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2018年7月11日(水)



2018年7月11日(水)日本経済新聞
出光・昭シェル「強い会社に」 来年4月統合 社名は「出光興産」 収益改善効果500億円
創業家の影響力残る 迅速な経営判断に課題
(記事)




2018年7月11日(水)日本経済新聞
出光・昭シェル統合会見 月岡会長「形にとらわれず始動」 亀岡「アジア屈指の存在に」
(記事)




2018年7月11日(水)日本経済新聞 社説
世界市場に挑む石油会社に
(記事)


 


2018年7月10日
昭和シェル石油株式会社
出光興産株式会社
経営統合に関する合意書の締結のお知らせ
ttp://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2018/0710.pdf
ttp://www.idemitsu.co.jp/company/news/2018/180710.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)(昭和シェル石油株式会社)
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)(出光興産株式会社)



2018年7月10日
出光興産株式会社
当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ
ttp://www.idemitsu.co.jp/company/news/2018/180710_2.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




2018年7月10日
出光興産株式会社
自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ
ttp://www.idemitsu.co.jp/company/news/2018/180710_3.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)





出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が経営統合について書いた最近のコメント↓

2018年6月28日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180628.html

 

 



【コメント】
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が経営統合については、2018年6月28日(木)にコメントを書きました。
2018年6月28日(木)の時点で、出光興産株式会社の創業者の意向(経営統合に賛成する気持ちに転じた)も含め、
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社とは経営統合について合意をしていたわけですが、
その合意は内々のものであり、報道から2週間が過ぎた2018年7月11日(水)になって、
両社が正式に記者会見をしたりプレスリリースを発表したりした、ということであるわけです
経営統合の方法は、会社法に規定のある「株式交換」とのことです。
出光興産株式会社が販売するレギュラー・ガソリンと昭和シェル石油株式会社が販売するレギュラー・ガソリンとは全く同じ
なので、会社法に規定のある「合併」を行うのが一番自然だと思った、と2018年6月28日(木)のコメントで書きましたが、
過去実施された他の同業他社の経営統合の事例とも異なり、両社は会社法に規定のある「株式交換」とのことです。
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社は、2019年4月1日付けで、
出光興産株式会社が完全親会社、昭和シェル石油株式会社が完全子会社となる「株式交換」を行う予定となっているわけです。
石油業界ほど会社が基本的には全く同じ事業を営んでいる業界はないわけですから、
つまり、石油業界の会社はどの会社もその品質まで含めて販売商品が全く同じであるわけですから、
会社法に規定のある「合併」を行うのが一番自然だと個人的にはやはり今でも思うわけですが、
両社が「株式交換」という統合方法を選択した理由について少し考えてみました。
その理由とは、戦略面(経営計画等)や運営面(設備の統廃合等)や営業面(マーケティングや新たな商品開発等)からではなく、
実は会計面・財務面(一言で言えば貸借対照表)から説明が付けられるのかもしれないと思いました。
両社から発表されているプレスリリース「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」には、次のように書かれています(5/6ページ)。

>本日時点で、出光興産は、昭和シェルの発行済株式の31.25%に相当する117,761,200株を所有しております。

サウジアラビアのアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィが14.96%を所有する昭和シェルの大株主(第2位)である
わけですが、出光興産は31.25%を所有しているわけです。
有価証券報告書その他に何と記載されているかは(そしてどのような会計処理が行われているのかは)分かりませんが、
現時点で、連結会計上は昭和シェルは出光興産の持分法適用関連会社であるはずなのです(そうでないなら連結外しでしょう)。
このような状態(株式所有の状態・資本関係の状態)で、出光興産と昭和シェルが「合併」をしますと、
出光興産が所有する昭和シェル株式は出光興産株式に変わり、
その株式は貸借対照表上は自己株式(純資産の部にマイナス表示される)ということになるわけです。
そして、出光興産が現在所有している昭和シェル株式からは、合併後当然のことながら議決権が消滅するわけです。
合併に伴い、現在の昭和シェルの発行済み株式の議決権の31.25%が消滅するわけです。
それはイコール、サウジアラビアのアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィが昭和シェルの筆頭株主である
という状態で両社は合併をするというに等しい、ということになるわけです。
合併に伴う現在の昭和シェルの発行済み株式の議決権の消滅(議決権の31.25%が消滅すること)を勘案しますと、
サウジアラビアのアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィは現在、実質的に、
14.96%÷(1-0.3125)=21.76%、を所有していることになります。
そうしますと、存続会社である出光興産株式会社の合併後の株主構成は、
筆頭株主がサウジアラビアのアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィ(所有割合は10%超となるでしょう)となり、
第二位株主が日章興産株式会社(創業家の資産管理会社)(所有割合は10%未満となることは確実です)となるわけです。

