2017年4月20日(木)



2017年4月19日(水)日本経済新聞
東芝を読み解くキーワード C 日本取引所自主規制法人
内部監理体制の改善を審査
(記事)




2017年4月20日(木)日本経済新聞
東芝を読み解くキーワード D 米連邦破産法11条
手続き開始で連結対象外
(記事)

 


昨今の株式会社東芝の上場廃止回避問題に関する結論

2017年4月13日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170413.htm

2017年4月14日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170414.htm

2017年4月16日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170416.htm

2017年4月18日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170418.html

 



【コメント】
株式会社東芝は、明日2017年4月21日(金)、上場廃止になります。
これは冗談や風説の流布で言っているのではなく、上場規則の条文の通りなら、本当に明日上場廃止になる、という意味です。
2017年4月19日(水)の日本経済新聞の記事によると、
2015年にエル・シー・エーホールディングンスが「特設注意市場銘柄」に指定された後、上場廃止になったようです。
エル・シー・エーホールディングンスは、上場廃止が決定された後、「整理銘柄」に指定されたのかどうかは分かりませんが、
「特設注意市場銘柄」に指定された時点で、上場廃止も十分あり得る、と投資家は認識しなければならないと思います。
そもそも、「無限定適正意見が付された四半期報告書を提出したか否か」ほど意見の分かれようのない判断基準はないわけです。
「期限までに無限定適正意見が付された四半期報告書を提出しない場合は即時上場廃止」、というのが法理的な考え方かと思います。
なぜなら、「無限定適正意見が付された四半期報告書が提出されない」というのは、
投資家にとって投資判断を行うための判断材料がない、ということとイコールだからです。
金融商品取引法は「ディスクロージャーの法」とも呼ばれますが、
「ディスクロージャー」がなされない場合は、法の趣旨である「投資家の利益保護」を全く図れない、ということになるのです。
会社が「ディスクロージャー」をしない場合は上場廃止になるのは、実は投資家保護の観点からも明らかなことなのです。
逆から言えば、「ディスクロージャー」がない場合に上場廃止にしないのは投資家保護の観点に反する、ということになるのです。
それで、私は何も株式会社東芝に恨みがあってこのようなことを書いているのでは決してなく、
自分なりに「あるべき証券制度」を考えていく中で、これは上場廃止にすべきだと思ったから書いているだけなのです。
つまり、現実に明日上場廃止になって欲しいと思って書いているのではなく、
理論的にはこの場合は上場廃止の類型だ、と頭の中で考えを整理して書いているだけなのです。
簡単に言えば、理論上の話をしている、と思って下さい。
それで、理論上の話として、株式会社東芝を上場廃止にするとして、では次に何をなすべきかと言えば、
しかるべき手続きをとって早期に株式会社東芝を再上場させればよい、と私は考えているわけです。
ではどうすれば株式会社東芝を再上場させることができるのかと言えば、
厳密な規定や手続きについてはここでは触れませんが、要するに、
十分な監査の後、会計監査人から「『無限定適正意見』が記載された監査報告書を株式会社東芝は提出してもらえばよい。」
と私は思うわけです。
これで株式会社東芝は再上場となるわけです。
つまり、現時点では株式会社東芝は「ディスクロージャー」に問題があるために一時的に上場廃止になるわけですが、
「ディスクロージャー」の問題が解決したならば、再び株式会社東芝を市場で取引してよい、というふうに考えるわけです。
「上場廃止」という言葉がどこか過激ならば、「取引の一時的停止」という表現はどうでしょうか。
カタカナで言えば、「ディスクロージャー」の不備に伴う一種の「サーキット・ブレーカー」を機能させる、と考えるわけです。
上場か上場廃止かの違いは、実は「市場で株式の取引が認められるか否か」の違いに過ぎないわけです。
「ディスクロージャー」に不備があるなら、その不備を正せばよいわけです。
ですので、上場廃止という響きからは、上場廃止後何年かは市場で株式の取引を行えないと感じてしまいますが、
そうではなく、不備が正されるまで株式の取引を一時的に停止する、と考えるわけです(数週間から数ヶ月程度)。
そのように考えることが、投資家の利益保護に適うと思うわけです。
株式の取引を一時的に停止すると言っても、投資家にとって株式が紙くずになるわけでは全くありません。
再び株式の取引が開始されるまで、待てばよいわけです。
無限定適正意見が付された四半期報告書が提出されないまま、株式の取引を行うよりは、はるかに投資家保護の観点に適うのです。
簡単に言えば、理論的なことを言えば、上場廃止ということを大げさに捉えすぎているのではないかと私は思うわけです。
とにかく、「ディスクロージャー」に不備があるまま株式の取引を継続することが一番まずい、と私は思うわけです。

