2017年4月14日(金)



2017年4月14日(金)日本経済新聞
東芝を読み解くキーワード A 上場廃止基準
3条件に「不適正意見」加わる
(記事)





2016年8月12日
株式会社東芝
第2四半期報告書(2016年7月1日〜2016年9月30日)
ttp://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/sr/ssr2016/q2/tssr2016q2.pdf


2016年11月11日
株式会社東芝
第1四半期報告書(2016年4月1日〜2016年6月30日)
ttp://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/sr/ssr2016/q1/tssr2016q1.pdf

 


監理・整理銘柄一覧(東京証券取引所)
ttp://www.jpx.co.jp/listing/market-alerts/supervision/

 


昨今の株式会社東芝の上場廃止回避問題に関する結論

2017年4月13日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170413.html

 



【コメント】
昨今の株式会社東芝の上場廃止回避問題に関する結論は、昨日2017年4月13日(木)に書きました通りです。
上場企業は、決算を発表(決算短信を開示)すればよいというものでは全くなく、
必ず「無限定適正意見」が付された四半期報告書を金融庁に提出しなければならないのです。
今のままですと株式会社東芝は2017年4月21日までに上場廃止になります。
本日2017年4月14日(金)現在、株式会社東芝は「無限定適正意見」が付された四半期報告書を金融庁にまだ提出していませんので、
今のままですと株式会社東芝は2017年4月21日までに上場廃止になります。
昨日の結論を踏まえますと、本日2017年4月14日(金)の日本経済新聞の記事「東芝を読み解くキーワード A 上場廃止基準」は、
正確ではない部分がやはりあると思います。
記事中の「東芝にかかわる上場廃止基準」の中に、
「A有価証券報告書の提出遅延」と「C監査人の『不適正意見』『意見表明なし』」の2つが書かれていますが、
東芝の場合はこの2つは結局のところイコールの問題点であるわけです。
記事の見出しには、わざわざ「3条件に『不適正意見』加わる」と書かれていますが、そのように考えるのは間違いなのです。
一言で言えば、「有価証券報告書の提出遅延の原因は会計監査人から無限定適正意見を得られないこと」であるわけです。
まさにこのたびの東芝の事例でもありましたように、監査法人が承認しないので会社は決算を発表できない、
とよく言ったりしますが、実はそれは間違いなのです。
上場企業は監査法人の承認なしに決算を発表できます。
それが決算短信です。
ですので、正確には、「会計監査人から無限定適正意見を得られないので会社は有価証券報告書を提出できない。」
という因果関係にあるわけです。
つまり、実務上は、「C監査人の『不適正意見』『意見表明なし』」は始めから「A有価証券報告書の提出遅延」に含まれている、
と言っていいわけです。
有価証券報告書を期限までに作成できない、などということは実務上はあり得ないわけです。
問題は、「会計監査人から無限定適正意見を得られるかどうか」に尽きるのです。
上場規則上は、これら2つは上場廃止事由としては分かれているのは確かですが、
「会計監査人から無限定適正意見を得ているのに有価証券報告書を提出しない」などということは現実にはまずあり得ないわけです。
上場企業が有価証券報告書を提出できない理由は、実務上は、「会計監査人から無限定適正意見を得られないから」だけなのです。

 


それから、株式会社東芝は東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定されているようです。
「特設注意市場銘柄」についてはあまり詳しくないので、インターネット上から解説記事を紹介します。


特設注意市場銘柄(とくせつちゅういしじょうめいがら)

有価証券報告書等の虚偽記載や監査報告書等の不適正意見、上場契約違反等の上場廃止基準に抵触するおそれがあったものの
上場廃止に至らなかった銘柄のうち、内部管理体制等を改善する必要性が高いと取引所が判断し、
継続的に投資家に注意喚起するために指定する銘柄のこと。
特設注意市場銘柄に指定された銘柄は、特設注意市場において、通常の取引銘柄と区別されて売買取引を行う。
当該企業は、指定から1年経過後、速やかに取引所に「内部管理体制確認書」を提出する必要がある。
「内部管理体制確認書」の内容等に基づき審査を行った結果、内部管理体制等が改善したと取引所が判断した場合には、
特設注意市場銘柄の指定から解除され、通常の取引銘柄に戻る。
ただし、特設注意市場銘柄指定後1年以内に内部管理体制等について改善がなされず、
今後も改善の見込みがないと取引所が認める場合や、特設注意市場銘柄指定後1年6か月以内に内部管理体制等について
改善がなされなかった場合には上場廃止となる。
(野村證券株式会社 証券用語解説集)
ttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/to/tokusetsu_chui.html


