2017年7月1日(土)
過去の関連コメント
2016年10月4日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161004.html
【コメント】
以前もほぼ同じ趣旨・内容の公告を紹介したことがある(cf.
2016年10月4日(火))のですが、
2016年10月4日(火)のコメントを踏まえながら、若干修正すべき点も含め、改めて話の流れを整理したいと思います。
紹介している公告の内容を簡単に要約しますと、以下のようになります。
今般、ある被相続人が死亡したわけなのですが、
被相続人が生前入会していたゴルフクラブの会員資格(正確に言えば、その会員資格を表象する会員資格預り金証書)を
相続人が相続をしたい、と思ったわけなのですが、
会員資格預り金証書が被相続人の遺物や身の回りには見当たらない、という状態なのだと思います。
相続人は、会員資格預り金証書を相続した後は、預託保証金の払い戻しをゴルフクラブに請求するのかもしれませんし、
ゴルフクラブの正会員として被相続人に代わりゴルフクラブを利用するのかもしれません(現実に当然どちらも想定される)。
そのどちらの意向を持っているにせよ、目下相続人は会員資格預り金証書を相続をしたいと考えているわけです。
ところが、いくら探しても被相続人の遺物や身の回りには会員資格預り金証書が見当たらない、ということで、
相続人はゴルフクラブに対し、被相続人の身の回りには会員資格預り金証書は見当たらないのだが
自分は相続人であるから会員資格を相続したい旨、申し出たのだと思います。
すると、ゴルフクラブは相続人に対し、会員資格預り金証書を提示していただかないと会員名簿の名義(人)を変えられません、
と返事をしたのだと思います。
その理由は、会員資格預り金証書に記載されている名義人と会員名簿に記載されている名義人を一致させなければならない
からです、とゴルフクラブは相続人に対し返事をしたのだと思います。
すると、相続人はゴルフクラブに対し、被相続人は既に死亡しているのだがどうしたらよいのか、と尋ねたのだと思います。
すると、ゴルフクラブは相続人に対し、まずは会員資格預り金証書の紛失再発行の手続きを取って下さい、
と返事をしたのだと思います。
会員資格預り金証書の紛失再発行の手続きが終わった後、改めて名義人変更の手続きを進めていきたいと思います、
とゴルフクラブは相続人に対し返事をしたのだと思います。
それで、現在、相続人は、会員資格預り金証書の紛失再発行の手続きを取っているところなのだと思います。
ゴルフクラブから被相続人が名義人となっている会員資格預り金証書が再発行され、その後、
相続(被相続人は既に死亡している)ということで、相続人は会員資格預り金証書の名義人を被相続人から相続人へ変更する、
という手続きを取っていきたいと相続人は考えているわけです。
それで、2016年10月4日(火)のコメントでは、
「生前被相続人は證書を譲渡しなかったのか否か?」(譲渡していた場合は権利関係が不明確になる)
という点から考えたわけなのですが、相続のことが議論に含まれますと今日の議論では話が煩雑になりますので、
論点(事の本質)は同じですので、話の都合上相続のことは今日は度外視します。
論点を絞るために、「法律上、ゴルフクラブの正会員の資格(会員資格)があるのは誰か?」についてのみ考えたいと思います。
すなわち、理論上そして実務上、「ゴルフクラブの正会員の資格(会員資格)がある人物」として考えられるのは、
@会員資格預り金証書の所持人
A会員資格預り金証書に記載されている名義人
B会員名簿に記載されている名義人
の3者が考えられるわけですが、これら3者の名義が全てまたは一部異なっていた場合は、
一体誰を「ゴルフクラブの正会員の資格(会員資格)がある人物」として考えるべきなのか、について考えたいと思います。
理論的には、これら3者の名義は当然に一致します。
そして、実務上は、権利関係を明確にするために、これら3者の名義は常に一致させなければならない、と言えるわけです。
法理的には、目的物が有体物である場合は、目的物の所持人が目的物の所有者です。
しかし、会員資格という目に見えない権利に関しては、権利内容や金額の重要性を鑑み、
実務上は、会員資格預り金証書の所持人が会員である、という考え方はしてないわけです。
むしろ、「ゴルフクラブの正会員の資格(会員資格)がある人物」は
ゴルフクラブが会員名簿で管理する、という管理方法を取っているわけです。
端的に言えば、「B会員名簿に記載されている名義人」が会員である、という考え方になるわけです。
そして、会員であることの証としてゴルフクラブは「会員資格預り金証書」を会員に交付するわけです。
その意味において、「会員資格預り金証書」は、ゴルフクラブにとっては本人確認の手段であり、
会員にとっては身分証明書(会員であることの証明書)であるわけです。
ただ、実務上ここで問題となるのは、会員名簿の書き換えはせずに会員が「会員資格預り金証書」を他者に譲渡した場合や、
会員が「会員資格預り金証書」を紛失した場合や「会員資格預り金証書」が盗難にあった場合なのです。
これらの問題に対する現実的対応としては、
会員名簿の書き換えはせずに会員が「会員資格預り金証書」を他者に譲渡したりすることができる限りないよう、
「会員資格預り金証書」にも会員名簿上と同一の名義を記載する、という対応が現実には取られていようかと思います。
理論的には、会員種別と会員番号さえあれば、会員の名義を「会員資格預り金証書」に記載する必要はないわけです。