 


以上の「株式の取引の一時的停止」や「サーキット・ブレーカー」と関連がある記事とプレスリリースがありましたので紹介します。

 

富士フイルムHD、17年3月期決算発表を延期

 富士フイルムホールディングスは20日、2017年3月期の決算発表を延期すると発表した。
当初は今月27日の予定だったが、未定とした。
連結子会社である富士ゼロックスの海外販売子会社で、
16年3月期以前の一部のリース取引に関わる会計処理の妥当性に確認が必要になったため。
社内調査委員会の調査では、過去数年間にわたる純利益に与える影響額は累計で約220億円の損失になるという。
 富士フイルムHDは第三者委員会を設置し、5月中をめどに調査結果の報告を受ける予定。
(日本経済新聞 2017/4/20 18:23)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ20HWD_Q7A420C1000000/?dg=1&nf=1

 

2017年4月20日
富士フイルムホールディングス株式会社
第三者委員会設置及ひ2017年3月期決算発表の延期に関するお知らせ
ttp://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/other/ff_irnews_20170420_001j.pdf

4. 2017年3月期決算発表が延期となる理由と今後の予定
(1/2ページ)

 



このたびの富士フイルムホールディングス株式会社の事例では、
決算の発表の延期とは言っても、上場規則に基づく「決算短信」の開示の話をしているのだと思います。
つまり、富士フイルムホールディングス株式会社は有価証券報告書の提出を当初の予定より延期する、
と言っているわけでは全くないわけです。
つまり、このたびの富士フイルムホールディングス株式会社の事例は、上場廃止とは関係はないわけです。
ただ、昨今の株式会社東芝の事例とこの記事やプレスリリースを読んで私が思いついたのは(あくまで理論上の私案ですが)、
「決算期末日から有価証券報告書を提出するまでは株式の取引を停止する」という考え方です。
このように考えるならば、四半期報告書の提出や有価証券報告書の提出が遅れることが株式の取引に影響を与えない、
と思ったわけです。
有価証券報告書を提出した会社から順次株式の取引を開始していくわけです。
もちろん、4月1日に有価証券報告書を提出しても構わないわけです。
昨今の株式会社東芝の事例を見ていて思ったのは、
「では一体いつ無限定適正意見が付された四半期報告書を提出するのか?」ということなのです。
そして市場では、無限定適正意見が付された四半期報告書が提出されないまま株式の取引が継続されているわけです。
「ディスクロージャー」によって投資家の利益保護を図る、という趣旨から言えば、これでは全く意味がないと思うわけです。
それならばいっそのこと、無限定適正意見が付された四半期報告書や有価証券報告書を提出するまでは株式の取引を認めない、
と考えた方が整理が付く(つまり、証券取引と「ディスクロージャー」制度との整合性が確保される)と思ったのです。
現実的には実施するのは難しい点もたくさんあろうかと思いますが、
金融商品取引法に基づく「ディスクロージャー」を根拠に投資家は株式の取引を行う(投資判断を行う)、
という点を鑑みれば、決算期末日後は「ディスクロージャー」によって株式の取引を開始する、
と考えるべきではないかと思いました。

 


In this case, nobody says that toshiba has submitted the quartely securities report by the due date.

