付けるわけです。
区分建物では、「各区分を包括的に管理する(建物全体を管理する)管理者」が必要なのです。
そして、区分建物の登記も上記の位置付けに沿った制度にするわけです。
区分建物については、まず「最初に専有部分の全部を所有する者」(分譲業者)を「上位所有者」(metaowner)として登記し、
さらに「管理組合の管理者」として登記し(もしくは上位所有者が管理者なのは当然かもしれませんが)、その後、
区分の分譲に伴い、「区分所有者」(購入者)を「下位所有者」(subowner)として追加的に登記を行う、
という登記制度にするべきなのです。
区分建物については、「上位所有者」(superownerもしくはmetaowner)と「下位所有者」(subowner)の両方を
所有者として登記するわけです。

 



管理組合の集会では、「下位所有者」(subowner)だけが集会の構成員(議決権者)として管理に関する意思決定を行うわけです。
この時、区分所有者(下位所有者、subowner)は、
あくまでも建物の管理組合の集会の構成員(議決権者)として管理に関する意思決定を行うわけであり、
建物の共有者として管理に関する意思決定を行うわけでは決してないのです。
建物の管理組合の集会やそこでの意思決定は、民法の「共有」では説明が付けられないのです。
民法の「共有」とは別の、各区分を所有しているに過ぎない所有者が建物全体に関わる意思決定に関与できる法的仕組みが、
区分建物では求められるのです。
実務上は、その法的仕組みを導入するための法律が「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)であったのだと思います。
民法に規定のある「共有」では、区分所有者は建物全体に関わる意思決定に関与できないのです。
「管理組合の集会」という建物全体に関わる意思決定に区分所有者が関与できる仕組みが、区分建物では必要だったのです。
「建物の区分所有等に関する法律」に規定のある「管理組合の集会」という仕組みにより、
区分建物の区分所有者は区分建物全体の管理に関する意思決定に関与できるのです。
「建物の区分所有等に関する法律」に規定のある「管理組合の集会」は、
区分建物の区分所有者をあたかも建物の共有者であるかのように取り扱うための「エミュレーター」だと捉えればよいと思います。
「建物の区分所有等に関する法律」に規定のある「管理組合の集会」という模倣装置(「エミュレーター」)のおかげで、
「管理組合の集会」は「建物の共有者集会」となるのです。
「管理組合の集会」は「建物の共有者集会」の「エミュレーター」として作用するのです。
この「エミュレーター」により、
「建物の区分所有等に関する法律」に規定のある「管理組合の集会」は民法上の「建物の共有者集会」として作用するのです。
一言で言えば、この「エミュレーター」により「管理組合の集会」=「建物の共有者集会」となるわけです。
この「エミュレーター」を作り出すための法律が「建物の区分所有等に関する法律」であったのだと思います。
「建物の区分所有等に関する法律」がないと、「建物の区分所有者集会」が「建物の共有者集会」にならないわけです。
端的に言えば、「建物の区分所有等に関する法律」により、区分所有者が共有者になるのです。
「管理組合の集会」は、区分所有者を共有者とするための法律上の仮想化技術なのです。
「管理組合の集会」は、仮想機関なのです。
「管理組合の集会」の導入により、「建物の区分所有等に関する法律」は擬似的に「建物の共有者集会」を実現しているわけです。
「管理組合の集会」を通じて、「上位所有者」(分譲業者)は「区分所有者」(下位所有者、subowner)の意思決定に従う、
という管理方法を区分建物では行っていかなければならないのです。
「区分所有」や「区分所有者」について概念整理を進めていく中で、戦前の土地制度が私の頭の中に思い浮かびました。
戦前は日本でも土地公有制であったわけですが、戦前と現代を対比させて、以下のように整理できるのではないかと思いました。

○土地の真の所有者:    国=「上位所有者」(分譲業者、superowner、metaowner)
○土地の排他的な使用者:所有者=「下位所有者」(購入者、区分所有者、subowner)

戦前の土地制度と現代の区分所有との比較の中で、区分所有は賃貸借に概念的に近いのではないだろうか、と言いますか、
現代の区分所有は戦前の土地の所有に概念的に近いのではないだろうかとふと思いました。
現代の区分所有権自体には期限の定めなどはないのでしょうが、大修繕にせよ建て替えにせよ解体にせよ、
区分建物に関しては実際には区分所有者ではなく現実には・実務上は分譲業者等が行う(つまり、他人が行う)ことになるわけです。
その意味において、区分建物の絶対的・根源的な所有者は、区分所有者ではなく、分譲業者(「上位所有者」)だと思いました。
区分所有では、所有権を行使する時に現実には他人の力を借りる必要が出てくるわけです(所有権の「直接性」に反する面がある)。
通常の所有権と比較すると、「区分所有権」は制限された所有権であると思いました。

 



上記のコメントのメモや下書きになりますが、「区分所有権」について、理論上の考え方をまとめてみました↓。
「理論的には、」と書きましたが、現行の区分所有法の解釈や説明ではなく、
「区分所有というのはこのような概念のものだと捉えればきれいに整理できるのではないか。」、と私なりに考えて書きました。
建物の真の所有者は、分譲後も、(共用部分も含めて)「最初に建物の専有部分の全部を所有する者」のままである、
と捉えれば、「区分所有」の概念が整理できるのではないかと思いました。
民法では、区分建物の管理(建て替えその他)についての意思決定機関とその構成員が明確ではないのです。
区分所有者は区分建物の共有者ではないため、そのままでは原理的には建物の管理について意思決定する法的資格がないのです。

 

In theory, even after a building is sold in lots,
a true owner of the building remains a person who initially owns all the exclusive elements of the building.

理論的には、建物が分譲された後でさえも、建物の真の所有者は最初に建物の専有部分の全部を所有する者のままなのです。

 

In theory, "unit ownership" today corresponds to "ownership of land" in prewar days.

理論的には、現代の「区分所有権」は戦前の「土地の所有権」に相当するものなのです。

 

In short, "unit ownership" is restricted ownership in theory.

簡単に言えば、理論的には、「区分所有権」は制限された所有権なのです。

 

In theory, "unit ownership" is imaginary ownership and, if anything, similar to a lease.

理論的には、「区分所有権」というのは仮想上の所有権であり、どちらかと言えば賃貸借に近いのです。

 

In theory, from a standpoint of a unit owner,
a person who initially owns all the exclusive elements of a building is a metaowner.

理論的には、区分所有者の立場から見ると、最初に建物の専有部分の全部を所有する者は上位所有者なのです。