2017年2月1日(水)
2017年2月1日(水)日本経済新聞
相続税対策の養子「有効」 最高裁初判断 縁組の意思 尊重
課税対象者増加 縁組関心高まる
(記事)
戦前の家の制度(旧民法)に関する過去のコメント
2017年1月23日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170123.html
【コメント】
相続税の節税のために、自分の孫を子として養子縁組をする親がいるそうです。
相続税を納付(負担)するのは相続人であり、被相続人ではないのですから、
養子縁組をすると言っても、このような養子縁組は一体誰のための節税策になるのかはよく分からない気がします。
現行の規定では、相続税の控除がありますので、相続におけるトータルの相続税額は養子縁組により削減できるとは思いますが、
各相続人(子1人1人)からすると、親が養子縁組を行った結果、税引後の相続財産額はかえって減少するわけです。
つまり、各相続人(子1人1人)からすると、養子縁組は行われない方が相続において有利である、と言えると思います。
記事中の図の「子」からすると、本来法定相続人ではない自分の子が養子縁組の結果自分と同じ法定相続人(自分の兄弟)になる、
ということになりますので、相続税の納付後で言えば、個人単位で見ると相続する財産額はかえって減少すると言えると思います。
他の言い方をすると、このような養子縁組の結果、税務当局の立場から見ると、納付されるべき相続税を節税された、
というふうに見えるのですが、各相続人の立場から見ると、
結局相続する財産額が減少してしまった(各相続人が納付する相続税額も減少しはするが)、ということになると思います。
ところで、戦前のように「長子相続制」であれば、この記事のような不毛な議論は絶対に起こらないだろうな、と思いました。
なぜなら、戦前の相続は「戸主の地位の承継」に過ぎなかったからです。
戦前の家の制度(旧民法)における「養子縁組」について改めて考えてみたのですが、
戦前の家の制度(旧民法)における「養子縁組」は、「家の制度」を鑑みれば、次のようになっていたであろうと思いました。
例によって、実際の旧民法の定めを調べて書いているのではなく、概念的にはこのような考え方になるはずだ、
と推察して書いているだけですので、正確ではない部分もあると思いますので、間違っている場合は御容赦いただきたいと思います。
まず、「養子縁組」を行うことができたのは、「戸主」だけであったであろうと思います。
「戸主」以外の者が「養子縁組」を行うことはできなかったと思います。
また、「養子縁組」により子となる(養子になることができる)のは、男だけであったと思います。
そして、「戸主」は、たとえ結婚をしていなくても「養子縁組」を行うことができたと思います。
つまり、その場合、「戸主」には妻はいないが子はいる(未婚の父とでも言いましょうか)、という状態になるわけです。
養子は、必ず将来の相続人になります。
「戸主」に実子(男)がいる場合は、「養子縁組」を行うことはできません。
これらの理由は、戸籍(一言で言えば「家」)を誰かに承継させる必要があったからです。
養子になることができるのは、戸籍外の男、ということになると思います。
養子は養方の血族と親族関係を新たに持つことになりますが、このため、
実方の血族との親族関係を失うことになります(つまり、養子は実方の戸籍から抜けることになる)。
養子は養親の家に入る(法律上の正式な長男になる)わけですから、当然に養親と同居する義務を負います。
それから、旧民法には、現行の民法にはない「婿養子縁組」という制度があった、という解説記事もネット上にはありますが、
旧民法にも「婿養子縁組」という制度はなかったと思います。
なぜならば、男が家に養子に来た時点で法律の上の子になるのですから、兄弟(兄と妹)で結婚をすることになるからです。
「婿養子縁組」がなかった理由は、「戸主」からすると、相続の上で、自分の娘(実子)が家(戸籍)にいる必要はないからです。
逆から言えば、「戸主」が娘(実子)に家を継がせようと考えるならば「婿養子縁組」という制度が必要だ、
ということいるわけですが、当時の家の制度では娘(実子)が「戸主」になることはなかったので、その必要性もなかったのです。
個人からではなく「家の制度」から相続(戸籍の承継や存続)を考えると、以上のような考え方になると思います。
旧民法の条文は全く調べていませんので間違っているかもしれませんが、「家の制度」の概念から論理を組み立てると、
以上のような「養子縁組」になる(「養子縁組」制度自体は「家の制度」を維持するためには絶対に必要だった)と思います。