このたびの事例では、東芝は提出期限までに四半期報告書を提出したと言う人は誰もいないのです。

 

The facts which are revealed after a closing date
don' take any effects on financial statements of the concerned period at all.

決算日後に判明した事実は、当期の財務諸表に一切影響を及ぼしません。

 


株式会社東芝については、次のような記事がありました。

 

2017年4月19日(水)日本経済新聞
東芝、主要事業を分社へ インフラやエネ、2万人転籍
(記事)



2017年4月19日(水)日本経済新聞
東芝、インフラ軸に再建 主要事業分社へ 重電大手と競争激化
東芝半導体の応札検討 産業革新機構 「チーム作り勉強」
(記事)



日本経済新聞のウェブサイトを見ていますと、富士フイルムホールディングス株式会社について次のような記載がありました。

>事業内容
>【多角化】写真主体から複写機、医療、印刷、液晶材料などに転換。

(富士フイルムホールディングス[4901] : 情報機器・通信機器 : 日経会社情報DIGITAL : 日経電子版)
ttp://www.nikkei.com/nkd/company/?n_cid=DSNKD002&scode=4901


富士フイルムホールディングス株式会社は、事業構造を大きく転換した企業として有名です。
また、株式会社東芝も、多角化を推し進め、そして現在分社化や事業からの撤退を検討している最中かと思います。

 



東芝や富士フイルムは「事業の多角化」と「事業の選択と集中」が経営課題となっているわけですが、
東芝や富士フイルムとは極めて対照的な事例がありましたので紹介します。

 

十八銀行頭取「債権譲渡も選択肢」 経営統合巡り会見

 長崎県の十八銀行は17日、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)との経営統合に関する記者会見を長崎市で開いた。
森拓二郎頭取は、公正取引委員会との間で企業結合審査が長期化していることに関して、
「顧客の同意がないと進まない」としつつ「債権譲渡も(問題解消措置の)選択肢の1つ」との見方を示した。
 十八銀とふくおかFGは2016年2月、経営統合で基本合意している。
ただ、公正取引委員会が統合後の貸出シェアが長崎県内で7割に上る点を問題視。
審査の長期化で統合予定が当初の17年4月から同年10月に延期されている。
(日本経済新聞 2017/4/17 13:17)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASJC17H2Q_X10C17A4000000/

 

親和銀、十八銀と債権譲渡の可否協議へ 統合計画巡り

 長崎県の親和銀行の吉沢俊介頭取は20日、同県首位の十八銀行と親会社のふくおかフィナンシャルグループ(FG)の経営統合
について「(他の金融機関への)債権譲渡は避けて通れない」と述べ、債権譲渡が可能かどうか十八銀と協議する意向を示した。
統合をめぐっては県内の貸出金のシェアが高まることから公正取引委員会による企業結合審査が長期化している。
 親和銀は同日、統合計画について報道機関向けに説明会を開いた。
吉沢頭取は「7月中に公取から承認を取ることを目指す」と述べた。
一方、「10月の統合が間に合わなくても顧客にデメリットはない」とも述べ、再延期の可能性については否定しなかった。
 統合に向けたシェア抑制策について、十八銀の森拓二郎頭取が17日、「債権譲渡も選択肢の一つ」と記者会見で述べていた。
(日本経済新聞 2017/4/20 19:21)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASGC20H02_Q7A420C1EE9000/

 


