2017年6月9日(金)
2017年06月08日
株式会社ジョイフル本田
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.joyfulhonda.info/wp-content/uploads/7f2d2d25d02237bef8796a95a2de1592.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
H29.06.09 11:04
株式会社ジョイフル本田
公開買付届出書
(EDINET上と同じPDFファイル)
H29.06.09
株式会社ジョイフル本田
公開買付開始公告
(EDINET上と同じhtmlファイル)
2017年6月2日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201706/20170602.html
2017年6月2日(金)のコメントの後半では、株式会社デンソーの自己株式の取得を題材に、「大量保有報告書」について書きました。
「大量保有報告書」を提出する義務が生じるか否かの判断は一見簡単そうですが、
大量保有報告制度の趣旨を鑑みると実は思いもよらない場合にも「大量保有報告書」を提出する義務が生じ得るとして、
>金融商品取引法上、株式を売買していなくても、株式会社デンソーは保有するトヨタ自動車株式会社株式について「変更報告書」を
>金融庁に提出しなければならない、という場面が生じ得ると思います。
と書きました。
2017年6月2日(金)のコメントでは、
>「大量保有報告書」の趣旨は、大きな議決権割合を有している株主を明らかにすることだと思います。
と書きました。
金融商品取引法の教科書を参考にしますと、大量保有に関する情報を明らかにする必要がある理由は、
「上場企業の支配関係に影響を与える」からであるわけです。
「会社の支配関係」という概念があるからこそ大量保有報告制度が設けられたとも言えるわけですが、
「会社の支配関係」の根源はまさに「議決権」であるわけです。
大量保有に関する情報を明らかにする義務があるか否かは、現在の会社制度では持株数では全く判断できないわけです。
それで、これは自己株式の公開買付に限らず自己株式の取得が行われる場合全般に関して言えることなのですが、
自己株式の取得が行われる結果、その前後で持株数に変動はない株主でさえも、
「大量保有報告書」もしくは「変更報告書」を金融庁に提出しなければならなくなる場合があります。
なぜならば、自己株式の取得が行われる結果、自己株式の取得に応じた株主にも応じなかった株主にも、
保有議決権割合に必ず変動が生じるからです。
自己株式の取得が行われる前は議決権を4.99%保有しており「大量保有報告書」を提出していなかったのだが、
自己株式の取得が行われた後は議決権が5%以上となり、「大量保有報告書」を提出する義務が生じた、
という場合は全くあり得ることなのです。
大量保有報告書はあらゆる投資家が提出者となる可能性のある書類であるわけですが、
会社が何らかの手法により自己株式の取得を行う場合は、投資家はその都度自分の保有議決権割合を再計算しなければなりません。
>トヨタ自動車株式会社が株式会社デンソー株式を25%以上保有する場合は、
>株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社に対する議決権が会社法上消滅するからです。
と書いたわけですが、このことは、結局のところ、
「株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社に対する議決権が会社法上消滅する」か否かで、
他の全てのトヨタ自動車株式会社株主の保有議決権割合も必然的に変動する、
ということを意味しているわけです。
すなわち、「株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社に対する議決権が会社法上消滅する」前は
トヨタ自動車株式会社の議決権を4.99%保有しており「大量保有報告書」を提出していなかったのだが、
「株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社に対する議決権が会社法上消滅した」後は
トヨタ自動車株式会社の保有議決権割合が5%以上となり、「大量保有報告書」を提出する義務が生じた、
という場合は全くあり得ることだ、ということになるわけです。
「株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社に対する議決権が会社法上消滅する」とは、
「株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社の普通株式そのものには会社法上議決権はあることはあるのだが、
