2017年3月7日(火)



2017年3月7日(火)日本経済新聞
豪社TOB株数下限下げ 日立建機
(記事)

 

 



2016年10月3日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limitedの株式の取得(子会社化)に向けた契約締結及び株式公開買付けの開始予定に関するお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2016/10/161003_Bradken-Aquisiyion_Ja.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2016年11月1日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けの開始に関するお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2015/06/20161101_Bradken-Limited-japan.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2017年2月2日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けの買付期間延長のお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2015/06/20170202_Bradken.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 



2017年2月16日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けの買付期間延長のお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2015/06/0216wabun.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




2017年3月2日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けの買付期間延長のお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2017/03/20170302_Bradkenj.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




2017年3月6日
日立建機株式会社
豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けにかかる買付条件の変更のお知らせ
ttps://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2017/03/20170306_Bradkenj1.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 



【コメント】
日立建機株式会社がオーストラリアの上場企業に対し、公開買付を実施しているようです。
日立建機株式会社が発表しているプレスリリースを読んでいて、様々なことを考えさせられましたので、
プレスリリースをキャプチャーしながら一言だけコメントします。
日本法に基づく公開買付とオーストラリア法に基づく公開買付の相違点が今日の論点になります。
プレスリリースを読む限り、オーストラリア法に基づく公開買付は、
日本法に基づく公開買付とは全くと言っていいくらい異なっている(同種の株式取得手続きではない)、と言っていいと思います。
このたびの2017年3月6日発表の分を含めて、今回の公開買付に関してはこれまで計6つのプレスリリースが発表されています。
そして、これまで、買付期間の延長と下限応募株式数の引き下げこそ行われたものの、
それら以外の買付条件に関しては変更は行われていないわけです。
一番最初に発表されたプレスリリースから重要な部分をキャプチャーしてみます。


「豪州企業 Bradken Limitedの株式の取得(子会社化)に向けた契約締結
及び株式公開買付けの開始予定に関するお知らせ」(2016年10月3日付け)
3. 本公開買付けの概要
(4)公開買付けに要する資金
(5)公開買付けの条件
4. 下限応募株式数
5. 本公開買付けによる当社保有の Bradken 社株式数の異動
(2/3ページ)



「下限応募株式数」は「50%超」となっていますが、
日立建機株式会社は現在行っている公開買付のみを通じて対象者株式の「全て」を取得する計画となっています。
どちらも同じ「公開買付」とは言うものの、これは日本の公開買付とは全く異なる株式取得方法であるわけです。
オーストラリア法に基づく公開買付では、単に「買付予定数の上限」を設定できないということでは全くなく、
日本法に基づく公開買付とは完全に異なり、結局のところは、
公開買付が成立した場合は応募がなかった株式まで含めて全ての株式を取得しなければならない、
という規定になっているようなのです。
オーストラリア法に基づく公開買付では、
あくまで「応募株式を買い付ける」という日本法に基づく公開買付とは、全く異なる考え方をしているわけです。

 


オーストラリア法に基づく公開買付では、成立時には「応募株式以外も買い付ける」という株式取得方法を行うわけですが、
本日2017年3月7日(火)付けの日本経済新聞にはさらに驚くべきことが書かれていました。
日立建機株式会社が発表した関連するプレスリリースをキャプチャーします。


「豪州企業 Bradken Limited の株式公開買付けにかかる買付条件の変更のお知らせ」(2017年3月6日付け)
1.買付条件の変更の内容
2.買付条件の変更の理由
(1/1ページ)



今般の買付条件の変更の内容や理由について、プレスリリースには非常に難しく書かれていますが、
要するところ、「下限応募株式数」を50%超から35%以上に引き下げる、と日立建機株式会社は言っており、
その理由として、公開買付の成立の可能性を高めるため、と日立建機株式会社は言っているわけです。
そして、実は今日の論点でここが一番重要なところなのですが、
公開買付の条件である「『下限応募株式数』を50%超から35%に引き下げる」ということと関連し、プレスリリースには、

