2018年8月18日(土)
【ニューヨーク=大塚節雄】トランプ米大統領は17日のツイッターへの投稿で、米証券取引委員会(SEC)に対し、
米上場企業に課す業績の四半期開示を6カ月ごとに見直せないか研究を指示したと明らかにした。
企業側には四半期開示は短期の成果を求める市場の圧力につながるとの不満もある。
だが、トランプ氏の「提案」は情報開示の後退にもつながりかねず、波紋を広げそうだ。
トランプ氏が「何人かの世界トップのビジネスリーダーとの会合で、何が米国のビジネスや雇用をより良くするかを尋ねた」
ところ、1人が「四半期報告をやめ、6カ月の仕組みに移行する」よう求めたという。
トランプ氏は「柔軟性を高め、費用を節約する」と同調し、「SECに研究を指示した!」と明かした。
四半期開示は、米国は1970年に制度を導入した。日本も報告を義務付けている。
ただ最近では電気自動車メーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、
「最適な事業環境をつくる」ことを理由に株式非公開化の検討を表明するなど、厳格な情報開示を敬遠する動きもある。
一方、企業経営の透明性を確保するうえで、四半期開示が重要との主張も多い。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOと著名投資家ウォーレン・バフェット氏は今年6月、
米紙への投稿で米企業に四半期ごとの収益見通しの開示をやめるよう呼びかけ、話題となった。
だが、四半期開示そのものは「米公的市場の重要な要素」として支持した。
トランプ氏は3〜13日にニュージャージー州のゴルフクラブで過ごし、企業トップらとも会談している。
(日本経済新聞 2018/8/17
23:01 (2018/8/18
0:23更新))
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO3430318017082018MM8000/
米SEC、四半期開示「見直し」調査認める トランプ氏への提案者はペプシコCEO
【ニューヨーク=大塚節雄】トランプ米大統領が企業業績の開示義務を四半期から半年ごとに見直す可能性に
言及したことを受け、米証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長は17日の声明で
「担当部局が開示頻度を含めた報告義務の研究を続けている」と表明し、調査の事実を認めた。
一方、投資家には情報開示の後退への反発も起き、議論を呼んでいる。
(日本経済新聞 2018/8/18
8:15)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO34310180Y8A810C1000000/
「有価証券報告書は決して第4四半期報告書ではない。」という点と、
「証券制度上は(理論上は)、適時開示は全て『臨時報告書』の提出により行わねばならない。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓
2018年8月17日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180817.html
米大統領、四半期決算の半期への変更提案 SECに調査要請
[ワシントン/ニューヨーク 17日 ロイター] - トランプ米大統領は17日、
米証券取引委員会(SEC)に対し
企業に決算を四半期ごとでなく半期に一度発表することを許容した場合の影響を調査するよう要請したことを明らかにした。
米企業幹部との話し合いを経てこうした要請を行ったとした。
米国では現在、公開企業は3カ月ごとに年4回決算を発表しているが、トランプ大統領の提案では決算発表は年2回に軽減され、
欧州連合(EU)、および英国と歩調を合わせることになる。
トランプ大統領はツイッターで「これにより柔軟性が増し、資金の節約もできる」との考えを示した。
そのうえで、多くの財界首脳との協議を経てSECに変更について検討するよう要請したと表明。
ある企業幹部は決算発表を半期に一度とすることはビジネス強化に向けた1つの方策となると語ったとした。
ただ具体的にどの企業の幹部がこうした見解を示したかについては明らかにしなかった。
トランプ氏はこのほど、休暇先のニュージャージー州のゴルフクラブに多くの大手企業の幹部を招いている。
トランプ大統領はその後、記者団に対し「(企業決算発表を)年2回とすることを望んでいるが、どうなるか見たい」と述べ、
退任が決まっているペプシコ(PEP.O)のヌーイ最高経営責任者(CEO)からこの件を提起されたと明らかにした。
これについてヌーイCEOは、ロイター宛ての電子メールで
「市場参加者の多くやわれわれビジネス・ラウンドテーブル(財界ロビー)会員は、より長期的な視点に立った企業のあり方
