2018年1月20日(日)



2017年11月21日(火)日本経済新聞 多面鏡
「森林バンク」に課題山積 所有者・境界画定が第一歩
(記事)




2017年12月6日(水)日本経済新聞
所有者不明土地 公共利用容易に 国交省、手続き簡素化
(記事)


2017年12月12日(火)日本経済新聞
所有不明農地 賃借促す 農水省 権利判明後は金銭解決
(記事)


2018年1月16日(火)日本経済新聞
市町村の差し押さえ不動産 国が代理競売 可能に 迅速売却狙う
(記事)

 


「土地の所有権とは何か?」という点について書いた昨日のコメント↓

2018年1月19日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180119.html

 


【コメント】
昨日は、中国における土地制度(土地公有制)を題材にして、土地の使用権(土地の所有権との相違)について考察を行いました。
私は、書きたい内容について自分なりに一通り考えをまとめ、コメントを書き終わった後で、
「そう言えば、昔このことについて聞いたことがある気がするぞ。」、と思い出すことが非常に多いのですが、
昨日もコメントを書き終わった後、4歳前後の頃、近所に住む年配の人から、
「昔は、土地は、期限付きで国から購入していた(そして、期限が到来したら、更地にして国に返還しなければならなかった)。」、
という話を聞いた気がするな、と思い出しました。
購入可能期間が何年間と聞いたかまでは覚えていません(例えば、現行の借地借家法上の借地権の存続期間は30年間ですが)が、
人が国から購入した土地を一生の間使用し続ける(期限の設けずに土地を使用し続ける)などという考え方はない、
という話をその時に聞いた記憶があるわけです。
人が国から土地を購入して使用し続けることができる期間は、非常に短かった(10年間くらいか?)ように感じた記憶があります。
4歳前後の頃に聞いた話ですので、詳しいことは質問しなかったのですが、
期限が到来したら一旦国に返還して即座に再購入するというようなことが当時できたのかは分かりませんが、
土地の購入とは言え、土地の所有者は所定の期限が到来したら必ず更地にして国に返還しなければならなかった、というのは、
戦前の日本では、純粋な意味で私人が土地を所有することはできず、事実上土地公有制であった、と言っていいと思います。
戦前の日本では、期限付きの土地の購入(国への返還前提の土地使用)しかできなかった、という話を思い出しました。
率直に言えば、戦前の日本では、土地に所有権という概念はなかった(使用権のみがあった)、と言っていいのだと思います。
そして、上記の議論と関連がある記事を今日は4つ紹介しています。
最近は、「所有者不明の土地」に関して頻繁に議論されているわけなのですが、市街地の土地だけではなく、
所有者不明の山林や所有者不明の農地や所有者不明の野原・空き地が近年では増加し様々な問題を引き起こしているとのことです。
所有者不明の山林に関しては、林野庁が中心となって、所有者を割り出し、山地の境界を画定させることが
現在進められているとのことです。
また、山地の権利関係を整理した上で、山地の賃貸借を推進していこうとする制度(「森林バンク」)も
今後創設される予定となっているとのことです。
そして、上記の「森林バンク」と全く同じ考え方になるのですが、
農林水産省が中心となって、所有者や相続人を割り出し、農地の賃貸借を推進していこうとする制度(「農地バンク」)も
今後創設される予定となっているとのことです。
さらに、概念的には上記の「森林バンク」や「農地バンク」と非常に近い考え方になってくるのではないかと思いますが、
国土交通省が中心となって、所有者が分からないまま放置されている土地の活用を可能にする方策が検討されているとのことです。
2017年12月6日(水)付けの日本経済新聞の記事には、次のように書かれています。

>公共事業で利用する際に土地収用の手続きを簡略にするほか、広場などに使えるようにする「利用権」を創設する。

>所有者不明土地を活用する仕組みとして、道路や河川などの公共事業で用いる場合、土地収用法の手続きを簡略化する。
>居住や事業に使われていない場合、小屋などがあっても、所有者が発言する機会などがある収用委員会の審理を省き
>都道府県知事の裁定で権利取得できるようにする。

山地であれ農地であれ公共事業で用いる土地であれ、所有者が不明な場合は、所有者不明のまま放置放任するのではなく、
国が積極的に関与して、所有者や相続人を割し出したり、また、所有者が不明なら不明まま、
意欲のある他者が土地をできる限り利用できるようにする仕組み作りが現在進められている、ということなのだと思います。