特に、「会員資格預り金証書」を譲渡することが前提の場合はそうであると言えるわけです(譲渡できない場合も全く同じですが)。
会員名簿を見さえすれば、「その会員種別と会員番号の名義人(会員名)は誰某である。」と一意に明確に分かるからです。
そのための会員名簿だ、と言ってもいいと思います。
少なくとも、「会員資格預り金証書」記載の名義人はその意味において相対的には本質的ではない、と言えるでしょう。
確かに、例えば不動産登記における登記済証では、所有者の名義は登記済証に記載されているわけですが、
それは所有権の移転の登記のたびに登記済証を法務局が交付しているからこそできることだ、と言えるわけです。
登記済証(紙)記載の所有者の名義を二重線等で消去し書き換えた上で、登記済証を使い回すことはしないわけです。
ゴルフクラブも(そして例えば株式会社が発行する株券(紙)も)、「会員資格預り金証書」の譲渡のたびに、
新会員に対し新しい「会員資格預り金証書」を発行してもよい(理論的には確かに問題なくできる)わけなのですが、
要するところ、「会員資格預り金証書」の譲渡では、「会員の名義」のみが変更になるわけなのですから、
それは会員名簿の名義を変更しさえすればそれで必要十分である、と言えるわけです。
「会員資格預り金証書」が非常に頻繁に譲渡される状況を想定してみますと、
ゴルフクラブは「会員資格預り金証書」を譲渡が行われるたびに発行するか、
さもなくば「会員資格預り金証書」は二重線だらけになる(そして最後は名義人を記載するスペースがなくなる)でしょう。
ゴルフクラブは、新規に会員が増えた場合(新規入会の場合)のみ、「会員資格預り金証書」を発行するべきではないでしょうか。
譲渡の場合も「会員資格預り金証書」を発行するのはおかしいと言えると思います。
株式会社の場合でも、新株式の発行の場合のみ、株券(紙)を発行するわけです。
株式が譲渡された場合に会社が株券(紙)を発行するのはおかしいわけです。
一般論を言うと、「会員資格預り金証書」や株券や債券を含めた(特に譲渡を制度上前提とした)有価証券の場合は、
実は「無記名式」が理論的には正しい(その時の有価証券の所有者は名簿で管理すればよいだけだ)と思います。
例えば不動産登記における登記済証を見ますと、権利を表象する証券は「記名式」が正しいかのように思えますが、
概念的には、登記済証に所有者の名義を記載する必要はない、と言えると思います。
不動産の種別と地番(マンションの場合は部屋番号等も)毎に(言わば不動産の区分毎に)、
区分(地番や部屋番号)の所有権を表象する登記済証を法務局が発行するようにすれば、それで必要十分であるわけです。
「区分と登記済証とが一対一に対応している」状態を頭に思い浮かべてもらいたいのですが、
区分を譲渡する際には、登記簿の所有者の名義を書き換え、(譲渡する区分と対応した)登記済証も同時に相手方に引き渡す、
ということをすれば、登記済証自体には所有者の名義を記載する必要はない、と分かると思います。
登記済証には、不動産の種別と地番・部屋番号のみを記載すればそれで必要十分(所有者の名義は登記簿で分かる)なのです。
理論的には、登記済証に所有者の名義が記載されている必要は全くない(理論的には不必要とすら言える)のです。
不動産登記における登記済証は本人確認の手段なのですが、それは登記済証を持っている人が不動産の所有者だという意味であって、
登記済証に所有者の名義が記載されていなければならないわけではないのです。
現在(2004年改正前の制度では)、登記済証はどちらかと言うと所有者と一対一に対応しているところがあると思うのですが、
所有者ではなく区分と一対一に対応している登記済証(登記済証を使い回す法制度)が理論的には全く問題なく考えられるわけです。
「会員資格預り金証書」や株券や債券の場合も同じ考え方になるわけです。
当事者間で取り交わす契約書や例えば取引で用いられる手形等の場合は書面に書かれている名義人が極めて重要であるわけですが、
ここでは「目的物の譲渡をどのような手段で実現するか(そしてどのような手段で所有者を明らかにするのか)?」、
についての話をしていますので、権利を表象する証券の方には名義人を記載する必要はない、という結論になるわけです。
権利を表象する証券には、目的物を一意に示す記載さえあれば、
あとは登記簿や名簿によりその目的物の所有者を一意に明らかにできる、という流れになるわけです。
「記名」をするのは登記簿や名簿なのであって、権利を表象する証券は理論的には「無記名」でよい、という結論になるのです。
ゴルフ場を利用する時に会員がゴルフクラブに提示するメンバーズカードに会員名が記載されていてはならない、
ということはないわけですが(現実的な利便性を考えれば記載されている方が便利な場合もあるでしょう)、
理論的にはその必要ないわけです。
On the principle of law, which person is a lawful owner of a security,
a
named person written in a certificate or a named person written in a
register?
To put it simply, which is more legally strong, a certificate or a
register?
法理的には、証書に記載されている名義人と名簿に記載されている名義人のどちらが法律上正式な証券の所有者なのですか?
簡単に言えば、証書と名簿とどちらが法律的に強いのですか?