2016年10月4日(火)



2016年10月1日(土)日本経済新聞 公告
公告
神奈川開発観光株式会社
(記事)

 



【コメント】
今日紹介している公告は、ゴルフクラブが行っている公告になります。
ある被相続人が亡くなったので、代表相続人が、ゴルフクラブに対し会員資格預り金證書の紛失再発行の申請を行った、
という内容になります。
親父さんが亡くなったですが、ゴルフ会員権を親父さんが持っていたことを相続人達は知っていて、
それで、ゴルフ会員権も皆で相続することになった、ということなのでしょう。
ただ、ゴルフ会員権を相続するためには、ゴルフクラブに会員資格預り金證書を提示せねばならないようなのですが、
相続人達は死んだ親父さんの会員資格預り金證書がどこにあるのかは分からない、ということなのだと思います。
それで、ゴルフクラブに対して、会員資格預り金證書の紛失再発行を申請した、ということのようです。
ゴルフクラブとしては、問題がないようであれば会員資格預り金證書の紛失再発行に応じるつもりではいるのだと思いますが、
紛失再発行となりますと、以前発行した会員資格預り金證書は無効となってしまいますので、
間違いのないように紛失再発行の手続きを取っていきたいと、ゴルフクラブは考えているのだと思います。
その確認の手続きの1つということなのだと思いますが、代表相続人が主張している会員資格預り金證書は、
本当に亡くなった被相続人のものであったのか(生前被相続人は證書を譲渡しなかったのか)、確認を取ろうとしているようです。
それが次の文面なのだと思います。

>この預り金證書を所持し、その権利を主張する方は平成29年1月2日までに、
>当社に権利の申立てをすると同時に證書を提出して下さい。
>上記期限内に届出及び提出がない場合には下記の證書を無効とします。

いわゆるゴルフ会員権(会員資格預り金證書)の詳しい仕組みについては私は知らないのですが、
基本的には、ゴルフクラブの方でも「誰が会員か」は、会員名簿により一意に把握していることではないかと思います。
会員名簿に記載されている名義人が会員である、といった具合に「誰が会員か」かはゴルフクラブも把握していることだと思います。
ですので、会員が亡くなったということであれば、相続人がゴルフ会員権を相続することになることはゴルフクラブも
十分分かっていることなのではないかと思います。
ですので、会員が亡くなった旨証することができれば、会員の名義人を相続人に書き換えることは、
一般にゴルフクラブとして、ゴルフ会員権を運営する上で十分想定していることではないかと思います。
ただ、このゴルフクラブでは、「会員資格預り金證書を所持している人が会員(名義人)である。」という取り扱いをしているようです。
会員資格預り金證書には名義人も記載されているわけなのですが、公告に上記のような注意喚起・呼びかけをしているということは、
会員資格預り金證書の名義人が会員なのではなく、会員資格預り金證書を所持している人が会員だ、
とゴルフクラブは考えているのだと思います。

 



一見、会員資格預り金證書を所持している人が会員だと聞くと、違和感を覚えるかもしれません。
しかし、実は不動産登記の分野でも、不動産登記を行った人に法務局がある証書を手渡し、登記内容の変更(譲渡の際等)には、
その証書を法務局に提示しないと、変動の登記ができない、という取り扱いがかつてありました。
その証書とは「登記済証」のことです。
登記の際に法務局から手渡されるその証書が、その後の登記に関する言わば身分証明書になっていたのです。
「現に持っている人が所有者だ。」という考え方は、法律の世界では実は非常に伝統的であるようです。
盗難も紛失もないという理想の状態を想定すると、
「現に持っている人が所有者だ。」という考え方は法理的には正しいのかもしれません。
なぜならば、「対象物の譲渡」という取引が、買い手と売り手の当事者2人だけで完結するからです。
誰が所有者かを記載する名簿という形を取ることにしますと、
「対象物の譲渡」という取引に取引とは関係がない第三者が介在することになります。
このたびの事例で言えば、ゴルフクラブが第三者です。
一見、ゴルフクラブは会員資格預り金證書の譲渡と関係があるのではないかと思われるかもしれませんが、
それはより現実的・実務的なことが頭にあるからそう感じるのであって、とことん法理的に考えてみると、
盗難も紛失もないという理想の状態を想定すると、ゴルフクラブとしては所持している人が会員だ、で済む話なのです。
会員資格預り金證書の譲渡は、当事者間で自由になさって下さい、当クラブとしては譲渡の経緯や背景に関しては与しません、
会員資格預り金證書を所持している方が当クラブの会員です、という取り扱いに法理的にはなるのだと思います。
ただ、現実には盗難や紛失の恐れがありますので、そういった現実に対する対応ということで、
発行者が別途名簿を作成し所有者を把握することで、問題が生じないようにしているわけです。
盗難も紛失もないという理想の状態を想定すると、発行者は所持人・名義人の本人確認を取る必要はない、となるのだと思います。
不動産登記におけるかつての「登記済証」は、
あたかも「不動産を現に手許に持っている」という状態を実現させるための法的な仕組み、と言えるのだと思います。
不動産の場合は、人は同時に2つの場所にいることはできません。
つまり、人は、2つの不動産を同時に占有するという状態を実現させることが物理的にできません。
ですので、「登記済証」という法的な仕組みが考え出されたのだと思います。
「登記済証」を現に手許に持っているということが、登記された不動産を占有しているということなのだと思います。
「登記済証」は、不動産を所有していることを表象しているのだと思います。
「登記済証」は、英語で言えば、所有不動産への「symbolic link」(シンボリック・リンク)なのだと思います。
ですので、「登記済証」を紛失したことは、所有不動産を紛失したことと同じなのです。
以上のような不動産登記に関する考え方を、会員資格預り金證書にも応用して考えてみると、
「会員資格預り金證書を所持している人が会員である。」という考え方が、法理的には正しいと分かると思います。
ただ、そうは言うものの、現実には、盗難や紛失や落とした証書を通りすがりの人が拾って自分のものにするといった事態が
起こりますので、やはり実務上の対応としては、重要な場面では身分証により都度本人確認を取る、という対応になるわけです。
逆から言えば、法律の世界では、法理的にはいわゆる身分証明書は前提としていない、ということになると思います。

