2017年3月2日(木)
配偶者相続に新優遇案 「結婚20年・住宅贈与」が対象
相続制度の見直しを検討している法相の諮問機関「法制審議会」の相続部会に対し、法務省は28日、
結婚から20年以上過ぎた夫婦の場合、生前や遺言で住居の贈与を受けた配偶者が、相続で優遇されるという新たな案を示した。
部会では多数の賛同を得た。
一方、配偶者の法定相続分を引き上げる案は実現困難と判断した。
新しい案は、結婚から20年以上の夫婦で、配偶者が居住用の建物や土地の贈与を受ける場合が対象。
贈与した人が死亡し、相続人同士で遺産を分けることになった際に、贈与された住居については全体の遺産の計算に含めない。
贈与側にそうした意思があったと推定する形になる。
これにより、残された配偶者が住むための家を確保しやすくなるとともに、住まい以外の遺産の取り分も得やすくなるという。
(朝日新聞 2017年2月28日(火))
ttp://www.asahi.com/articles/ASK2X5R9FK2XUTIL033.html
過去の関連コメント
2017年2月19日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170219.html
【コメント】
法務省で、相続制度の見直し(相続分野の民法改正)が検討されているようです。
結婚期間が長期にわたる場合、遺産分割で配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げる、
という案がこれまでは提案・議論されていたのですが、記事によると、その案は実現困難と判断された、と書かれています。
今回提案された新しい案の主旨は、記事を引用しますと、次のようになります。
>結婚から20年以上の夫婦で、配偶者が居住用の建物や土地の贈与を受ける場合が対象。
>贈与した人が死亡し、相続人同士で遺産を分けることになった際に、贈与された住居については全体の遺産の計算に含めない。
>これにより、残された配偶者が住むための家を確保しやすくなるとともに、住まい以外の遺産の取り分も得やすくなるという。
この記事を読む限り、死亡者が配偶者へ居住する家と土地を生前贈与していた場合は、その家と土地は相続財産の金額に含めない、
という取り扱いにしてはどうか、と議論されているということだと思います。
このたびの新しい案というのは、相続そのものというよりも、生前の贈与が行われることが重要であるように思うのですが、
これはこれで1つの考え方なのだろうと思います。
この新しい案の是非についてはコメントはないのですが、
この新しい案を読んで(この考え方をヒントに)、全く新しい別の相続方法が頭に浮かびました。
それは、配偶者の法定相続割合を100%にする、という案です。
この私案では、仮に死亡者に子がいても、1円も相続できない、ということになります。
死亡者に配偶者がいない場合のみ、子が法定相続人になる(相続財産は子らで均等に分割する)、と考えるわけです。
この私案の根拠は、結局のところ、これも私個人の見方に過ぎないのかもしれませんが、「家族とは誰か?」、となります。
「同じ家に一緒に住んでいるからこそ家族なのではないか?」、という素朴な疑問・単純な感覚から、この私案を思い付きました。
この私案のイメージ図を描きましたので参考にして下さい。
「子の結婚後は、親子は戸籍が異なってしまう。」
2017年2月19日(日)のコメントでは、現代社会では戸籍や住民票では家族関係が全く明らかにならない(法的に明確ではない)ので、
>「あなたの家族は誰か?」を、一意に定義し明らかにする「家族票」と呼ばれる公的証明書が社会には必要だと思いました。
と書きました。
現代社会における戸籍や住民票の位置付けの中途半端さ・不明確さを鑑みれば、この考えは今でも正しいと思います。
しかし、考えてみますと、「そもそも一緒に住んでいるから家族」なのではないでしょうか。
「家族票」以前に、「一緒に住んでいる家族」があるはずなのです。
法理的なことを言えば、「家族とは誰か?」という問いには、当然に「一緒に住んでいる人達だ。」がその答えになるわけです。
2017年2月19日(日)のコメントでは、進学や就職を理由として、毎日の生活の拠点としては子が家から出て行く、
という場面を想定して書きましたし、それはそれで現代社会の実情に合ったコメントにはなっていると思います。
それで今日は、現行の民法の改正ということで、現代の結婚制度を前提に、新しい相続方法について考えてみたわけです。
現代の結婚制度(結婚をすると子の戸籍は親から分離・新たに作成される、家が分かれるという制度)を前提にしつつ、
「同じ家に一緒に住んでいる人が家族である。」という法理的な観点に重点を置くことによって、この私案を考えました。
自己否定になりますが、「同じ家に一緒に住んでいる人が家族である。」という見方は「家族票」よりも重要だ、と思いました。
One idea is that, in case that an inheritee has a spouse, the spouse is the
only inheritor.
And, in case that an inheritee has no spouse, the inheritee's
children are inheritors.
The reason for this idea is that, generally, a
deceased person had lived with his/her spouse till the death,
whereas the
deceased person had not lived with his/her children after their
marriage.
Conceptually speaking, a deceased person and his/her spouse was a
family (in one family register),
whereas a deceased person and his/her
children are not a family (not in one family register),
一つの考え方は、被相続人に配偶者がいる場合はその配偶者が唯一の相続人になる、というものです。
そして、被相続人に配偶者がいない場合は被相続人の子らが相続人になる、というものです。
このように考える理由は、通常、死亡者は死亡するまで配偶者と一緒に暮らしていた一方、
子らの結婚後は死亡者は子らとは一緒に暮らしていなかったからです。
概念的に言えば、死亡者と配偶者は家族であった(1つの戸籍内にいた)一方、
死亡者と子らは家族ではなかった(1つの戸籍内にはいなかった)からです。
From a viewpoint of a "family" or a "family register" on law,
the bond
between a father and his wife is much stronger
than that between the father
and his children after their marriage.
「家族」という観点から言えば、すなわち、法的には「戸籍」という観点から言えば、
父とその妻との絆は、父と結婚後のその子らとの絆よりもはるかに強いのです。