2018年1月19日(金)



2018年1月19日(金)日本経済新聞 社説
一見順調そうな中国経済に潜む問題点
(記事)





Who owns lands?

土地というのは、誰が所有しているものなのか?

 



【コメント】
「土地」とは何だろうか、と考えさせられた記事ありましたので紹介します。
本日2018年1月19日(金)付けの日本経済新聞の記事(社説)には、中国における土地の所有について、次のように書かれています。

>「社会主義市場経済」を標榜する中国は土地公有制を崩さず、期限付きの使用権を売買している。
>だが、実際には不動産が経済の支え役になっている。
>中央、地方政府が土地使用権を売り出し、その収入が財政を支える構造である。

記事を要約しますと、中国では、現在でも土地は公有制となっており、土地の「所有権」そのものは国が有し続けるのだが、
土地には「期限付きの使用権」を付することができ、土地に関してはその「期限付きの使用権」が市場で売買されている、
という取り扱いになっているとのことです。
ただ、土地の利用方法は「その上に何かを建てる」ということしかない、ということを鑑みると、
土地に関しては所有権そのものは問題にならないと言いますか、
土地の所有権と土地の使用権とは、土地を利用する立場の人物から見ると、概念的には同じと言えるのではないかと思いました。
「私はこの土地を所有している(私はこの土地の所有権を有している)。」
「私はこの土地を利用する権利がある(私はこの土地の利用権を有している)。」は、
「土地の利用」に関しては同じ権利内容を意味するように思うわけです。
細かいことを言いますと、土地の使用権に期限がない場合は、土地の使用権は土地の所有権と事実上同じであると思います。
逆に、土地の使用権に期限がある場合は、土地の使用権は、言わば「期限付きの土地の所有権」と概念上同じであると思います。
正確な年代は覚えていないのですが、おそらく戦前の日本における土地制度がそうであったのではないかと思うのですが、
当時の日本における土地の売買というのは、結局のところは「土地の使用権」の売買であった、
と言っていいのではないかと思います。
当時に日本では、土地の取引相手は国のみであったわけですが、その土地の取引では、
土地の購入者は所有者という形で登記簿に登記はなされるものの、
その権利内容というのはやはり「土地の使用権」という意味合いが強かったのではないかと思います。
特に、所有している土地は最後には国に売らなければならない(更地にして国に返還しなければならなかった)、というのは、
煎じ詰めれば、概念的には、全ての土地は国の所有物だ、ということを表しているように思うわけです。
「土地の所有者は土地を誰に売却してもよい。」、という土地制度の場合は、
土地の所有権は土地の所有者が有しているように感じるわけですが、
「土地の所有者は土地を必ず国に売却しなければならない。」、という土地制度の場合は、
土地の所有権はやはり国が有している(登記上の土地の所有者は土地の使用権を有しているに過ぎない)ように感じるわけです。
例えば、現代の土地の賃貸借においては、土地の借主は借りている土地を必ず土地の貸主(土地の所有権者)に返還するわけです。
現代の土地の賃貸借において、土地の借主は借りている土地を誰に返還してもよい、などという考え方は当然ないわけです。
したがって、制度上「土地を返還する相手方は決まっている。」という場合は、
その土地の使用に関する権利というのは、所有に分類される権利ではなく、あくまで使用権を表象するに過ぎないと思うわけです。
「所有」とは言うものの、極めて権利内容が制限された所有に過ぎない(だから「使用権」に過ぎないと)、と感じるわけです。
その意味において、現在の中国における土地公有制は、実は戦前の日本の土地制度に似ているところがあるのだろうと思います。
また、現在の日本においても、土地は国が定めた地番(一筆)毎の取引しか基本的に行えず(私人による区画整理は事実上困難)、
所有者は所有している土地を誰に売却してもよいとは言え、本質的に国が管理をしている目的物を取引しているに過ぎない、
という意味において、純粋な私有財産とは異なり、実際には国が売り出した土地を二次的に当事者間で取引しているに過ぎない、
他の言い方をすれば、国の管理なしには土地という財産は成り立ち得ない(その意味で全土地は本質的に国有だ)、と感じます。