2017年3月8日(水)
2017年3月7日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201703/20170307.html
昨日は、オーストラリア法に基づく公開買付と日本法に基づく公開買付の相違点について書きました。
オーストラリア法に基づく公開買付は、日本法に基づく公開買付とは完全に異なっているわけです。
昨日は主にオーストラリア法に基づく公開買付についてコメントを書いたわけなのですが、
オーストラリア法に基づく公開買付は、日本法に基づく公開買付とは完全に異なっているということについては、
日立建機株式会社が発表しているプレスリリースを読んで初めて気付いたわけです。
オーストラリア法に基づく公開買付は日本法に基づく公開買付と同じような株式取得方法なのだろう
と新聞記事だけを読んで思い込み、昨日は実はその観点から少し下書きをしていたのです。
その下書きについては、オーストラリア法に基づく公開買付は、日本法に基づく公開買付とは完全に異なると気付いて
昨日は急遽アップロードはしないことにした(正式なコメントとしてホームページに書きはしなかった)のですが、
昨日書きました下書きは日本法に基づく公開買付には当てはまる論点であろうと思いますので、
その下書きに手を加える形で今日はコメントを書きたいと思います
(どの部分が昨日書いた下書きなのかはこのページを読んでいるだけの人には分からないことでしょうけれども)。
オーストラリア法に基づく公開買付のことや昨日の日立建機株式会社の事例のこととは全く関係なく、
純粋に「日本法に基づく公開買付」について考察したものだ、という前提で以下のコメントを読んでいただければと思います。
今日書きたい論点というのは、「買付期間中に買付予定数を引き下げること」(公開買付の条件の変更)の是非についてです。
金融商品取引法上、公開買付者は公開買付開始後、一定の範囲内で買付条件を変更することができるのですが、
買付価格の引き下げや買付予定数の減少や買付期間の短縮など、対象会社の株主にとって不利になるような条件の変更はできません。
金融商品取引法の第27条の6の第1項(公開買付けに係る買付条件等の変更)に規定があります。
今日の論点に関する現行の規定を言えば、「公開買付者は、買付予定の株券等の数の減少を行うことはできない。」となります。
簡単に言えば、金融商品取引法上の規定としては「公開買付者は買付期間中に買付予定数を引き下げること」はできないわけですが、
金融商品取引法にいう「買付予定の株券等の数」とは、結局のところは、
「買付予定数」と「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」の1セット(これら3項目で1セット)のことを指すのだろうと思います。
つまり、金融商品取引法上、現行の規定は、「買付予定数」を引き下げることも「買付予定数の上限」を引き下げることも
「買付予定数の下限」を引き下げることもできない、という意味であろうと思います。
金融商品取引法にいう「買付予定の株券等の数」の定義が条文を読んでも実はいまいちはっきりしないのですが、
「買付予定の株券等の数」とは「買付予定数」と「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」の3つ全てを指す、
と解釈するのが一番自然であろうと思います。
「買付予定数」と「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」のうち、1つだけもしくは2つだけを引き下げる、
ということは金融商品取引法の規定上認められない、ということになると思います。
現行の規定(条文)のことは分かった上で、では、例えば、「買付予定数の上限」だけを引き下げることや、
「買付予定数の下限」だけを引き下げる、ということの是非について考えてみましょう。
まず、「買付予定数の上限」だけを引き下げることは、応募株式のうち買い付けが行われる株式数が減少し得ることになりますから、
投資家保護の観点から認められない、ということになるでしょう。
次に、「買付予定数の下限」だけを引き下げることについてですが、これは判断が難しいと思います。
というのは、「買付予定数の下限」が引き下げられると、公開買付が成立する可能性が高まるからです。
公開買付に応募をする株主というのは、当然株式を買い付けてもらいたいと思って応募をするわけです。
成立しないと思ったのに(買い付けてもらいたくなかったのに)、などと思って公開買付に応募する株主はいないわけです。
そうしますと、「買付予定数の下限」だけを引き下げることは、投資家保護の観点に資する、とも言えると思います。
では、逆のパターン、すなわち、
金融商品取引法上の「買付予定の株券等の数」を引き上げること(現行規定上容認される買付条件の変更)について考えみましょう。
まず、「買付予定数の上限」だけを引き上げることは、応募株式のうち買い付けが行われる株式数が増加し得ることになりますから、
投資家保護の観点から認められる、ということになるでしょう。
次に、「買付予定数の下限」だけを引き上げることについてですが、これは判断が難しいと思います。
というのは、「買付予定数の下限」が引き上げられると、公開買付が成立する可能性が低くなるからです。
公開買付に応募をする株主というのは、当然株式を買い付けてもらいたいと思って応募をするわけです。
「買付予定数の下限」を引き上げる前の条件であれば公開買付が成立していた(応募株式を買い付けてもらえていた)はずなのに、
同じ応募株式数でも「買付予定数の下限」を引き上げた後の条件では公開買付が成立しない(応募株式を全く買い付けてもらえない)、
ということになり得ます。
このことは、「買付予定数の下限」を引き下げることは、実は投資家保護の観点に明らかに反する、と言わねばならないでしょう。
すなわち、「公開買付者は、買付予定の株券等の数の増加を行うことができる。」との金融商品取引法上の現行の規定は、
実は間違っている、と言わねばならないのです。
仮に投資家保護の観点を鑑みた上で公開買付の条件の変更を認めるとするならば、以上の議論を踏まえれば、結局のところ、
引き上げてよいのは「買付予定数の上限」だけであり、また、引き下げてよいのは「買付予定数の下限」だけである、
と定めるべきであろうと思います。
金融商品取引法の現行の規定では、
「買付予定の株券等の数」は「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」の組み合わせにより設定するわけです。