株式会社デンソーはその議決権を会社法上行使できない(仮に株式会社デンソーが行使をしてもその議決権行使は無効)。」
という意味です。
概念的には、トヨタ自動車株式会社が株式会社デンソー株式を25%以上保有する場合は、議決権に関しては、
株式会社デンソーが有するトヨタ自動車株式会社の普通株式は自己株式であるかのようなイメージになると思えばいいわけです。
普通株式そのものには会社法上議決権はあることはある(普通株式から議決権そのものが消えるわけではない)のだが、
その所有者は会社法上議決権を行使できない、ということになるわけです。
結局、その所有者にとっても他の株主にとっても、状況としては(実務上は)株式に議決権がないのと同じではあるわけですが、
議決権に関する概念整理としては、「その所有者は会社法上議決権の行使を禁じられているに過ぎない。」ということになります。
「トヨタ自動車株式会社が株式会社デンソー株式を25%以上保有するか否か」という事実(株式保有状況)が、
株式会社デンソーだけではなく、トヨタ自動車株式会社の他の全株主に大きな影響を与える、ということになるわけです。
トヨタ自動車株式会社の全株主は、トヨタ自動車株式会社による株式会社デンソー株式の保有割合を常に気にしておかなければ、
知らない間に自分の保有議決権割合が5%以上となっていた、ということになるわけです。
例えば、トヨタ自動車株式会社株式を4.99%、株式会社デンソー株式を4.99%を保有している投資家(長期保有目的)がいるとして、
株式会社デンソーが市場の投資家全般から自己株式の取得を行うと、自己株式の取得に応じなかったその投資家にとっては、
計2銘柄の保有議決権割合が増加する可能性があるわけです。
「計2銘柄」とは、@自己株式の取得そのものによる株式会社デンソーの保有議決権割合が増加することと、
Aトヨタ自動車株式会社による株式会社デンソー株式の保有議決権割合が25%以上となり
株式会社デンソーの議決権が消滅する結果、トヨタ自動車株式会社の保有議決権が増加すること、の2つです。
株式会社デンソーは自己株式の取得を行っただけなのに(自分の持株数に変動は一切ないのに)、その投資家は、
トヨタ自動車株式会社に関してと株式会社デンソー株式に関しての計2社に関する「大量保有報告書」を提出する義務が生じる、
ということになるわけです。
兄弟会社や関連会社等に複数投資をしている場合は、株式会社デンソーのように議決権が状況により消滅する可能性がありますので、
グループ全体に対する投資状況(各会社に対する保有議決権割合)を適時に集計(その都度再計算)しなけばならず、
相当な事務コストが生じます(自分の株式保有状況だけではなく投資先による株式保有状況までをも考慮しなければならない)。
以上見ましたように、会社法の規定が複雑になればなるほど、
「投資先とは異なる会社の株式の状況の変動(大株主の移動等)が投資先の株式の状況(自分の保有状況等)に影響を与える。」
という事態が生じるようになったわけです。
議決権の個数・割合が、単純に持株数だけで一意に決まるのであれば話は簡単なのですが、
現行の会社法の規定では、自己株式や一定以上の大株主株式に議決権はないという取り扱いになっている結果、
議決権の個数・割合が持株数だけでは全く決まらない(全く明らかにならない)、ということになっています。
金融商品取引法の教科書には、大量保有報告制度に関する問題点として、
>なぜ大量保有者となった者が、自らコストを負担して他の投資家の投資判断に資する情報を提供しなければならないのかが
>必ずしも明白ではないという疑問もあります。
と書かれています。
簡単に言えば、各株主の今現在の保有議決権割合を再計算し開示をするのは上場企業(発行会社)であるべきだ、
という結論になろうかと思います。
「5%ルール」との関連を鑑みれば、上場企業(発行会社)は今現在の上位20名の株主を開示すれば必要十分であるわけです。
第21番目の株主が5%以上議決権を保有していることは絶対にあり得ないのですから。
上場企業(発行会社)は、例えば証券取引所のウェブサイト上で、15時現在の(取引上は事実上当日の最終の)上位20名の株主を
毎日(毎営業日)開示するようにすればよいわけです。
株式投資を考えている投資家にとっても、株式購入を検討している企業の大株主を素早く知るためには、
既存の株主が提出している「大量保有報告書」ではなく、企業自身が株主名簿に基づき開示をしてくれた方が助かるわけです。
元来的には、「株主名簿記載の上位20名=保有議決権割合が上位20名」であるわけですが、現行の会社法の規定ですと、
株式の所有者が会社自身や一定以上の大規模出資先企業である場合は、株主名簿に株主として記載はされていても、
それらの株主には会社法上議決権の行使が禁止されていますので、
