2017年6月18日(日)


昨日2017年6月17日(土)のコメントに一言だけ追記をします。

2017年6月17日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201706/20170617.html

まず、誤植がありましたので訂正をします。
昨日のコメントの最後に書きました英文の単語と日本語訳が間違っていました。
最後の文は、増税の結果小売価格が上昇しても事業者の収益額は増加しない(税務当局に納付する税額のみが増加するだけ)
という意味合いで書いたわけですが、
英文中の"a deflation"は"an inflation"の間違いです。
そして、日本語訳も「デフレ」は「インフレ」の間違いです。
小売店における商品の販売価格が上昇することを、「インフレ」(物価が上昇すること)と呼ぶわけですが、
「インフレ」もしくは「デフレ」は、事業者の経営判断の結果生じるものだ、という考えがあってこの文を書きました。
逆から言えば、増税の結果小売店における商品の販売価格が上昇することは、結局「インフレ」とは呼ばないと思いました。
その理由は、昨日も書きましたように、事業者の収益額は増加しないからです。
「インフレ」は、純粋に事業者間の取引さらには事業者と消費者との間の取引の結果生じるものだ、と私は思うわけです。
税の部分(酒税部分や消費税部分)は当事者間の取引とは関係がないことだ(当事者間の取引とは言わば独立して生ずるもの)、
というふうに私には見えるわけです。
確かに、増税がなされると、消費者の現金支出(商品購入の対価として相手方に支払う現金額)は増加します。
その意味において、増税がなされると消費者にとっての商品価格は間違いなく上昇する、とは言えるでしょう。
しかし、その現金支出(購入時の支払額)の増加額は、煎じ詰めれば「税」であるわけです。
率直に言えば、商品販売の結果取引相手(消費者で言えば小売店)が受け取る現金額が本当の意味で増加するわけではありません。
酒税の増税であれば、小売店の仕入価格が間違いなく増加しています(結局「販売価格−仕入価格」は増税前後で変動はない)。
酒類の販売価格も増加しているでしょうが、酒類の仕入価格も「全く同じ金額だけ」(酒税の分だけ)増加しているのです。
仕入価格のうち、酒税の金額は具体的にはいくらかについては、商品のラベルにも仕入れ伝票にも書かれてはいないと思いますが、
酒税率は酒税法にそのまま書いてありますので、小売店で計算しようと思えば簡単にできると思います。
したがって、酒税の増税前後で、小売店の利益額に変動はないのです。
消費税の増税であれば、小売店の仕入価格が消費税の分増加しているわけです。
消費税に関して言えば、税抜処理(仕訳)を頭に思い浮かべれば分かると思うのですが、
消費税の増税前後で「商品本体の部分の仕訳」に変動はないと分かるでしょう。
消費税の増税前後で変動するのは、「消費税部分の仕訳」だけだと分かるでしょう。
消費税率が5%から8%に増税されたならば、増税前の仮払消費税勘定「5円」が増税後は「8円」に、
増税後の仮受消費税勘定「10円」が増税後は「16円」に変動するだけなのです。
消費税率が5%から8%に増税されたならば、事業者の消費税の納付額が「5円」から「8円」に増加するだけなのです。
商品本体を100円で仕入れ200円で販売する、という取引には何らの変動も生じないのです。
事業者の利益額も、消費税の増税前であろうが増税後であろうが、
「100円」(どちらも「200円−100円」で計算される)であり変動はないわけです。
消費税の増税前後で「商品本体の部分の仕訳」に変動はないとは、
消費税の増税前後で事業者の利益額(粗利益額)に変動はないという意味です。

 



以上見ましたように、酒税の増税であれ消費税の増税であれ、
増税の結果、「増税後に販売価格が上昇しても事業者の利益額は増加しない」わけなのですが、
結局、このことが「増税の結果販売価格が上昇することはインフレとは呼ばない」と私が考える理由なのです。
インフレとは、簡単に言えば、物の値段が上がることであるわけですが、
別の観点から見れば、インフレとは貨幣の価値が下がることであるわけです。
今までは100円で買えた物が120円出さないと買えなくなるという状態をインフレと呼ぶわけですが、
これは貨幣の側から見れば、貨幣の価値が下がった(等価交換のためにより多くの貨幣が必要になったから)と言えるわけです。
この時、端的に言えば、事業者の利益額も増加しているはずなのです。
その増加額は、実際には極めて名目上のものに過ぎず、インフレ率を考慮すれば、実質的には利益額は増加したとは言えない
状態かもしれませんが、それでも数値上は事業者の利益額も増加しているはずなのです。
社会がインフレの状態にあると言われている状況下で、仕入れ業者から商品を仕入れた際、
今までよりも仕入価格が上昇していた場合は、インフレ率を相殺するためにより多くの金額を仕入価格に上乗せして販売する、
ということを事業者は行うわけです(そうしないと、インフレの結果実質的な利益が目減りするからです)。
このような状態を考えますと、逆から言えば、「事業者の名目上の利益が増加すること」を「インフレ」と呼ぶのではないだろうか、
と私は思ったわけです。
酒税や消費税の増税時、販売価格は上昇しても事業者の利益は名目上も実質上も1円も増加しないわけなのですが、
それではインフレとは呼ばない、と私は思ったわけです。
マクロ経済における政府統計の直近の定義や名称は知りませんが、やや古い言い方かもしれませんが、
例えば「消費者物価指数」という統計は、消費税が増税されても上昇するのかもしれません。
「消費者物価指数」は、「消費者が小売店で商品を購入する際にいくら支払うのか?」という観点から見て算出するからです。
「消費者物価指数」が上昇することをインフレと呼ぶのであれば、まさにそれはインフレに該当すると思います。
しかし、事業者の立場から「消費者物価指数」を見てみますと、
増税の結果「消費者物価指数」が上昇しても事業者の利益額には一切変動は生じていないわけです。
率直に言えば、増税の分(税金額の分)「消費者物価指数」が上昇した、というだけのことなのです。
例えば、理論的には、インフレ時には事業者は給与をインフレ率の分(貨幣の価値の減少分)増加させたりすると思いますが、
増税の結果「消費者物価指数」が上昇しても事業者の利益額は一切増加していないわけなのですから、
インフレ率の分(貨幣の価値の減少分)給与を増加させようと思っても絶対にできないわけです。
事業者の立場から言えば、この場合、インフレ率(「消費者物価指数」の上昇)と収益や貨幣の増加とが全くリンクしていない、
という状態にあるわけです。
簡単に言えば、インフレの結果、事業者の(名目上の)収益や貨幣が増加しているのならば
事業者は従業員に支払う給与を増加させるということが可能(名目上の昇給原資が事業者にはあると言える)なのですが、
商品の販売価格が上昇したといってもそれは純粋に商品に付随する税額部分が増加しただけなのですから、
事業者には従業員に支払う給与を増加させるということは不可能(名目上も実質上も昇給原資は事業者には全くない)なのです。
事業者には、増税に伴う「消費者物価指数」の上昇は、マクロ経済上も経営上も全く関係がない、と言わねばならないわけです。
端的に言えば、増税が行われた場合は、事業者の意思や経営戦略とは無関係に「販売価格は必然的に上昇する」のです。
なぜなら、酒税であれ消費税であれ、税は究極的には消費者が負担するものだからです。
他の言い方をすれば、事業者の意思や経営戦略とは無関係に、税務当局が「消費者物価指数」を上昇させているだけなのです。
概念的に言えば、売り手と買い手との間の需給関係で取引価格が上昇することをインフレと呼ぶのではないでしょうか。
増税に伴う「消費者物価指数」の上昇は、売り手と買い手との間の需給関係とは全く無関係に取引価格が上昇しているのです。
つまり、このような増税に伴う販売価格の上昇は、インフレとは呼ばないと私は思います。

