2017年6月4日(日)
「株主」(三菱UFJ信託銀行)による議決権行使の個別開示の実例↓
受託財産の運用における株式議決権行使
ttp://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/unyou_kabu.html
会社別議案別行使結果(個別開示)<平成28年7月〜平成29年4月総会>
ttp://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/pdf/koushikekka_201704.pdf
過去の関連コメント
2017年6月2日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201706/20170602.html
>独立性の確保に疑いのある社外取締役の選任は、経営の監視役として適任ではないと判断したようだ。
と書かれています。
たとえ同じグループ企業であろうとも、企業価値の向上につながらないと判断すれば、
株主は例外なく反対票を投じる、という姿勢が個別開示により鮮明になった、との記事には書かれています。
株主によるこのような議決権行使の方針について、三菱UFJ信託銀行は、
>グループ企業間の関係よりも、お金の出し手の利益を追求する「投資の論理」を重視する姿勢を明確にした。
と記事には書かれています。
三菱UFJ信託銀行としては、個別開示により議決権行使の透明性を高め利益相反に対する疑念を払拭できた、
と考えているようです。
また、本日の日本経済新聞の記事には、三菱UFJ信託銀行の議決権行使に関して、
>所属する企業グループ同士の取引関係などを勘案した「なれ合い」は通じなくなる。
>こうした動きを先取し三菱UFJ信託銀行は三菱自動車が開いた昨年12月の臨時株主総会で、
>益子修会長権社長など5人の取締役選任に反対した。
と書かれています。
しかし、考えてみますと、この考え方は少しおかしいように思います。
会社は会社で、今後の会社経営のために最善・最適と考えられる候補者達を挙げてくるわけです。
株主総会議案を作成することも株主が取締役に委任した業務執行の1つであることを鑑みますと、
フィディーシャリー・デューティーに基づき、
取締役は委託者である株主のために最善の候補者を選び出す義務を負っている、と言えるわけです。
会社が挙げてきた候補者の選任に賛成したからといって、株主(三菱UFJ信託銀行)は
グループ企業間の関係を重視した(「投資の論理」を軽視した)、などということには全くならないわけです。
株主(三菱UFJ信託銀行)は株主(三菱UFJ信託銀行)で、一受託者として、
自分(三菱UFJ信託銀行)の委託者(個人投資家等)のために最善の議決権行使をしただけかもしれないわけです。
同一グループだと株主(三菱UFJ信託銀行)と経営陣(三菱自動車)との間に利益相反がある、というのは意味不明だと思います。
むしろ、受託者が作成した議案に委託者が反対をするというのは、委任そのもの根幹にも関わる話であるように思います。
もちろん、この議論を進めていきますと、役員の選任議案に株主総会決議は不要だ、というところに行き着いてしまうわけですが、
受託者が作成した議案を否決するということは、議案作成者との委任関係にをも否定している部分が生じるのも確かだと思います。
2017年5月26日
日本精工株式会社
第156期定時株主総会招集ご通知
ttp://www.nsk.com/jp/investors/stockandbond/pdf/gr156_results.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
「第156期定時株主総会招集ご通知」
第2号議案 取締役12名選任の件
取締役候補者一覧
(5/47ページ)
「第156期報告書」
事業報告
4
会社役員に関する事項
〔2〕執行役の氏名等(2017年3月31日現在)
(17/48ページ)
(続き)
(18/48ページ)
定時株主総会招集通知には、「取締役候補者一覧」が記載されているわけです。
株主は定時株主総会において、候補者の中から取締役を選任していくわけですが、
この「取締役候補者一覧」を見れば分かりますように、
候補者には既に選任・就任後の地位と担当と役職が割り当てられているわけです。
そのことはある意味当たり前のことではあるわけです。
取締役として選任しましたがその取締役にすることはありません、では委任でも取締役でも会社経営でもないわけですから。
しかし、それは裏を返せば、その候補者が否決された場合は、その地位・担当・役職を全うする取締役が会社からはいなくなる、
ということを意味しているわけです。
経営の視点から言えば、会社の取締役に欠員が生じてしまう、という言い方をしてもいいでしょう。
会社としては、会社経営に必要十分な(欠けも余りもしない)ぴったりな人数の候補者を挙げることになるわけです。
会社は、「定時株主総会終結後はこの人員・陣営で経営を行っていきます。」という候補者達を挙げるわけです。
それなのに、役員の選任議案が否決されると、定時株主総会終結後の会社経営に直接に支障をきたすわけです。
日本精工株式会社の事業報告には、執行役の氏名と地位と担当及び重要な兼職の状況が記載されていますが、
定時株主総会で選任される取締役はこれら執行役の会社経営上の上司であるわけです。
定時株主総会で取締役が選任されないとなりますと、定時株主総会終結後から執行役から上司がいなくなるわけです。
会社法上は取締役の選任議案も株主総会で否決できるわけですが、
会社経営上・実務上は取締役の選任議案を株主総会で否決されると、定時株主総会終結直後から話がおかしくなってしまうわけです。
会社経営上・実務上は、取締役の選任議案を株主総会で否決することは極めて難しい(状況によっては議案は否決してはならない)、
と言わねばらないと思います。
Needless to say, every candidate is needful to a company.