 



一連の記事を読みまして、山地であれ農地であれ公共事業で用いる土地であれ、現在の中国や戦前の日本ではありませんが、
「土地の所有者が国であれば、記事で論じられている諸問題は一切生じないことになるはずだ。」、というふうに思いました。
土地公有制であれば、万が一土地の使用者(所有者)が行方不明などで連絡が付かない状態になったとしても、
一定の時間が経過すれば、自動的に国に使用権が移り(従前の使用権者は使用権を自動的に失う)、
土地の使用者が不明(連絡が付かないなど)という状態は自動的に解消される(権利関係も自動的にきれいに整理される)、
ということになるなと思いました。
戦前の日本の土地制度では、期限付きの購入しかできなかった理由が、上記の「権利関係の自動的な整理」にあるのかどうか
については正確なところは分かりませんが(4歳くらいの時にそのような理由を聞いたような気もします(「人は死ぬから」と))、
「土地を何に使うのか(ある土地の用途は何か)?」(都市計画のようなもの)を決めるのは元来的には国である、
というような考え方に立てば、土地の所有権はあくまで国にある、ということの説明になっているようにも思いました。
「土地というのは、本質的に国のものなのだ。」、という土地に関する基礎概念があるようにも感じました。
法理的・元来的には、昨日の"Who owns lands?"(土地というのは、誰が所有しているものなのか?)という問いの答えは、
"A government does, at least by their nature."(政府です。少なくとも本質的にはそうです。)という答えになります。
そして、2018年1月16日(火)の日本経済新聞の記事は、例えば固定資産税を滞納した納税者の不動産を差し押さえることなどに
関連した内容だと思えばよいのだと思いますが、固定資産税の納税義務者は台帳の情報基を鑑みれば、
不動産登記簿上の所有者であるわけですから、固定資産税の滞納があった場合は国や地方自治体が不動産を収用する、
という考え方を行えばよいのだろうと改めて思いました。
結局のところ、国がどのような手続きを用いて土地の所有権を取り戻すのか(英語で言えば"retrieve"でしょうか)が、
「所有者不明の土地」の問題解決では重要な論点となると思いますが、
土地は本質的に国のものだ(土地の使用者は一時的に使用する権利があるに過ぎない)、
という考え方・基本概念が土地の基底にありますと、土地に関する権利関係の整理が非常に円満になるのだろうと思いました。
例えば、固定資産税は一種の「土地の使用料金」(地代、場代、英語で言えば"toll")である、考えれば、
固定資産税の滞納は使用権の喪失につながる、ということの説明が付くのではないでしょうか。
土地の購入費用は、土地の独占的使用を行うための代金(その土地を他者が使用できなくするための費用)に過ぎない、
というふうに考えれば、土地の権利関係についての概念が整理できないだろうかと思いました。
簡単に言いますと、一私人が土地を所有してしまいますと(一私人が私有財産として土地の所有権を有してしまいますと)、
公共の利益(その土地を利用したい他の人々の利益、社会的により有用な土地の利用方法)のようなことを考えますと、
実務上の弊害が大きい(土地については使用権だけに制限した方が実務上の問題が起きにくい)、ということなのだと思います。
「土地は国が所有するものだ。」というところから土地について考えると、話(概念)の整理が付きやすいように思いました。
それから、現実には「国の管理なしには土地という財産は成り立ち得ない。」、という点について、次のように書きました。

>現在の日本においても、土地は国が定めた地番(一筆)毎の取引しか基本的に行えず(私人による区画整理は事実上困難)

インターネットで「区画整理 地番」で検索してみると、法律上は私人でも区画整理をすることは可能ではあるようです。
土地区画整理法という法律があるようでして、一私人でも土地の区画整理事業を施行することができるようです。
地方自治体のホームページ上にも、住所や地番の変更を申請するための申請書がアップロードされていたりします。
つまり、法律上は、私人が区画整理事業を施工し土地の取引単位(形や面積)を変更する、ということも可能ではあるわけです。
その意味では、法律上は、土地は国が定めた地番(一筆)毎の取引しか行えないというわけではない、という解釈になります。
ただ、実務上は、区画整理事業の施工や住所や地番の変更が認可されるかどうかという現実的な問題はやはり別途あると思います。
また、土地利用の計画(都市計画等)の立案や土地の区画整理事業の施工は、元来的には国のみが行うことなのだと思います。