について議論を重ねている。わたしの発言にはこうしたより広範な事情が背景としてあるほか、
米国と欧州で異なる決算方式の調和を目指そうという意図も含まれている」と述べた。
四半期ごとの決算発表を廃止するにはSEC委員による採決が必要となり、
独立機関であるSECに大統領が変更を命じることはできない。
また、SECはトランプ氏が任命したクレイトン委員長の下で規制緩和に向けた措置を取ってきたが、公表された資料によると、
四半期決算発表の廃止は現在は議題に挙がっていない。
SECのクレイトン委員長は午後に入り発表した声明で、決算発表の頻度について検討し続けるとの立場を表明。
トランプ大統領は「米企業を巡る主要な検討事項」にあらためて焦点を当てたとした。
マサチューセッツ工科大(MIT)のスローン・スクール・オブ・マネジメントの上級講師、ロバート・ポーゼン氏は
「企業決算の発表が四半期ごとから半期ごとに変更されれば、投資家はタイムリーな情報を得ることができなくなり、
インサイダー取引が行なわれる恐れが著しく高まる」と指摘。企業が短期的に市場に監査されることを避けたいなら、
次四半期の業績見通し公表をやめることで解決できるとの考えを示した。
また、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏とJPモルガン(JPM.N)のダイモンCEOは今年6月、
米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙への寄稿で、採用、投資、研究・開発に向けた支出が抑制されているため、
四半期ごとのガイダンス公表をやめるよう呼び掛けた。ただ四半期決算発表の廃止は提案していない。
(ロイター 2018年8月18日 /
00:05)
ttps://jp.reuters.com/article/trump-suggest-biannual-earnings-report-idJPKBN1L21NC
トランプ米大統領、決算回数の半減提案:識者はこうみる
[17日 ロイター] - トランプ米大統領は17日、
米証券取引委員会(SEC)に対し企業に決算を四半期ごとでなく
半期に一度発表することを許容した場合の影響を調査するよう要請したことを明らかにした。
米企業幹部との話し合いを経てこうした要請を行ったとした。米国では現在、公開企業は3カ月ごとに年4回決算を発表しているが、
トランプ大統領の提案では決算発表は年2回に軽減され、欧州連合(EU)、および英国と歩調を合わせることになる。
市場関係者の見方は以下の通り。
●株価不安定化のリスク高まる
<エバーコアISI(ニューヨーク)の市場ストラテジスト、スタン・シップリー氏>
四半期ごとの決算発表について、コストのほか、視野が非常に短期的になるとの苦情がこれまでも長らく出ており、
決算発表を四半期ごとではなく幾分長めのスパンにすれば、企業は長期的な展望を持ちやすくなるとの意見も出ていた。
しかし残念なことに、こうしたことは事実ではないとの調査結果が出ている。多くの調査では、経営が良好な企業は
長期的な展望を持ち、四半期ごとの決算発表もうまくこなしていることが示されている。
さらに、投資家に提供される情報が少なくなれば、投資家に対し何が起きているのか直ちに情報が開示されないことになるため、
株価のボラティリティーが高まるリスクがある。
四半期ごとではなく半期に一度決算を発表することになれば、投資家にサプライズを与える公算が大きくなる。
●市場機能巡る抜本的変更、大統領令のみで実施できず
<チャールズ・シュワブ(テキサス州オースティン)のトレーディング・デリバティブ担当バイスプレジデント、
ランディー・フレデリック氏>
こうした提案を行なうのはトランプ大統領が初めてではない。少なくとも10年前から取り沙汰されていた。
個人的には悪い考えではないと思っている。ただ、投資家のほか、短期トレーダーは情報を必要としており、
企業経営がどうなっているのか四半期ベースで知りたいとしているため、実際に変更するのは難しい。
株価のボラティリティーが四半期決算発表時に最も高まることを踏まえると、理論的には半期ごとの決算発表で
市場のボラティリティーは低減するはずだ。
決算発表が年4回でなく年2回になれば、全般的な市場のボラティリティーは低減する。
ただ重要なのは、これは米国でのビジネスのあり方、ひいては資本市場の機能の仕方を巡る巨大でかつ抜本的な
変更になるということだ。
巨大客船「クイーンメリー号」をプールの中で方向転換させようとするようなもので、
トランプ大統領が大統領令1つで変更できる種類のものではない。
●透明性低下、金融システムに巨大な抜け穴
<シンク・マーケッツUK(ロンドン)の首席市場アナリスト、ナエーム・アスラム氏>
決算発表を半期ごとにすることで当然透明性は低下し、投資家は情報がない状態に長く置かれることになる。