>買付価格を含むその他の本公開買付けの内容及び買付条件については変更ありません。

と書かれています。
つまり、日立建機株式会社は、公開買付の条件である「『下限応募株式数』を50%超から35%に引き下げ」た後も、
対象会社である Bradken 社の発行済株式の「全て」を取得する計画を持っているわけです。
この点については、正確なところはオーストラリア法を調べないといけないところなのですが、プレスリリースの記述を読む限り、
私の理解が正しいなら、日立建機株式会社は、公開買付の条件を今般変更した後も、
依然として対象会社である Bradken 社の発行済株式の「全て」を取得する計画を持ったまま(ここは変更なし)である、
ということになるわけです。
そうしますと、端的に言って、「公開買付に35%の応募があれば公開買付者は対象者を完全子会社化できる。」ということになります。
以前は、「公開買付に50%超の応募があれば公開買付者は対象者を完全子会社化します。」と言っていたのに、
変更後は、「公開買付に35%の応募があれば公開買付者は対象者を完全子会社化します。」と言っているわけです。
これは考えていますと全くおかしな話ではないでしょうか。
「50%超の応募」という条件であればともかく、「65%」もの株主が公開買付者による株式取得に反対であるにも関わらず、
その反対を押し切って公開買付者は株式の取得を行うことができるのですから。
これは株主軽視、投資家軽視もいいところではないでしょうか。

 



私は以前、各国の具体的法規という意味ではなく、概念論として、組織再編行為を行う前段階として行われる公開買付について、
「公開買付への応募は株主総会における賛成票と同じだ。(だから公開買付を実施する必要はない。)」といったことを書きました。
オーストラリア法では、株主総会を招集・開催せずに、まさに私が指摘しましたように「公開買付への応募」という形で、
組織再編行為への賛否を株主に問う、という法制度になっているのだと思います。
この点を鑑みますと、「株主による組織再編行為実施の承認」がわずか「35%の賛成」だけで議事を決することになるわけです。
日本の会社法でも、決議要件を厳しくする方には定款で変更可能ですが、決議要件を緩くする方には絶対変更できないわけです。
その理由は極めて簡単であり、株主の意思を尊重するためであるわけです。
どんなに定款で定めようとも、株主の「35%の賛成」だけで議事を決する、ということは日本の会社法では絶対できないわけです。
世界各国、商行為だけではなく何事でも、基本的ルールは「多数決で議事を決する」であろうと思います。
公開買付の条件である「『下限応募株式数』を50%超から35%に引き下げる」と、
公開買付の成立の確実性・可能性が高まるのは確かですが、それは株主の意思を軽視することとイコールでしょう。
公開買付における「最低応募条件」は、株主総会における議案の決議要件と同じです。
引き下げてよいはずがないのです。
これは市場における投資家保護の観点から言っているのではなく、純粋に会社制度における株主保護の観点から言っているのです。
日本で言えば、これは金融商品取引法の範疇の事柄ではなく、会社法の範疇の事柄だ、と言わねばならないと思います。
オーストラリア法に基づく公開買付では、
一体何パーセントまで「下限応募株式数」・「最低応募条件」を低く設定できるのでしょうか。
私は漠然と、「下限応募株式数」・「最低応募条件」は、多数決の概念から「50%超」が最少値だと思っていたのですが、
仮に法規上「35%」という値を設定してもよいとなりますと、もはや法規上の最少値がいくつなのかは私には想像すらつきません。
オーストラリア法に基づく公開買付では、一般に「Bid Implementation Agreement」という手法が用いられる
ということなのだろうかと思っているのですが、この「Bid Implementation Agreement」という手法を用いれば、
公開買付者と対象会社とが合意をしさえすれば、対象会社の株主の意思(賛否の意思・応募の意思)はほとんど度外視される、
ということになる気がします。
それならば、いっそのこと、「株主の意思を問う」という考え方はこの際一切捨ててしまい、
「会社のことは会社(経営陣)が決めるものだ」というふうに発想を完全に転換してしまった方が早いような気がしました。

 

Though the "lower limit" is " more than 50 percent,"
the bidder is scheduled to acquire "all" of the shares issued automatically if the acceptance is enough.

「下限応募株式数」は「50%超」となっていますが、
応募数が十分だった時は公開買付者は発行済株式の「全て」を自動的に取得することになっています。

 

If my understanding is correct, this change of the term means
that the bidder makes light of the will of the shareholders.

私の理解が正しければ、今般の買付条件の変更は、公開買付者は株主の意思を軽く見ている、ということを意味しています。