2017年5月27日(土)



2017年5月27日(土)日本経済新聞
ゼロから解説
相続税総額、知るには? 一括計算せず、1人ずつ額を算出し合算
(記事)





N分N乗方式に関する過去のコメント

2017年2月19日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170219.html

 


【コメント】
現行の相続税法の規定に基づく相続税額の算出方法についての解説記事です。
簡単に言えば、現行の規定では、「相続税の総額」を先に算出する、という計算方法になっているようです。
具体的な計算方法は記事を読んでいただきたいのですが、率直に言ってあまり論理的ではない計算方法であると思います。
現行の計算方法が根本的に間違っている点というのは、相続税額を算出するに際して、

>課税遺産を、各人が法定相続割合(民法で定めた遺産配分の目安)の通りに分けたと仮定します

という点なのです。

>実際に各人が相続する遺産の割合

は法定相続割合とは異なるにも関わらず、
相続税の総額は各人が遺産を法定相続割合の通りに分けたものと想定して算出するわけです。
率直に言えば、遺産の実際の相続割合と納付する相続税額とが理論的に完全に乖離してしまっているわけです。
一見すると、相続税の総額を実際に各人が相続する遺産の割合によって案分しますので、
実際に各人が相続する遺産の割合と各人が納付する相続税額とは比例するのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、それは表面上相続割合と相続税納付額とが比例関係にあるように見えるだけなのです。
実際には、相続税総額の算出根拠自体が間違っているのです。
遺産を「各人が法定相続割合の通りに分けた」と想定して相続税の総額を算出しているわけですが、
実はその時点で既に間違っているわけです。
なぜなら、実際には遺産を「各人が法定相続割合の通りに分けた」わけてはいないからです。
遺産を「各人が法定相続割合の通りに分けた」と想定している時点で、
各人が納付する相続税額と各人が相続する遺産割合とが理論的に完全に断ち切られてしまっているのです。
記事の設例に即して言えば、相続する遺産の金額は、A:B:C=7500万円:3750万円:3750万円=2:1:1、であり、
納付する相続税の金額は、A:B:C=720万円:360万円:360万円=2:1:1、となっており、
一見すると、各人の相続する遺産の金額と納付する相続税の金額とが比例しているように見えます。
しかし、実はこれが根本的に間違っているのです。
なぜなら、各人が納付する相続税額は各人が遺産を法定相続割合の通りに分けたものと想定して算出したものだからです。
表面上、各人の相続する遺産の金額と納付する相続税の金額とは比例してはいますが、この比例関係には何の意味もないのです。
なぜなら、各人の相続する遺産の金額と納付する相続税の金額とはこの場合全く関係がない(理論的に乖離している)からです。
各人の相続する遺産の金額と納付する相続税の金額とが理論的に整合しませんので、この算出方法は根本的に間違っているのです。
各人の相続する遺産の金額と納付する相続税の金額との間に、理論的なつながりが全くないのです。

 



この「課税標準額と納付税額との間の理論的乖離」の問題点は、いわゆる「N分N乗方式」による課税方法全般に当てはまります。
「N分N乗方式」については、2017年2月19日(日)に少しだけコメントを書きました。
日本の現行の相続税額の算出方法は、「N分N乗方式」の一種(概念的に同種のもの)なのです。
「N分N乗方式」は、共働き家庭における所得税額の算出方法としてフランスでは導入されているようですが、
「N分N乗方式」では、各人の所得額と納付する所得税額との間に、実は理論的な整合性(金額のつながり)が全くないのです。
一見すると、各人の所得額と納付する所得税額との間に比例関係があるように見えるだけであり、
納付する所得税の総額の算出方法自体が各人の所得額と関係がないのです。
一見すると理論的整合性があるように見えるだけであり、
実は「所得額×所得税率=所得税額」という関係式が完全に崩れてしまっているわけです。
各人の所得額と納付する所得税額とが比例するのは、実は結果に過ぎません。
各人の所得額と納付する所得税額とは、比例させようと思わなくても自動的に比例するのです。
「N分N乗方式」では、意図的・直接的に各人の所得額と納付する所得税額とを比例させようとしていることが間違っているのです。
「N分N乗方式」は、課税所得を世帯で合計して家族の人数で割る、というところが実は既に理論的に間違っているのです。
このような計算方法を行いますと、各人の所得額と納付する所得税額との間に理論的な関連がなくなるのは当然でしょう。
むしろ、課税所得を世帯で合計することで、各人の所得額と納付する所得税額とを理論的に断ち切っている、
と言わねばならないでしょう。
「N分N乗方式」とは、所得のある親が自分の所得を自分の所得ではないと言っているようなものなのです。
2017年2月19日(日)の記事の設例で言えば、所得額500万円の父が「私の所得額は250万円です。」と言っているようなものなのです。
そして、実際には所得がない子供が「私の所得額は250万円です。」と言っているようなものなのです。
意味不明と言ってしまえばこれほど意味不明な話もないわけです。
これでは全く異なる所得税額を算出しているだけなのではないでしょうか。
今日紹介した相続税の記事で言えば、
各人が遺産を法定相続割合の通りに分けたものと想定していることが間違いですし、
2017年2月19日(日)の記事の設例で言えば、
所得がある人も所得がない人も同額の所得があると想定していることが間違いなのです。
簡単に言えば、実際にはそうではないのにそうであると仮定して税額計算をしていることが間違いのです。
実際にはそうではないのにそうであると仮定して税額計算をするのなら、
当然のことながら、計算される税額は本来の税額とは異なる(ほとんどの場合より少なくなる)、ということになるわけです。
課税標準額と納付税額とが理論的に乖離している、とはそういう意味なのです。
端的に言えば、個別の税額よりも総額の方を先に算出するという考え方などないのです(総額というのはあくまで結果です)。