2017年6月17日(土)



2017年6月17日(土)日本経済新聞
ビール販売2割減少 安売り規制強化後 店頭価格8%上昇
(記事)




2017年6月15日(木)日本経済新聞 社説
酒の官製値上げは不健全だ
(記事)


2017年6月16日(金)日本経済新聞 大機小機
物価を抑えるネット拮抗力
(記事)





【コメント】
今年の6月1日から改正酒税法が施行され、酒類の安売りを規制されることになったのですが、
酒類の販売価格が上昇した結果、その影響が販売実績に現れている、という内容の記事になります。
酒類の販売価格が上昇したのは酒税法が改正されたことが原因ではあるわけですが、酒税が増税されたわけではありません。
原価を下回る価格で酒類を販売することに対して一定の罰則が設けられるようになったわけですので、
酒税法の改正が原因とは言え、あくまでも販売店が販売価格を経営判断で上げただけだ、と言っていいわけです。
これに対し、酒税が増税された場合は消費税が増税された場合は、
販売店が販売価格を経営判断で上げたこととはやはり異なるわけです。
酒税を負担するのは、酒税法上は酒類の製造業者なのですが、経営上は消費者と言っていいわけです。
酒税が増税されたとなりますと、経営上は酒税を納付できるだけの販売価格で販売を行っていかなければならないわけです。
その際の販売価格の値上げというのは、経営判断の結果とは言えないわけです。
また、消費税を負担するのは、消費税法上も経営上も消費者です。
消費税が増税されたとなりますと、本体価格は同じでも消費者への販売価格は自動的に上昇します。
他の言い方をすると、たとえ消費税が増税されても、税抜処理をする場合の事業者の会計処理には全く影響を及ぼさないわけです。
端的に言えば、消費税が増税されると、仮受消費税と仮払消費税の金額のみが変動するだけなのです。
理論的には、消費税が増税されても、事業者の損益には一切影響を及ぼさないわけです。
したがって、消費税の増税時の販売価格の値上げというのは、経営判断の結果とは全く異なるわけです。
酒税が増税された場合や消費税が増税された場合は、
販売価格の値上げといってもそれは経営判断の結果とは全く言えない(やはり税法の改正の結果と言える)のですが、
このたびの酒税法の改正に伴う販売価格の値上げというのは、経営判断の結果であるように思います。

 



確かに、販売価格を値上げしないと一定の罰則を科せられるから値上げせざるを得なかった、という意味では、
販売価格の値上げは経営判断の結果とは言えない部分もあるのですが、
私がここで指摘したいのは、価格の連鎖という意味において「販売価格は必然的に上がると言えるか?」という点なのです。
酒税は酒税法上は製造業者が納付するものですが、製造業者は利益を獲得するために酒類を製造しているわけですから、
酒税は経営上は当然に消費者に転嫁する、と考えるわけです。
経営上、仮に酒税を製造業者が負担すると考えるならば、製造業者は酒類を製造しない方がましなのです。
酒税法の趣旨としても、明文の規定はないと思いますが、酒税の担税力は消費者にあることを前提にしているのだと思います。
酒税は表面上は納付も負担も製造業者なのです(その意味において酒税は直接税)が、
製造業者は消費者が購入することを前提に酒類を製造・販売するわけですから、
酒税の負担は最終的には消費者であるということが、製造業者の経営上も酒税法の趣旨としても言えるのではないかと思います。
消費税に至っては、消費税は負担という意味では始めから事業者には全く関係がない税だ、とすら言えるわけです。
以上指摘しました「価格の連鎖」というものが、このたびの安売り規制にあるかと言えば、やはりないわけです。
他の言い方をすれば、このたびの安売り規制は、酒類の消費者への販売店(小売業者)のみに関係があることなのです。
酒類の製造業者や種類の卸売業者には、このたびの安売り規制は全く関係がないわけです。
その意味において、販売価格が上昇する原因となる「価格の連鎖」というのが、ここには全くないわけです。
酒類の仕入れ値(原価)や事業者の人件費等には変動はない中で、酒類販売店(小売店)が販売価格を上げただけなのです。
これは経営判断ということではないかと私は思ったわけです。
確かに、酒税法の改正がなかったならば酒類販売店(小売店)は販売価格を上げなかった、という見方もできるとは思いますが、
理論的には、販売価格を上げることは経済合理性に適うことであるわけです。
少なくとも、このたびの酒税法の改正の結果、
酒類販売店(小売店)の収益が圧迫される(販売価格を上げなければ損益が不利になる)、
などということは一切ないわけです。
ここで私が言いたいことを一言で言えば、「販売価格が上がることの必然性の度合い」が全く異なる、と言いたいわけです。
「価格の連鎖」や「酒類販売店(小売店)のみの判断か否か」といった点から考えてみますと、
このたびの酒類の販売価格の上昇は、酒税法の改正の影響は全くないとは言えないものの、
やはり第一には経営判断の結果である、という見方をするべきなのではないかと思いました。

 


Not from a standpoint of consumers but at least from a standpoint of business operators,
a rise in retail prices of goods as a result of a tax increase
is quite different from what you call a deflation on macroeconomics.
It means that even the rise doesn't enable business operators to gain more revenues.

消費者の立場からではなく、少なくとも事業者の立場から言えば、
増税に伴う商品の小売価格の上昇は、いわゆるマクロ経済学にいうデフレとは全く異なるものなのです。
つまり、小売価格が上昇しても事業者の収益は増加しない、ということです。