長崎県が地盤の十八銀行と福岡県と長崎県が地盤のふくおかフィナンシャルグループとが経営統合を計画しているのですが、
統合後の貸出シェアが長崎県内で7割に上る点を公正取引委員会が問題視しており、企業結合審査が長期化している、とのことです。
そこで、十八銀行は、長崎県内における貸出シェアを引き下げるべく、債権譲渡(貸出金の他行への譲渡)を検討しているようです。
また、合併で相手である、ふくおかフィナンシャルグループの完全子会社である親和銀行(長崎県)も、
「債権譲渡は避けて通れない」(頭取談)と述べ、債権譲渡が可能かどうか十八銀行と協議する意向を示しているようです。
経営統合に先立ち両行が実施を検討している「債権譲渡」を公正取引委員会がどのように判断するのかは分かりませんが、
結論だけを言えば、この「債権譲渡」には何の意味もありません。
なぜならば、銀行にとっては、「資金の貸し出し」が本業であり、また、唯一の事業だからです。
すなわち、たとえ一旦銀行が貸出金を他行に譲渡したところで、銀行は再び他の融資先に資金を貸し出すだけだからです。
そうしないと、銀行は生き残れないからです。
貸し出しを行わない銀行は、銀行ではありません。
銀行が貸し出しを行わないで、一体どうやって営業収益を獲得していくというのでしょうか。
結局のところ、債権譲渡の結果、貸出シェアが一時的に下がったところで、正常な営業を続ける限り、
新たな融資先へ資金を貸し出す結果、再び貸出シェアは上昇するのです。
ですから、貸出シェア抑制を目的にした銀行による債権の譲渡は、結局全く意味がないのです。
このことは、今般の東芝や富士フィルムホールティングスと対比させてみると分かるように、
「銀行業というのは『事業内容』の変更が本質的に不可能な業種である。」と表現できると思います。
他の言い方をすれば、銀行は多角化(事業内容の転換)が本質的にできない、と表現できると思います。
銀行にとって、「貸出金」はまさに事業用資産です。
しかし、銀行は、その事業用資産を東芝や富士フイルムのように入れ替えることはできないのです。
事業用資産を入れ替えることや事業別の収益構造を変化させていくことを、
「事業ポートフォリオ」の入れ替えと表現してよいかと思いますが、
銀行は「事業ポートフォリオ」を入れ替えることが本質的にできないのです。
例えば、東芝は、医療用機器販売事業から撤退する(医療用機器販売事業の株式や資産を他社に譲渡する)ことはできます。
しかし、銀行は、貸出業から撤退することは決してできません。
貸出業から撤退することは、銀行にとって究極の自己否定と言えるでしょう。
東芝が医療用機器販売シェアを諦めることはできます。
しかし、銀行は、貸出シェアを諦めることは決してできないのです。
なぜなら、貸出こそが銀行にとって創業以来の唯一の事業だからです。
「事業ポートフォリオ」の入れ替えという点において、銀行は東芝や富士フイルムのようにはいかないのです。
「護送船団方式」そして「箸の上げ下げまで指導する」と言われる銀行業界です。
むしろ、金融監督当局としては、そもそも「銀行間で競争をさせないこと」が金科玉条だったはずではないでしょうか。
金融行政の趣旨を鑑みれば、銀行業に関しては、根本的に公正取引委員会が出てくる幕は一切ないはずなのです。
銀行では、銀行法により、店舗の営業時間(朝9時から15時までと)まで定められています。
これは、顧客(預金者と融資先両方)にとっての利便性を考慮した結果ではなく、
「銀行間で営業条件を全く同じにすること」を考慮した結果なのです。
その意味において、例えばある銀行が店舗を16時まで営業することは脱法的(少なくとも法の趣旨に反する)と言えるのです。
場面により、経営統合を金融監督当局が主導する、ということも銀行業界では行われなければならないわけです。
ですので、銀行業については、市場シャア(貸出シャア)に関する企業結合審査はそもそも対象外とする、
という考え方を行うべきなのです(銀行業界における経営統合については金融監督当局が排他的に公認する、と考える)。
簡単に言えば、「そもそも銀行同士では競争をしていない。」、と考えるわけです(だから公正取引委員会は関係ない、と)。
端的に言えば、金融業の社会的位置付けを鑑みれば、銀行業では「シェア」という考え方が全くそぐわないのだと思います。