2017年11月23日(木)



2017年11月22日(水)日本経済新聞
コニカミノルタ 現金決済を廃止 欧米含めグループ間
(記事)





目的物の「対価の金額」が売り手の譲渡価額であり買い手の取得価額である、
すなわち、会計や税法の観点から言えば、人間には「対価の金額」しか見えない、という点について書いた昨日のコメント↓

2017年11月22日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201711/20171122.html

 


【コメント】
記事を一つ紹介し、昨日のコメントに一言だけ追記をします。
昨日は、愛について、ではなく、「事業承継税制」を一つの題材にして「株式の評価」ということについてコメントを書きました。
一般に、上場株式は「株式の評価」など行わないのではないか(上場株式にあるのは株式市場における株価だけではないのか)、
と思われているかもしれませんが、その考え方は大間違いだ、という点について指摘をしました。
非上場株式も上場株式も、価額の算定に当たっては必ず「株式の評価」を行います。
ただ同時に、「株式の評価」とは言いますが、それはあくまでで投資家の投資判断であり主観である、と書きました。
「株式の評価」は投資家(算定者)の数だけありますので、その「主観」を課税標準にすると「評価」は途端に「fancy」になる、
と書きました(つまり、課税は「fancy」ではなく「客観性」と「事実」に基づき行っていくべきだ、と書いたわけです)。
それで、紹介しているコニカミノルタの記事についてですが、コニカミノルタと言えばやはりコピー機が有名ですが、
簡単に言いますと、コニカミノルタは、親会社が製造したコピー機を販売子会社へグループ内で販売しているわけです。
それで、販売子会社は親会社へコピー機の購入代金を支払っているわけです。
ただ、その際の代金の決済に関して、記事では、現金決済を廃止する、というふうに書かれているわけです。
そのようなことが可能である理由として、コニカミノルタではグループ内の資金管理を一元化するシステムを構築しており、
親会社は子会社の資金状況をリアルタイムで管理できるようになっているからであるようです。
記事には、コニカミノルタのグループ現金管理システムについて、次のように書かれています。

>従来、子会社は自分の取引銀行を通じて親会社と資金のやりとりをしていた。
>新システムを導入すると、子会社は銀行を通さずにグループ内での決済が可能。

記事を読むだけでは、コニカミノルタのグループ現金管理システムについては詳しくは分からないのですが、おそらく、
親会社が子会社の資金を預かっている、ということなのではないかと思います。
親会社が擬似的なグループ内銀行のような役割を果たしており、
子会社が親会社に預けている資金はあたかも銀行の預金であるかのように、グループ内で扱うことができるのだと思います。
簡単に言えば、子会社から見ると、現金の預け先が銀行か親会社かの違いしかない、
という状況になっているのではないかと思います。
例えば、子会社甲から別の子会社乙への代金の支払いの際には、親会社が預かっている資金が、
「甲からの預かり金勘定」」から「乙からの預かり金勘定」へと振り替えられる(つまり、預かり金の残高が移動する)、
といった仕組みになっているのではないかと思います。
多額の現金を手許に保有するということは現実にはしないため、銀行を一切通さないということは取引の上では非常に難しい
のではないかと思いますが、概念的には以上のような仕組み(擬似的な銀行預金)になっているのではないかと思います。

 



ただ、これでは記事に書かれているような「現金決済の廃止」には全くなっていないわけです。
記事に書かれている「現金決済の廃止」がどのような意味なのかはよく分からないのですが、
記事を読む限りは、結局のところ、最後はグループ会社間で現金決済を行っていることになると思います。
ただ、私が「現金決済の廃止」と聞いてすぐ思いましたのは、一言で言えば、無対価の取引です。
システム導入により、親会社は製造したコピー機を販売子会社へ無償で譲渡することになったので、
現金決済が廃止されることになった、という意味なのだろうかと最初思ったわけです。
「現金決済を廃止する」となりますと、後は物々交換くらいしか決済手段がない、と言っていいくらい、
決済の手段は現金であると言っていいわけです(そもそも現金の役割は決済であるわけです)。
かと言って、グループ経営上、販売子会社から親会社へ譲渡できる物があるとは思えないわけです。
ですので、「現金決済の廃止」と聞いて、親会社は製造したコピー機を販売子会社へ無償で譲渡する、
といったようなことをするのだろうかと思ったわけです。
それならば、「対価の金額」は0円であるわけですから、現金決済はない、ということになるなと思ったわけです。
しかし、考えてみますと、その場合、譲渡した製品の製造原価が損失として親会社に計上されることになってしまうわけです。
それはそれで、グループ経営上も親会社の損益状況としてもおかしいなと思いました。
また、たとえ親会社が製造原価で製品を販売子会社へ譲渡するとしても、最後は現金決済の部分が取引上生じるわけです。
「現金決済の廃止」の意味がよく分からないな、と思っています。
ただ、昨日のコメントを踏まえた上で今日書きたいことというのは、
少なくとも言えることは、親会社が製造したコピー機を販売子会社へ無償で譲渡するという場合、昨日のコメントを踏まえますと、
販売子会社には受贈益は認識されない、ということです。
販売子会社は、親会社から無償で譲り受けたコピー機を自社の顧客(法人のお客様など)へ販売していくわけですが、
当然のことながら、親会社から無償で譲り受けたそのコピー機には、大なり小なりの「benefit」(便益)があるわけです。
そのコピー機には大なり小なりの「benefit」(便益)があるからこそ、
その「benefit」(便益)を享受するために、顧客はそのコピー機を購入し対価を支払うわけです。
しかし、販売子会社が親会社からコピー機を無償で譲り受けた時点では、やはりその「benefit」(便益)に価額はないわけです。
顧客が「benefit」(便益)を享受を目的に販売子会社に対価を支払って初めて、コピー機に価額が付くわけです。
コピー機に付く価額は、すなわち、顧客が販売子会社に支払う対価の金額は、
顧客が享受したい「benefit」(便益)を顧客なりに金銭で表現した場合の金額よりも小さい金額となります。
コピー機に付く価額は、すなわち、顧客が販売子会社に支払う対価の金額は、
顧客が享受したい「benefit」(便益)の金額(顧客による観念値)と必ずしもイコールではありません。
数式で書けば、「コピー機に付く価額(顧客が販売子会社に支払う対価の金額)≦顧客が享受したい「benefit」(便益)の金額」、
となるわけです(顧客は享受したい「benefit」(便益)のため、最大でも「benefit」(便益)の金額までしか代金を出さない)。
一言で言うならば、目的物の対価の金額でさえ、(顧客が思う)「benefit」(便益)の金額とは異なるのです。
しかし、人間に分かるのは(税法や会計が対象としているのは)、目に見える金額だけなのです。
ですので、目的物の対価の金額(目的物に付いた価額)を、それぞれ、売り手の譲渡価額、買い手の取得価額、としているわけです。
売り手と買い手双方が、それぞれ心に思い描いている目的物にまつわる「benefit」(便益)の金額は異なるわけです。
それぞれ心に思い描いている目的物にまつわる「benefit」(便益)の金額は異なる中で、両者で商談・交渉(申込・承諾)を行い、
目的物の対価の金額(目的物に付く価額)が決まる、というだけなのです。
ある目的物を無償で譲り受けた際に、「時価」で譲り受けたものと見なす、というのは理論的にはやはり間違いなのです。
「無償取得により、あなたはこのような金額に相当する『benefit』(便益)を享受できますので差額を受贈益として認識します。」、
という考え方は、理論的にはやはり間違いなのです(「benefit」(便益)の金額=「時価」では全くないのですから)。