2018年2月19日(月)



昨日のコメントに一言だけ追記します。

2018年2月18日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180218.html

私は昨日、納税者が海外に所有している不動産についての税務上の取り扱いについて、次のように書きました。

>日本国籍でも不動産登記が行える国においては、実務的なことを考えますと、
>両国の税務当局間で登記情報を交換する仕組みが課税の上で必要になってくると思います。
>2017年2月9日(木)付けの日本経済新聞の記事にあります「CRS」(共通報告基準)に、実は「登記情報」も加えるべきなのです。
>なぜならば、納税者所有の海外資産だなどというのなら、現地の不動産の所有は現地の金融機関の口座と同じだからです。

上記の論点と関連のある記事がありましたので紹介します。


2017年6月6日(火)日本経済新聞
課税逃れ防止 60ヵ国協定 日英仏など、あす署名 米は2国間で
(記事)



一言で言えば、グローバルな租税回避を防止するために約60カ国が租税条約を締結する、という内容になります。
この租税条約は、租税回避を防止するための「統一ルール」として加盟国の企業の適用されることになるとのことです。
各国の税務当局は基本的には国内で発生した益金と損金のみを捕捉・認識するわけなのですが、
昨日のコメントでは、所有不動産の所在地(所有権の発生場所)は海外であっても、
「登記」により所有が明確であれば国内の所有不動産と同じ取り扱いをすることは理に適う、と書いたわけです。
その際、各国の税務当局の間で「登記情報」についても情報交換をする仕組みが課税上求められる、と書いたわけです。
今日紹介しています2017年6月6日(火)付けの日本経済新聞の記事の租税条約というのは、
昨日紹介しました2017年2月9日(木)付けの日本経済新聞の記事にありました「CRS」(共通報告基準)のことだと思います。
今日紹介しています2017年6月6日(火)付けの日本経済新聞の記事にも、
「登記情報」の交換については記載がないように思いました。
タックスヘイブンに設立した法人の情報(登記事項)についても、
各国の税務当局間で情報交換をする仕組みが求められると思います。
そうでないと、自国からタックスヘイブンの法人に対し課税ができないからです。

 



それから、海外不動産の固定資産税についてですが、
現地の税務当局は納税者が固定資産を所有していることを理由として固定資産税を課するわけです。
一方で、固定資産の価値の減少を減価償却手続きにより不動産の帳簿価額に反映させていくわけなのですが、
ではその固定資産は一体どこで価値の減少が生じたのかと言えば、まさに現地(固定資産の所在地)であるわけです。
他の言い方をすると、「登記」されている場所(不動産のある住所、「所在」)で価値の減少が生じたわけです。
つまり、固定資産は日本で価値の減少が生じたわけではないわけです。
固定資産は日本で価値の減少が生じたわけではないにも関わらず、
日本でその価値の減少分(減価償却費)が損金として認識される、というのは、どこか論理的におかしいように感じました。
価値の減少が生じた場所で価値の減少分(減価償却費)が損金として認識されないとおかしいように思ったわけです。
「登記」されている固定資産が「登記」されている場所(「所在」)において価値が減少した、だから、
「登記」されている場所(「所在」)において減価償却費(損金)が生じた、と考えるのではないでしょうか。
端的に言えば、海外で発生した損金がなぜ日本で損金になるのか、という考え方になると思ったわけです。
海外不動産について、日本で固定資産税を課税する、という考え方はないわけです。
その理由は、固定資産税は所有していることそのことを理由とした課税だからです。
つまり、所有権の発生場所は登記されている場所(「所在」)であることを理由とした課税だからです。
所有権の発生場所は海外である以上、日本の税務当局が海外不動産について固定資産税を課税することはできないわけです。
所有者は日本人であることを理由に、日本の税務当局が海外不動産について固定資産税を課税することはできないわけです。
その理由は、固定資産税は所有権の発生場所と関連があるからです(所有権の発生が課税原因と言っていい)。
この考え方を応用して考えてみると、減価償却費(損金)は「登記」されている場所(「所在」)でしか発生しない、
という考え方にならないだろうかと思いました。
所有者は日本人であることを理由に、日本の税務当局が海外不動産についてその価値の減少分を減価償却費(損金)である
と認識することはできない(日本では価値の減少など生じていないから)、という考え方にならないだろうかと思いました。
固定資産の価値の減少もまた、所有権の発生場所と関連がある、と考えなければならないのではないだろうかと思いました。
固定資産の価値の減少というのは、法理・法律面からではなく、財産権(金銭的価値)というような考え方から言えば、
「『所有権』の減少」、という見方ができるわけです。
「『所有権』の減少」はどこで生じたのかと言えば、「登記」されている場所(「所在」)(すなわち、所有権の発生場所)、
ということになるわけです。
「所有者は誰か?」(現地人か日本人か?)は「『所有権』の減少」とは関係がないわけです。
所有者が誰であろうとも、固定資産は法定耐用年数に基づき規則的にその価値が減少するわけです。
固定資産の価値の減少は、所有者と結び付いているのではなく、所有権の発生場所(稼働場所)と結び付いているわけです。
固定資産の価値の減少が損金として認識されるのは、所有権の発生場所(稼働場所)でだけではないかと思いました。
1つの考え方としては、海外不動産の減価償却費は日本において損金とは認められない、となろうかと思います。
実務上のことを言えば、結局のところは、
各国の税務当局間で租税条約を締結するといった課税に関する制度設計次第の部分もある、
すなわち、例えば減価償却費(損金)が国境を越えるようにも設計できるとは思いますが、
観念的には以上のようなことが言えるのではないかと思いました。