率直に言えば、金融商品取引法の条文に、「買付予定の株券等の数」との文言は用いるべきではないと思います。
他の言い方をすれば、「買付予定の株券等の数」という文言では、
「公開買付者が公開買付において買い付ける予定の株式の数」は定義されない、ということです。
定義されないから、現行の規定が矛盾しているのです。
「買付予定の株券等の数」について、どのような条件変更は認められどのような条件変更は認められないのか、図に描いてみました。
参考にしていただければと思います。
「『認められる条件変更』と『認められない条件変更』」
一言で言えば、「投資家(応募株主)が受け取ることになる金額が増加する方向へは条件変更が認められる。」
と考えればよいと思います。
現行の金融商品取引法の規定は、「買付予定数の下限」という概念をすっかり忘れているのだと思います。
「買付予定数の下限」という概念は、旧証券取引法でもありました(その時の文言はまさに「買付予定数」でした)ので、
忘れてもらっては困るのですが、この忘れ方・条文の定め方から推測すると、
旧証券取引法では「買付予定数」は変更できなかった、のではないかと思います(定め方がおかしいのでそう思いました)。
旧証券取引法ではどの程度買付条件を変更できたのかは分かりません(買付価格や買付期間も変更できなかった?)が、
現行の金融商品取引法はもう少し厳密に条文を定めるべきだと思いました
現行法でいう「買付予定数の下限」を引き上げてよいは、旧証券取引法でいう「買付予定数」を引き上げてよい、と同じです。
公開買付の成立可能性を鑑みれば、投資家保護の観点から、
「成立要件を厳しくすることは認められない。」、と考えるべきでしょう。
以下、思い付いたことをいくつか書いて今日は終わりたいと思います。
「買付予定の株券等の数」の変更について、次のようなことを思いました。
The change of terms is permitted as long as a volume of a payment
increases
because it represents the total amount investors will receive.
条件の変更は、支払金額のボリュームが増加する限り認められます。
なぜなら、支払金額のボリュームは投資家が受け取ることになる総額を表しているからです。
現行の金融商品取引法の条文をもう少し厳密に定める上で、次のようなことを思いました。
One idea is that the increase of the uppeer limit is permitted and the
decrease of the lower limit is permitted,
and that the decrease of the uppeer
limit is not permitted and the increase of the lower limit is not permitted.
買付予定数の上限を引き上げることは認められ買付予定数の下限を引き下げることは認められる、
そして、買付予定数の上限を引き下げることは認められず買付予定数の下限を引き上げることは認められない、
というのは1つのアイデアです。
「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」を同じ株式数だけ減少させる、つまり、
「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」の幅(上限−下限の値)は一定のまま買い付ける予定の株式数を減少させる、
という条件変更を行うとしたら、投資家保護の観点に資する場合と反する場合の両方があり得るなと思いました。
成立可能性が高まるという意味では投資家保護の観点に資すると言える一方、
条件変更前に応募株式数が「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」間に位置していた場合は
条件変更の結果、逆に買い付ける株式数が応募株式の全部から案分比例による買い付けなってしまうため、
投資家保護の観点に反すると言えるわけです。
「この条件変更は投資家保護の観点に資するのか反するのか?」という問いに答えはないと思いました。
Which treatment is more profitable to accepting shareholders, ending in
failure or "Better less than never."
結局不成立となることと、「減ってもないよりはまし」であることと、
どちらの取り扱いが応募株主にとってより利益になるでしょうか?
If the number of accepting shareholders has already reached more than 35
percent at this stage,
the decrease of the lower limit will do damage to the
already accepting shareholders.
応募株主の数が現時点で既に35パーセント超に達しているとしたら、
買付予定数の下限を引き下げることは、それら応募済みの株主の利益を害することになります。
「公開買付者が条件変更を行うのは現在の応募株式数が分からない状況下でのことになる。」、というのは確かですが、
結局、条件変更が投資家の利益に資することなのか反することなののかは誰にも分からない、
というのが条件変更は法理的には認められない理由なのだと思います。
つまり、法理上の答えを言えば、「買付条件は一切変更できない。」であるわけです。
例えば、当初の買付条件を見て、投資家は市場で株式を売却してしまうかもしれないわけです。
たとえ買付条件の変更を認めることにしても、投資家は条件変更を受けて自己の判断で応募を解除すればよいのではないか、
と思われるかもしれません。
しかし、応募は解除することはできますが、売却を取り消すことはできません。
これが「買付条件は一切変更できない。」1つの理由です。
Accepting shareholders can cancel a contract pertaining o a tender
offer,
but they can't cancel their trading any longer after they have sold
their shares in the market.
応募株主は、公開買付けに係る契約は解除することができますが、
市場で所有株式を売却してしまった後はもはやその取引を解除することはできません。