 


それから、公告には、「代表相続人」という言葉が書かれていますので、
インターネット上から「代表相続人」の解説記事を2つ紹介し、「代表相続人」について一言だけコメントします。

 

誰でもわかる相続ガイド
代表相続人とは何か
ttp://www.cosmos-sihou.jp/daihyou_souzoku.html

>代表相続人とは何か
>代表相続人とは、相続手続きを代表して行う人のことです。
>代表相続人とは、単なる手続き上の呼び名であり、法律上の権限は何もありません。
>代表相続人という言葉は、金融機関でよく使われます。
>金融機関が預金の相続などで連絡の窓口となる人を指定したいときに、代表相続人の指定を求めます。
>代表相続人となると、金融機関の窓口などでの本人確認は、代表相続人のみに対して行われます。
>そしてほかの相続人は、実印を押した相続届と印鑑証明書等を提出すれば、
>金融機関の窓口にまで出向かなくても預金の解約は可能です。

>市役所で指定される代表相続人について
>市役所等では、固定資産税の納税について代表相続人を指定してください、と言われます。
>これは相続登記によって相続不動産の名義変更がされるまでの間、固定資産税の納税通知を送付する人を決めてください、
>という意味で代表相続人を決めてくださいと言われます。
>ここで届け出をした代表相続人の届け出は、法律上は何の意味もありません。
>たんに市役所が、固定資産税の納税通知を送付する人を決めたいだけと言うことです。
>したがって市役所に代表相続人の届け出をしたからといって、土地を相続することになったわけでもありませんし、
>固定資産税の支払い義務を一人で背負ったわけでもありません。
>固定資産税の支払い義務というのは、相続登記が完了するまでは、相続人全員が法定相続分に応じて支払い義務を負っています。
>ただ市役所としては、固定資産税を全額納付してくれれば、誰が支払ってくれてもいいのです。
>そのため事務の手間を簡略化するために、代表相続人の指定を求めます。
>市役所にしてみれば、固定資産税を法定相続分で按分して全員に固定資産税の納付通知を送付していては、
>事務量が膨大になっていますから、市役所が理不尽なことをしているわけではないのです。

 


