2017年5月21日(日)



2017年5月20日(土)日本経済新聞
インド間接税 7月統一へ 税率決定、物流など効率化
米、関税引き上げ見送り NAFTA再交渉へ 原産地規制が焦点
(記事)


 



インド物品サービス税(GST)は2017年7月1日に導入見込み
(EY税理士法人 Japan tax alert 2017年1月27日号)
ttps://www.eytax.jp/tax-library/newsletters/japan-tax-alert-20170127.html

 

2016年8月吉日
SBIアセットマネジメント株式会社
GST(物品・サービス税)導入によるインド経済への影響
ttp://www.sbiam.co.jp/rinji/pdf/200401_ind&viet/ind_viet_rinji20160812.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



平成28年(2016年)8月19日
株式会社三菱東京UFJ銀行
インド:GST導入の動向
ttp://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW2016081902.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2016/11/04
スズキグローバルコンサルティング株式会社
インド物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)概要
ttps://www.suzuki-gc.com/2016/11/04/gst/

「GSTについてのまとめ(webページのキャプチャー画像)」





インドのGST(物品・サービス税)に関する過去のコメント

2016年8月7日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160807.html

 


【コメント】
インド政府は新しく制定した「物品・サービス税(GST)」を今年7月1日から実施することを決定した、とのことです。
インドのGST(物品・サービス税)に関しては、2016年8月7日(日)に少しだけコメントを書きましたので参考にして下さい。
インドの税制はこれまで極めて複雑であったわけですが、「物品・サービス税(GST)」についてインターネットで検索してみますと、
7月1日から実施されることになった「物品・サービス税(GST)」も依然として複雑な税体系のままであるように思います。
2016年8月7日(日)に紹介した2016年8月5日(金)付けの日本経済新聞の記事には、日本の専門家から見方として、

>企業はこれまで業態や地域ごとに異なる複雑怪奇な税制度に悩まされてきた。

とこれまでのインドの税制について書かれていますが、別の専門家からの見方として、新しい税制についても、

>理想的な姿である簡素な税制からかけ離れている。

と書かれています。
私もちょっとインターネットで検索してみただけで、同じように感じました。
2017年5月20日(土)付けの日本経済新聞の記事には、「物品・サービス税(GST)」の導入により、

>企業は税務処理の簡素化や物流の効率化が期待できる。

と書かれていますが、とてもそうは思えないなと思いました。
話を複雑にしているのが、「物品・サービス税(GST)」においても課税主体が連邦政府と州政府の2つの政府である点です。
紹介しているEY税理士法人の開設記事のには、二重管轄(dual control)と地域管轄権(territorial jurisdiction)の考え方が
GSTの導入に当たって大きなハードルとなっていた、と書かれていますが、まさにその通りだと思います。
実施予定の「物品・サービス税(GST)」においても、この大きなハードルは実は全く取り除かれていないのです。
二重管轄問題については、連邦政府と州政府のGSTの課税割合(10:90等)を任意に決めているだけで解決したとなっていますし、
地域管轄権問題については、課税徴収をする権限は連邦政府にあり続けるが、法律の特別条項によって、
州政府にも今後決定する方式による権限が与えられる、といった具合になっており、極めて入り組んだ税制のままかと思います。
インド憲法では中央政府と地方政府双方に徴税権を認めているとのことですが、まさにこのことが事の問題点の原因なのです。
日本の憲法に何とかかれているのかは知りませんが、端的に言えば、どの国においても、徴税権は中央政府(国)のみにあり、
地方政府(県や市などの地方自治体)は国の出先機関、という位置付けであると整理するべきだと思います。
税法の制定は中央政府(国)の役割、税の申告と納付を受け付けるのは地方政府(窓口)の役割、
といった具合に課税・徴税体制を整理するべきであると思います。
7月1日からインドで実施される「物品・サービス税(GST)」は、
@中央政府の収入となる「中央GST」、A州政府の収入となる「州GST」、B州をまたぐ取引に適用される「統合GST」
の3つで構成される(税法も中央GST法と州GST法と統合GST法の3法がある)とのことです。
税制の簡素化を目的とするのなら、「物品・サービス税(GST)」は「中央GST」に一本化するべきであったのではと思います。
解説記事をざっと読んだだけで、以前と何も変わっていない(税の名称だけが変更になっただけ)のではないか、
という気がします。
現行の数多くの間接税を、「物品・サービス税(GST)」という名称に変えただけ
(GSTという総称を新たに設けただけなのでは。事実上個別の税目はあまり変わらないのでは)なのではないかと思います。