こうした戦略は金融システム内に巨大な抜け穴を作るには最適の方法だ。さらに、こうした状況下では、
いかなる不祥事も市場、ひいては経済全般に対する深刻な脅威となり得る。
米市場は巨大であるため、他の国の市場と単純に比べることはできない。ただ投資家の観点からすると、
タイムリーな決定を行うために、企業の中で何が起きているのか定期的に情報を得たいはずだ。
報告のスパンを6カ月とすることで情報開示が限定されるため、確かに株価が敏感に動くことはなくなる。
ただ、予想外のことが起きた場合、四半期ベースで発表されている時と比べ、株価ははるかに大きく揺れ動くだろう。
(ロイター 2018年8月18日
/
00:15)
ttps://jp.reuters.com/article/instantview-trump-suggest-biannual-eaern-idJPKBN1L21NP
【コメント】
昨日は、「有価証券報告書は決して第4四半期報告書ではない。」という点と、
「証券制度上は(理論上は)、適時開示は全て『臨時報告書』の提出により行わねばならない。」、
という点について指摘をしました。
今日の日本経済新聞にまさにタイムリーな記事が載っていました。
最初に紹介しています記事がそれです。
米国において現在の四半期決算制度を半期決算制度へ変更することが提案されている、とのことです。
四半期報告制度では短期的な視点で経営が行われてしまう、という指摘があるようですが、私は全くそうは思いません。
現在の上場企業は永続することが前提のようなところがあります。
四半期毎に業績を開示することが短期的に過ぎるというのなら、
1年毎に業績を開示することもまた短期的に過ぎる、と言わねばならないでしょう。
実務上の話をすると、年1回の報告制度と比較すると、四半期報告制度では受けるべき監査の回数が年4回となりますので、
監査費用も単純計算で4倍となってしまうわけです。
監査法人に支払う監査費用や文書作成の事務作業量の増加は、実務上は発行者にとって大きな負担となるのは確かですが、
理論上は、投資家に開示される投資判断の材料(どちらの報告制度が投資家はより正確な投資判断が行えるか)という意味では、
年1回の報告制度よりも四半期報告制度が優れているのは明らかなことなのです。
四半期報告制度の理論上の問題点を敢えて挙げるならば、それは法人税法との整合性だと思います。
四半期報告制度では企業会計上四半期毎に決算を行うのに対し、法人税法上はあくまで1年間で所得の金額の計算を行うからです。
法人税法から見ると、四半期報告書に含まれる四半期財務諸表は何ら確定した財務諸表ではないのです。
四半期財務諸表の中の四半期損益計算書に記載される法人税の金額は、
あくまで企業会計上の擬似的・仮想的な法人税の金額に過ぎず、
法人税法上の金額(すなわち、納税者から申告され納付された金額)では決してないのです。
そこで、今日ふと思い付いたのですが、証券制度上「四半期報告制度」を導入すると同時に、
法人税法上も「四半期申告・納付制度」を導入するべきだ、と思い付きました。
現在では、会社法の改正に併せて法人税法の改正が行われることが非常に多い(特に会社の計算の分野)わけですが、
私が今提唱しているのは金融商品取引法の改正に併せて法人税法の改正を行うべきだ、という点です。
法人税法上、法人の所得の計算期間を現在の1年間から3ヶ月(四半期)に改正するわけです。
法人は当局に対し3ヶ月毎に(四半期毎に)法人税を申告し納付をする、という確定申告制度を導入するわけです。
私は以前、会社法制度上の四半期決算制度の問題点として、法人税法との乖離を挙げました。
会社は法人税を納付した後の利益(会社財産)を配当しなければならないのだから、
法人税の理論上は会社は四半期配当を支払うことはできない、と指摘したことがありますが、
私が今提唱している「四半期申告・納付制度」であれば、法人税法上も会社は何ら問題なく四半期配当を支払うことができます。
会社制度から見ても証券制度から見ても、法人税法を改正し法人は3ヶ月毎に(四半期毎に)確定申告を行えるようにするべきなのです。
I hit upon a new filing and tax payment system that a company files its final
Corporation Tax return for each quarter.
That is to say, the Corporation Tax
Act should be tied together with the quarterly reporting system in the
market.
会社は四半期毎に法人税の確定申告を行う、という新しい申告・納付制度を私は思い付きました。
すなわち、法人税法は、市場の四半期報告制度と結び付いていなければならないのです。