代表相続人とは
代表相続人とは、民法等の相続の法務手続きにおいては正式に使われる言葉ではありません。
主として、税金の納税や預貯金の名義変更などの際の連絡先のために定められる人で、相続人の窓口となる人ということになります。
代表相続人の法律的な意味とは?遺産分割を行う前の時点において、
黙示の準委任契約による代表使者などと理解することができますが、法的地位は必ずしも明らかではありません。
実務上の取扱として定められることが多いのが代表相続人です。
代表相続人は、税務署や銀行などから指定を求められることが多いので、
納税地や故人の預貯金口座がある銀行の最寄りの親族等が就任することが一般的にはおすすめすることができます。
代表相続人は、税務署の場合には相続人を代表して納税をするなどの事務を行いますが、
銀行などについては以下のような事務を行うこととなります。
即ち、銀行や郵便局の預貯金等の相続財産を直接現金化して分割する場合、
不動産や株式等の相続財産を代表相続人の名義にした上で現金化して分割する等の事務手続きを行います。
代表相続人となる際には、故人の遺産と代表相続人が手続き上管理する現金が混ざらないように、
代表相続人名義の口座を、新しく作ることがおすすめできます。
また、代表相続人は、相続人全員においての金庫代わりとも言える立場なので、
キャッシュカード等は作らず、通帳と銀行印は別の相続人が管理するケースもあります。
最終的には代表相続人が相続に必要な書類を確認し、金融機関等へ持ち込み、手続きを進めることになります。
この際、金融機関によって書類の内容は異なりますので事前に確認された方が間違いがありません。
代表相続人は法律的な概念ではありません代表相続人という概念は、法律上正しい概念ではありません。
そのため、代表相続人として様々な事務手続きを行っていたとしても、
他の相続人に交通費などの実費や事務費用を請求できるのかなど法律的なトラブルが生じる危険が高いということができます。
一般に法律の専門家は代表相続人という不安定な概念を嫌う傾向があります。
不明確な概念で活動している手続きを支援してしまうと、自らもどのような立場で活動すればよいのかわからず、
手続き上支障をきたしてしまうなど専門家としての責任を全うできない可能性があるためです。
相続人代表を一時的に選定した後は、どのような形で遺産分割を進めるかなどの方針を定めた上、
法務手続きについては行政書士や司法書士、税務手続きについては税理士へ早めに相談されることが重要です。
(税理士法人チェスター 相続大辞典)
ttp://chester-tax.com/encyclopedia/dic09_030.html

 


インターネット上の解説記事を読みますと「代表相続人」は法律上の用語(身分や資格)ではないようです。
「代表相続人」は相続の法務手続きの中で正式に使われる言葉ではないようです。
インターネットで検索すれば、約 1,070,000 件もヒットしますので、各自で読んでいただければと思います。
ただ、インターネット上の解説記事を読みますと、「代表相続人」は相続財産の固定資産税に関してしばしば登場するようです。
以下、主に次の解説記事を参考に一言だけ書きます。

相続 (4) 代表相続人って何をすればいいの?役割と手続き<まとめ>
(お金のことが楽しくわかる!UpIn[アップイン] 2016年03月30日更新 )
ttps://upin.jp/9102

”代表相続人を一言で表すと、市役所などにとっては固定資産税の納付通知をする相手を決めるということです。”
とすら書かれています。
被相続人の死亡後、「相続人代表者指定届について(お願い)」という通知が市役所から届くようで、
”この通知は、故人に送られていた固定資産税・都市計画税の納税通知書を受けとる人を決めてください
という市役所からのお願いです。”と書かれています。
上の方で引用している解説記事には、

>固定資産税の支払い義務というのは、相続登記が完了するまでは、相続人全員が法定相続分に応じて支払い義務を負っています。

と書かれていますが、要するに、これらの解説を総合すると、「相続人代表者指定届について(お願い)」という通知は、
「被相続人死亡後相続登記が完了する前」の間に届くもの、ということになります。
しかし、そもそも固定資産税というのは、毎年1月1日時点の「固定資産の所有者」に専属的に課税される税目です。
また、現行の規定では、年の途中で売買等があって所有者が代わったとしても、1月1日現在の所有者として登録されている者が、
その年度の税を納付する、という取り扱いになっています。
したがって、所有者が死亡して所有者が代わった場合(すなわち相続の場合)は、相続人(新しい所有者)がその年度の税を納付する、
という考え方になるでしょう。

 


それで、問題は相続人が複数の場合なのだと思いますが、実は結論を端的に言えば、
1つの固定資産を複数の相続人が相続することはできない、というだけであるように思います。
現金(金銭)は分割できますが、現金(金銭)以外の財産というのは分割できないのです。
ですので、概念的には「固定資産税は相続人全員が法定相続分に応じて支払い義務を負っている」のは理解できますが、
現実には、固定資産税を相続人全員が法定相続分に応じて支払う(納付をする)ということはできないのです。
なぜなら、課税の”基”となっているものを分割することができないからです。
法理上の答えを一言で言えば、被相続人が死亡した後は、速やかに相続登記を完了させなければならない、です。
そうでなければ、相続財産の所有者がいない(財産の所有権者がいない)という状態が生じてしまうからです。
「代表相続人」という概念が出てくるのも、
被相続人が死亡した後に速やかに相続登記(もしくは相続に関する手続き全て)を完了させないからなのです。

 

In the context of the Civil Code, all that exists in this world has its own owner.

民法の文脈においては、この世に存在する全てのものにはみな所有権者がいるのです。