 


それで、私が2017年5月20日(土)付けの日本経済新聞の紙面を見てふと思ったのが、
インドのおける「州境を越える際の税」についてです。
この「州境を越える際の税」が、インドにおいて物流効率化の妨げになっている、との記事が多いようです。
この「州境を越える際の税」は、より具体的には、「入境税(Entry Tax)」という名称であるようです。
また、この「入境税(Entry Tax)」は州政府管轄のようですが、
さらに市町村単位で課される「入境税(Entry Tax)」も別にあるようです。
中央政府管轄の「入境税(Entry Tax)」もあるという解説記事もあり、私にも理解しきれていないところです。
「物品・サービス税(GST)」の申告・納税に当たっては、
新たに「物品・サービス税(GST)」に関する登録が企業には求められるようですが、
「州を越えてモノ又はサービスを提供する企業」が登録が必要な企業として特に挙げられています。
このことは、企業が州を越えてモノ又はサービスを提供すると、「物品・サービス税(GST)」の課税が問題になる、
ということを意味しているのではないかと思いますので、税務上今後も州の垣根は相変わらずある、ということでしょう。
「物品・サービス税(GST)」の導入によっても、中央政府・州政府の各種間接税は何ら一本化されてはいないのだと思います。
こちらのサイトに、「税務当局発表による税率の一覧表」へのリンクが載っています↓。

物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)アップデートまとめ(スズキグローバルコンサルティング株式会社)
ttps://www.suzuki-gc.com/2017/05/21/gst/

この税率の一覧表を見て、税制が簡素化された、と思う人は世界中探しても1人もいないでしょう。
私が2017年5月20日(土)付けの日本経済新聞の紙面を見て、インドの「州境を越える際の税」はどのような取り扱いとなるのだろうか
と思った理由は、紙面の右隣に北米における「関税」(北米自由貿易協定)の記事が載っていたからです。
現在、アメリカでは「国境税」という新しい税目が議論されているようですが、
アメリカの「国境税」とインドの「入境税(Entry Tax)」は、国内か国際かの違いこそあれ、
両税目は概念的には近いものなのだろうと思ったのです。
国であれ州であれ、境を越えることに関連する税というのは「そもそも課税標準は何か?」が問題になると思います。
2016年8月7日(日)に紹介した2016年8月5日(金)付けの日本経済新聞の記事には、

>たとえば、ある州で作った自動車を隣の州に輸送して販売する場合、
>企業は物品税を中央政府に、州を越えるのに必要な中央販売税を州政府に支払い、
>消費者が州政府に付加価値税を支払ってきた。
>今後は中央販売税がなくなり、物品税も付加価値税もGSTに一本化される見込みだ。

と書かれていますが、物品税や付加価値税という言葉の意味合いもインドと日本では大きく異なるようだと思いました。
私はこれまで、日本の税目について、物品税と付加価値税は根本的に異なる、と書いてきました。
現行の消費税は付加価値税ですが、かつての物品税は理論的には実は全く付加価値税ではなかったのです。
かつての物品税は、ただ単に店頭の小売価格(もしくはサービスの提供価格)に物品税率を掛け算して算出していただけなのです。
かつての物品税には、製造業者や卸売業者という概念はなかったのです。
一消費者から見ると、同じような税なのではないか、と見えるだけなのです。
インドの州政府は日本の都道府県よりも大きな権限を持っているようですので、必然的に税制も複雑になるのだろうと思いました。