2017年2月10日(金)



三菱商事、ローソンを子会社化 問われる「事業経営力」

 三菱商事は10日、コンビニエンスストア大手ローソンの株式公開買い付け(TOB)を完了し、子会社化したと発表した。
計1440億円を投じ、出資比率は50.1%と過半を占めた。これをテコに業界3位に後退したローソンの反転攻勢を支える。
消費者に近いコンビニの競争力を、商社が引き上げられるのか。今後は三菱商事の「経営力」が問われていく。
 2016年4月に就任した垣内威彦社長は出資する企業の競争力を引き出す「事業経営」を標榜する。
資源・エネルギー価格に左右されない経営体制を確立するためだ。
 出資先の収益力を高めて受取配当金や取り込み利益を増やし、三菱商事の収益力も高めていく。
需要の振れ幅が小さい生活に密着した分野の事業に特に力を入れる方針で、ローソン子会社化はその象徴といえる。
 課題はお店の1日当たり売上高の底上げ。業界首位セブン―イレブンと大きな差がある。
最近のヒット商品である糖質を抑えた「ブランパン」は、三菱商事からの出向者が開発したものだ。
多様な経営資源を活用し、こうした消費者を引き付ける商品やサービスの一段の充実につなげていけるかどうかが、
巨額投資の成否を決める。
(日本経済新聞 2017/2/10 20:54)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ10HK9_Q7A210C1TI1000/

 


2017年2月10日
三菱商事株式会社
株式会社ローソン株式に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ
ttp://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2017/files/0000031905_file1.pdf


2017年2月10日
株式会社ローソン
三菱商事株式会社による当社株券に対する公開買付けの結果 並びに親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ
ttp://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1290901_2504.html

 

「株式会社ローソンのここ3ヶ月間の値動き」 (結果的には、買付期間中に株価が買付価格を上回ることは一度もなかったようです。)

 

三菱商事株式会社による株式会社ローソン株式に対する公開買付に関する過去のコメント

2016年12月22日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161222.html

 


【コメント】
三菱商事株式会社が株式会社ローソン株式に対して行っていた公開買付が、「2017年2月9日(木)」をもって終了しました。
公開買付は成立したわけなのですが、公開買付の終了日は「2017年2月9日(木)」であったわけです。
それぞれが2017年2月10日に発表したプレスリリースの記述を読みますと、株式取得の効力発生日について認識の相違があるようです。
公開買付者である三菱商事株式会社は、株式取得の効力発生日について次のように述べています。

>2)子会社の異動について
>1.異動の理由
>本公開買付けの結果、平成29年2月9日(本公開買付期間の最終日)付で対象者は公開買付者の連結子会社となりました。
>4.異動の日程
>平成29年2月9日(木曜日)(公開買付期間の最終日)

一方、対象者である株式会社ローソンは、株式取得の効力発生日について次のように述べています。

>2)親会社及びその他の関係会社の異動について
>(1)異動の予定日
>平成29年2月15日(水曜日)(本公開買付けの決済の開始日)
>(2)異動が生じる経緯
>(注)    公開買付者は平成26年3月期の有価証券報告書における連結財務諸表より、
>連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する指定国際会計基準(IFRS)を任意適用しており、
>IFRSにおける連結範囲の判定に基づき、平成29年2月9日(本公開買付期間の最終日)付で、
>当社を公開買付者の連結子会社と認識したとのことです。
>一方で、当社は、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(日本会計基準)に基づき連結財務諸表を作成しており、
>上記のとおり、平成29年2月15日(本公開買付けの決済の開始日)付で、公開買付者を当社の親会社として認識することになります。

公開買付者である三菱商事株式会社は、株式取得の効力発生日は「2017年2月9日(木)」であると主張している一方、
対象者である株式会社ローソンは、株式取得の効力発生日は公開買付の決済日である「2017年2月15日(水)」であると主張しています。
公開買付者である三菱商事株式会社は、「IFRSにおける連結範囲の判定」に基づき株式取得の効力発生日の判断をしている一方、
対象者である株式会社ローソンは、「日本の連結会計基準における規定」に基づき株式取得の効力発生日の判断をしているわけです。
公開買付における株式取得の効力発生日については、法理的な結論は「公開買付期間の最終日(成立日)」となろうかと思います。
つまり、「公開買付における株式取得の効力発生日は公開買付の決済日ではない」、が法理上の結論になると思います。
公開買付における株式取得の効力発生日については、今までは法律や法理の面からばかり考えていたわけですが、
このたびの事例では、それぞれが「適用している会計基準」の定めから株式取得の効力発生日を認識しているようです。
この点については会計基準から考えたことは今までなかったのですが、例えばIFRSにはその旨明示的な定めがあるようです。
公開買付における株式取得の効力発生日については、公開買付制度の根拠法である金融商品取引法には明示的な定めがないのですが、
連結財務諸表を作成する際に適用する会計基準の定めや考え方から類推することはできるな、と今日この事例を知って思いました。
ただ、より法理・法律的な観点から言えば、「株式取得の効力発生日」は「株主名簿の名義書換日」、と表現できると思います。
「いつ株主名簿の名義は応募株主から公開買付者へ変わるのか?」という点が、議決権行使の観点からも重要であろうと思います。
名義書換日については、適用する会計基準の定めから決まる話ではなく、会社法理から一意に決まるべき話であろうと思います。
実務的には、「対象者である株式会社ローソンが(つまり会社が)名義の書き換えに応じる」ということが必要になります。
株式会社ローソンが「株主名簿の名義書換日は成立日ではなく決済日である。」と主張する余地はないわけではないと思います。
「株式取得の効力発生日」すなわち「株主名簿の書換日」の認識については、法制度上、相違が生じないよう定めるべきでしょう。