「特設注意市場銘柄」という分類は、金融商品取引法が「内部管理体制」を規制の対象とするようになってから設けられたもの
なのであろうと思います。
ですので、「特設注意市場銘柄」という分類・名称は、設けられてからまだ10年経つか経たないか、と言ったところでしょう。
他の解説記事を読みますと、”特設注意市場銘柄の制度は、東京証券取引所では2007年11月に新設され、”と書かれてあり、
やはり思った通りか、と思いました。
証券取引所における「特設注意市場銘柄」の新設は、金融商品取引法の改正と軌を一にしていたことだと思います。

 


それで、昨日今日と繰り返し書いていることですが、
株式会社東芝は「無限定適正意見」が付された四半期報告書を金融庁にまだ提出していませんので、
今のままですと株式会社東芝は2017年4月21日までに上場廃止になるわけです。
これは文字通り、上場規則上・手続き上は、「株式会社東芝は2017年4月21日までに上場廃止になる」という意味なのだと思います。
つまり、これから株式会社東芝が上場廃止になるとしても、株式会社東芝は整理ポストには割り当てられない、
ということに上場廃止手続き上はなるのではないかと思います。
通常は、株式が整理ポストに割り当てられた場合、市場で売買ができる期間は原則1ヶ月間となります。
しかし、「会社は『無限定適正意見』が付された四半期報告書を金融庁に提出していない」という事象は、
そもそも判断の分かれようがない事象です。
期限までに四半期報告書を金融庁に提出しない場合は、期限から8営業日以内に上場廃止になる、
と規則に定められているのであれば、
もはや株式会社東芝を整理ポストに割り当てる(さらに1ヶ月間株式を売買する機会を与える)時間的余裕はないはずです。
「期限から8営業日以内に上場廃止にするかどうかを証券取引所が判断する」(決定)ではなく、
「期限から8営業日以内に上場廃止とする」(実行)、という定めになっていると思います。
「整理ポスト」に割り当てられることなく上場廃止になる、という点についてですが、
例えば、「上場会社が株式交換又は株式移転により他の会社の完全子会社となる場合」も、
完全子会社は整理ポストには割り当てられないのではないかと思います。
ですので、「特設注意市場銘柄」に指定されていること自体が、「整理ポスト」への割当の意味合いも兼ねている、
と考えるべきなのでしょう。
「特設注意市場銘柄」自体がそもそも「監理ポスト」に非常に似通っているように私は思うのですが、
条文解釈上は、「特設注意市場銘柄」は場合によっては「整理ポスト」も兼ねている、と考えるべきなのだと思います。
今のままですと株式会社東芝は、「整理ポスト」へ割り当てられることなく、2017年4月21日までに上場廃止になります。
今東京証券取引所のサイトを見ていましたら、「上場会社が株式交換又は株式移転により他の会社の完全子会社となる場合」も、
完全子会社は整理ポストには割り当てられるようです。
また、株式会社東芝は、現在「監理銘柄(審査中)」に指定されているようです。
この点は訂正します。
ただ、「完全子会社を整理ポストには割り当てる」というのは、株式交換又は株式移転の効力発生日から逆算して決めているだけ
であるように思います。
つまり、例えば株主総会決議日から効力発生日まで1ヵ月以上時間が空いているから、
整理ポストに割り当てるだけの時間的余裕がある、というだけではないでしょうか。
効力発生日が株主総会決議日の次の日であったらどうするのでしょうか。
株主総会決議日は定時株主総会日である6月30日、効力発生日は翌7月1日である場合、
完全子会社を監理ポストや整理ポストに割り当てる時間的余裕はあるでしょうか。
現在、高木証券株式会社は、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社の完全子会社になることが決まっているのですが、
整理銘柄指定期間は「2017年4月13日(木)から2017年4月29日(木)まで」のわずか2週間だけです。
「上場廃止が決定した後、投資家保護の観点から、少なくとも1ヶ月間の売買可能期間を設けるべき」
という理屈は成り立たないわけです。
「無限定適正意見」が付された四半期報告書を提出していないということは、そもそも十分な投資判断ができないということです。
投資家への注意喚起という意味では、「特設注意市場銘柄」や「監理銘柄」への指定だけで十分だと思いました。
つまり、投資家は株式会社東芝がこれから上場廃止になること(の可能性)を十分に認識している、という解釈になると思いました。
このたびの事例では、投資家保護の観点から、株式会社東芝は即日上場廃止とする、という考え方になるのではないかと思いました。