 


また、昨日書きましたこのたびの酒類の販売価格の上昇は、増税の結果ではないことから、やはり経営判断の結果だと思います。
そもそもの話をすると、事業者は自社の利益を最大化させようと考え、各商品の販売価格を決めるわけです。
その意味では、必要もないのに、酒類の販売価格を上げざるを得ないというのは、
経営判断の結果とは言えない(改正酒税法に従っただけ)という部分もあると思います。
大手スーパーには、敢えて原価割れの価格を付けることで集客力を高める「ロス・リーダー戦略」という販売戦略もあります。
スーパーは、酒類のみを販売しているわけではありません。
スーパーは、酒類と他の商品とを同時に購入するお客さんのことを考えて、各商品の販売価格を決めているのです。
仮に、スーパーが酒類を低価格で販売することを規制するのなら、
ビールとおむつを並べて陳列することも規制しなければならないわけです。
酒類専門店ではおむつは販売していないのだから、そのような商品陳列はスーパーのみに一方的に有利、
したがってそのような陳列は規制する、という理屈も成り立ってしまうでしょう。
その意味では、確かにこのたびの値上げは経営判断の結果とは言えない(改正酒税法に従っただけ)という部分はあると思います。
しかし、他の見方をしますと、酒税法も消費税法も、全事業者に共通に当てはまるもの(universal)であるわけです。
増税が行われて、その影響を受けない事業者は1人もいない(全事業者にとって自動的・必然的に販売価格は上昇する)わけです。
しかし、このたびの酒税法の改正については、実は影響を全く受けない事業者も存在するのです。
それは、従来から原価以上の価格で酒類を販売してきた事業者です。
そのような事業者は、改正酒税法が施行されても、種類の販売価格を上げたりはしていないわけです。
その事業者は、さらなる利益を追求するために便乗値上げをするかもしれませんが、値上げをしないこともできるわけです。
自社の経営戦略を踏まえ、自社の利益が最大化される価格を付けるだけのことであるわけです。
つまり、改正酒税法が施行されると酒類の販売価格を上げざるを得ない、というのは実は各事業者固有の問題である、
とも言えるわけです。
このたび施行された改正酒税法は、全事業者に共通のもの(universal)では全くないのです。
改正酒税法自体は共通に適用されますが、その影響は全く共通(universal)ではないわけです。
極端なことを言えば、「それならば弊社は酒類の販売から撤退する(酒類の販売免許などこちらから願い下げだ)。」、
という経営判断もあり得るわけです。
酒類の値上げを断行した事業者は、「弊社は今後とも酒類の販売を継続する。」という確固たる意思決定をした、ということです。
「今後とも酒類の販売を継続する。」と決めたのは、事業者自身なのです。
「消費税増税後も弊社は消費税率を5%に据え置く。」、などという意思決定は事業者にはできませんが、
「弊社は酒類の販売から撤退する(酒類の販売免許は返上する)。」、という意思決定は事業者にできるわけです。
税というのは、悪く言えば、頭ごなしに決まるわけです。
そこに経営判断という概念はないわけです。
しかし、ある規制に対してどのように対応を取っていくかという部分は経営判断ではないでしょうか。
増税時に販売価格が上昇するのは自動的であり必然的なのですが、このたびの酒類の値上げはその因果関係とは異なると思いました。


Not from a standpoint of consumers but at least from a standpoint of business operators,
a rise in retail prices of goods as a result of a tax increase
is quite different from what you call an "inflation" on macroeconomics.

消費者の立場からではなく、少なくとも事業者の立場から言えば、
増税に伴う商品の小売価格の上昇は、いわゆるマクロ経済学にいう「インフレ」とは全く異なるものなのです。