それら議決権の行使の禁止を反映させた上位20名の株主を再計算の上開示する必要があるわけです。
その役割を果たせるのは、投資家ではなく、やはり上場企業(発行会社)であると思います。
「大量保有報告書」の提出は現実には株式取得の後日に(大量保有者になった日から5営業日以内)なってしまうわけですが、
株主名簿の変更は株式の取得と同時にであるわけです(概念的にも株主名簿への記載と株式の取得は同じ意味です)。
即時性という観点から言っても、株主名簿を管理している上場企業(発行会社)自身が上位20名の株主を開示するべきなのです。
上場企業(発行会社)が15時現在の(取引上は事実上当日の最終の)上位20名の株主を毎日(毎営業日)開示するようにすれば、
制度上「大量保有報告書」の提出は全く必要ないのです。
金融商品取引法の教科書には、大量保有報告制度の趣旨として、
>発行会社にとっては、自社の株式等の保有状況を知ることで、買い占めた株式を会社やその関係者に高値で買い取らせようとする
>大量保有者(いわゆるグリーンメーラー)への対策を講じやすくなるという意義があります。
と書かれていますが、この説明は完全に間違いです。
大量保有者に自社の株式等の保有状況を報告させなくても、
発行会社は株主名簿により誰が大量保有者かは即時に・容易に(「大量保有報告書」が提出されなくても)知ることができます。
ただ、細かいことを言えば、金融商品取引法上の「共同保有者」については株主名簿では明らかになりません。
また逆に、株主名簿上の株主(形式株主)は数多くの投資家(実質株主)から議決権に関する指図を受けて議決権を行使するだけ
ということも信託が行われている時はあり得ることですので、実質的には「株主名簿上の株主=議決権の保有者」とは限らない、
という言い方もできます(形式株主は事実上0%保有であり実質株主の各保有議決権割合も実は実際には非常に小さい場合がある)。
共同保有の状況を報告させるのならば、信託の状況も報告させなければ、開示に関する整合性に欠けるというものでしょう。
信託に比べ、共同保有に関しては脱法的に悪用ができたりしますので、その意味では、
共同保有については状況を報告させることに意義があるとは思いますが。
金融商品取引法上の「共同保有者」については概念整理が非常に難しいと思います。
「共同保有」という概念を度外視するならば、確かに株主名簿がザル名簿(実質的に意味を持たない名簿)になってしまうでしょう。
しかしそれを言い出すと、信託が行われている時点で株主名簿はザル名簿だとも言えるでしょう。
では信託を禁止するべきかと言いますと、株主名簿上の株主とその委託者との関係は市場の投資家には関係がないことだ、
とも言えるように思います。
この問題点については、実際には「どこまで開示させるか?」という線引きの問題になるのだと思います。
株主名簿上の株主(受託者)はその委託者の氏名を信託内容と共に開示するべき、という考え方もあるといえばあると思います。
この点については様々な考え方ができると思います。
究極的には、「株主総会議案を作成するのは取締役(会社側)なのだから、たとえ大株主がいても少数株主の利益は害されない。」
という見方もあると思います。
株主総会議案を作成する取締役というのは、会社制度上は実は株主からは独立しているのです。
取締役は、(都度指示を受けるわけではないという意味で)個々の株主からは独立して
株主全体にとって最善と考えられる議案を作成するのです。
大株主だからと言って株主総会議案を作成できるわけではないわけです。
これは個々の株主の保有議決権割合の問題というより、純粋に取締役のフィデューシャリー・デューティーの問題なのです。
取締役がフィデューシャリー・デューティーを果たしさえすれば、
信託により隠れた株主(実質株主)がいようが共同保有により隠れた大株主がいようが、何らの問題も生じないことなのです。
取締役がフィデューシャリー・デューティーを果たしさえすれば、後は議決権の個数(投票数)の集計だけの問題になるわけです。
議決権の個数(投票数)の集計は、株主名簿だけで必要十分に行えることでしょう。
機関投資家が共同して投資先企業の経営陣に対して圧力をかけるということは、会社制度上はそもそもあり得ないことですし、
また、実務上の問題として有形無形の形でそのようなことが行われ、取締役が大株主の意向に沿った議案を作成するとしたならば、
理論的には実はその時点で取締役はフィデューシャリー・デューティーを果たしていない、ということを意味しているのです。
ある大株主の主張している提案内容が株主全体にとって最善であると取締役が判断したならば、
それはそれでその方針に沿った議案を作成することは取締役にとって間違ったことではないでしょう。
要するに、「株主全体にとって最善であると考えられる議案を取締役が作成するか否か」、
事の本質はこの1点にかかっているわけです。