That is to say,
each candidate is scheduled to have his own position and his own charge and his
own job description.
In practice, the fact that one candidate is rejected
means that various duties which the candidate is scheduled to
perform exactly
just from after a conclusion of an annual meeting of shareholders will not be
performed.
言うまでもありませんが、候補者は皆、会社にとって必要不可欠な人達なのです。
すなわち、候補者1人1人は、各自の地位と各自の担当と各自の役職を持つスケジュールとなっているのです。
実務上は、ある候補者が否決されるとは、その候補者が定時株主総会のまさに終結直後から遂行されるスケジュールとなっていた
様々な職務が遂行されなくなる、ということを意味しているのです。
それから、先ほど、
>会社としては、会社経営に必要十分な(欠けも余りもしない)ぴったりな人数の候補者を挙げることになるわけです。
と書きましたが、関連のある記事がちょうどありましたので紹介します。
2017年5月17日(水)日本経済新聞
取締役数の上限半減 スズキ、定款変更で
(記事)
2017年5月16日
スズキ株式会社
定款一部変更に関するお知らせ
ttp://www.suzuki.co.jp/ir/news/pdf/20170516news.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
Do shareholders elect redundant directors? (株主は余剰な取締役を選任したりするでしょうか。)
最後に、上場企業における定時株主総会の集中に関する記事を紹介します。
2017年5月18日(木)日本経済新聞
総会ピーク日、集中率最低 3月決算、2割台も 投資家と対話、分散進む
(記事)
3月期決算の上場企業の定時株主総会の開催日の集中率が年々低下している、とのことです。
今年2017年は、過去最低であった昨年の32%を下回り、2割台にまで低下する可能性がある、とのことですが、
記事によると、集中率が過去最高であったのは、
>東証によると過去に最も集中したのは95年6月29日で、企業の96%がこの日に総会を開いた。
とのことです。
この上場企業における定時株主総会の集中に関してですが、
上場企業が他社と申し合わせの上意図的に開催日を同一にするのはそれはそれでおかしいとは思いますが、
株主の立場からすると、たとえ開催日が分散していても、総会出席の利便性には限界があります。
例えば、3月期決算の上場企業の株式を31銘柄保有している場合は、上場企業が6月中にどれだけ開催日を分散したとしても、
その株主には必ず物理的・時間的に出席できない株主総会が生じるわけです。
しかしそのこと自体は上場企業の責任でも何でもないわけです。
逆から言えば、上場企業が他社と申し合わせの上意図的に開催日を同一にしても、
いわゆる総会屋が人海戦術でもって対象としている全上場企業の株主総会に出席することはできるわけです。
3月期決算の上場企業の定時株主総会の開催日を意図的に同一にするというのは、
いわゆる総会屋対策という意味では確かに意味は分かるわけですが、
「会社と株主との関係」という点に着目してみますと、株主としては定時株主総会の開催日は会社に任せる、
というだけのことであるように思います。
「俺は3月期決算の上場企業の株式を31銘柄以上保有しているから、上場企業は定時株主総会を5月にも開催しろ。」
と(上場企業は俺に協力しろと)主張する株主がいたら、それはおかしいと分かるでしょう。
会社にとって株主は、その株主1人だけではありませんし、総会屋だけでもないのです。
会社としては、淡々と、(総会屋対策ということも状況によりある場合もあるかもしれませんが)
会社(と株主全体)にとって最善・最適と考えられる日取りを開催日とすればそれでよいのです。
会社は最善・最適と考えられる日取りを開催日とした、それ以上でもなければそれ以下でもないのです。