 



紹介している記事には、創業家は経営統合後も出光興産株式会社に対する影響力を保っていきたい、
という気持ちが強かったようで、創業家は経営統合に賛成する条件として、
①出光興産の商号を残す、②推薦する取締役2人を新会社に入れる、といった事柄を求めていたとのことです。
記事に書かれていますように、会社側は確かにこれらの条件を受け入れたわけなのですが、
記事には経営統合後の株主構成については言及がないわけです。
創業家としては、経営統合後の出光興産株式会社の筆頭株主は自分達でありたい、という意向も持っていたのではないかと思います。
創業家が、経営統合後も出光興産株式会社の筆頭株主の座を維持したいという意向を持っているのだとすれば、
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社は「合併」を行うわけにはいかなかった、ということになります。
両社が、出光興産株式会社が完全親会社、昭和シェル石油株式会社が完全子会社となる「株式交換」を行うことにすれば、
出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社に対する出資(議決権)が経営統合後も生きることになりますので、
株式交換を実施した後の完全親会社である出光興産株式会社の株主構成は、
筆頭株主が日章興産株式会社(創業家の資産管理会社)(所有割合が10%未満となることは避けられませんが)となり、
第二位株主がサウジアラビアのアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィ(所有割合は10%未満)となるわけです。
資本関係を鑑みますと、出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が「合併」を行いますと、
出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社に対する出資が経営統合(「合併」)に伴いある意味無駄になると言いますか、
出光興産株式会社の立場からすると、現在所有している昭和シェル石油株式会社株式は自己株式(純資産のマイナス)にはなるは
従前は議決権を有していたのに議決権を行使できなくなる(「株式交換」なら同じ株式なので引き続き議決権を行使できる)はで、
踏んだり蹴ったりの状態になる(簡単に言えば、現在行っている出資の意味が完全になくなってしまう)わけです。
これが「株式交換」であれば、出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社に対する現在の出資が、その後も生きるのです。
また、これが「株式移転」の場合は、出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社に対する現在の出資は、
無駄にはならないものの、出光興産株式会社の共同持株会社に対する議決権の取り扱いが理論上は問題になるでしょう。
「株式移転」を行う場合は、株主名簿上は共同持株会社の筆頭株主は出光興産株式会社になります。
そして、第二位株主が日章興産株式会社(創業家の資産管理会社)(所有割合は10%未満となることは確実です)となるわけです。
仮に、会社法上、出光興産株式会社は共同持株会社に対して議決権を行使できないならば、
「株式移転」を実施した後の共同持株会社の筆頭株主はサウジアラビアのアラムコになります。
その場合、「合併」を行った場合の存続会社の株主構成と「株式移転」を行った場合の共同持株会社の株主構成とは
同じになる(どちらの場合も筆頭株主はサウジアラビアのアラムコになる)、ということになります。
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が「合併」を行う場合と「株式移転」を行う場合は、
存続会社である出光興産株式会社の株主構成や共同持株会社の株主構成がおかしなことになる(創業家が筆頭株主ではなくなる)のです。
ただ、この点についても、1つの考え方としては、「出光興産株式会社は合併後も合併前から所有していた株式について
議決権を行使できる。」、という考え方はあるとは思います(つまり、会社が株主として自社に対して議決権を行使するわけです)。
この考え方に基づけば、さらにはどのような資本関係であっても議決権は行使できるという場合は、経営統合後の株主構成は、
「合併」を行った場合の存続会社の株主構成=「株式交換」を行った場合の完全親会社の株主構成
=「株式移転」を行った場合の共同持株会社の株主構成、となるわけです。
2006年施行の会社法から、自己株式には議決権はない、という取り扱いになったのではないかと思います。
旧商法では、「存続会社は合併後も合併前から所有していた消滅会社株式について議決権を行使できる。」、であったと思います。
いずれにせよ、現行の会社法の規定を鑑みますと、出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が「「株式交換」を行う以外に、
日章興産株式会社(創業家の資産管理会社)が経営統合後に筆頭株主になる手段はないのです。
出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社が、そして、創業家が、ここまで考えていたのかどうかは分かりせんが、
経営統合後に創業家が筆頭株主になる手段は、実は「株式交換」しかないのです。
また、一般に、持分法適用関連会社との経営統合であれば、会計上は「合併」ではなく「(完全)子会社化」が自然なのだと思います。