2017年1月29日(日)
未来投資会議(首相官邸)
ttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/
過去の関連コメント
2017年1月25日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170125.html
【コメント】
現在上場企業は非常に多くの決算情報を開示しており、それらの決算情報は内容が非常に重複しているのが実情です。
記事よりますと、首相官邸で開催されている「未来投資会議」において、
これら重複している記載内容を整理して一体的に開示できる仕組みを検討している、とのことです。
大まかに言いますと、
有価証券報告書や四半期報告書 → 金融商品取引法に基づく情報開示
決算短信
→ 上場規則に基づく情報開示
事業報告や株主総会招集通知等 → 会社法に基づく情報開示
となろうかと思います。
事業報告や株主総会招集通知は、全ての株式会社に作成する義務がある書類というだけであり、
事業報告や株主総会招集通知というだけでは、会社法上は一般に開示する義務はない(株主等関係者のみに開示するだけ)のですが、
今は上場企業に関する議論をしていますので、ここでは敢えて文脈上「会社法に基づく情報開示」という区分を設けました。
いずれにせよ、非常に大まかに言えば、上場企業は、@有価証券報告書、A決算短信、B事業報告、
という3つの決算情報を開示しているわけですが、これら3つには非常に内容に重複が多いわけです。
「未来投資会議」では、その重複を整理しようと試みているわけです。
ただ、私個人の結論を言いますと、各決算情報にはそれぞれの目的があるのだから内容を整理するのにも本質的に限界がある、
となります。
それそれの目的を簡単にまとめすと、次のようになります。
有価証券報告書や四半期報告書 → 投資判断に資するため一般に開示するものであり、詳細さに最重点を置いた決算情報
決算短信
→ 投資判断に資するためという目的はあるものの、正確さよりも迅速さに最重点を置いた決算情報
事業報告や株主総会招集通知等 → 既存株主に対する経営結果の報告の目的と、
株式譲渡の際に株式購入検討時に株主が買い手側に見せる目的等があって作成される決算情報
B事業報告の位置付けだけが、@有価証券報告書やA決算短信とは異なるわけなのですが、それは当たり前のことなのです。
B事業報告は、率直に言えば、「受任者が委任者に対し委任された結果を報告するために作成する書類」に過ぎないからです。
B事業報告は、投資判断に資するため一般に開示することは何ら目的とはしていないわけです。
逆に、@有価証券報告書は、弊社はこのような会社です、と一般に公表するために作成・開示される書類です。
A決算短信は、決算情報の中でも、特に「財務諸表」(もしくはそれらのサマリー)のみの開示を目的とした書類と言えます。
A決算短信では、何よりも開示の迅速性が要求されます。
端的に言えば、「誰を対象にして作成した書類であるか?」が、これら3つの決算書類では全く異なるわけです。
@有価証券報告書とA決算短信は、市場の投資家はもちろん、社会人や学生なども含めた社会全般に対して開示されるものです。
一方、B事業報告は、明らかに「既存株主」を対象として作成される書類です。
理論上は、B事業報告は「既存株主」のみが閲覧する書類であると言っていい(第三者に開示する義務は会社にはない)のだ
と思いますが、株式譲渡の際は、「既存株主」が「このような会社なのだが。」と言って株式の買い手に見せることはあると思います。
理論上(会社法制度上・金融商品取引法制度上の本来的位置付け)の話をすると、
@有価証券報告書は、官報販売所に売ってあります(もちろん、誰でも買えます)し、
A決算短信は、お近くの証券会社の支店で見ることができます(株式の購入を検討しているのですがと言えば見せてくれるでしょう)が、
B事業報告(旧商法では「営業報告書」)だけは、買うことも見ることもできません。
B事業報告を見ることができるのは、「既存株主」(正確に言えば、決算期末日・基準日時点の株主)だけなのです。
現在では、インターネットが普及し、上場企業は自社のウェブサイトを持っていますので、
上場企業は自社のウェブサイト上で@有価証券報告書もA決算短信もB事業報告も任意に開示できる、
そして、市場の投資家や社会一般の人達もウェブサイトにアクセスしそれらの書類を任意に閲覧できる、というだけなのです。
ですので、以上の議論から明らかなように、@有価証券報告書とA決算短信とB事業報告の内容を整理・合理化しようと思っても、
本質的に限界や無理があるのです。
他の言い方をすると、@有価証券報告書は有価証券報告書で1つの書類として完結していなければなりませんし、
A決算短信は決算短信で1つの書類として完結していなければなりませんし、
B事業報告は事業報告で1つの書類として完結していなければならないのです。
さらに他の言い方をすると、理論上は、@有価証券報告書を見る人と、A決算短信を見る人と、
B事業報告を見る人は全部異なる、という前提で制度を構築しなければならないわけです。
投資家の投資方針として、俺はデイトレーダーだからA決算短信しか見ない(@有価証券報告書は見ない)、
という投資行動もあり得るわけです(証券制度構築上十分に想定される)。
もしくは逆に、投資家の投資方針として、俺は長期保有をする方針だから@有価証券報告書しか見ない(A決算短信は見ない)、
という投資行動もあり得るわけです(証券制度構築上十分に想定される)。
さらに言えば、投資家の投資方針として、俺はこの会社の創業者でありこの会社と一生を共にする(株式は絶対売らない)方針だから
B事業報告しか見ない(@有価証券報告書とA決算短信は見ない)、
という投資行動もあり得るわけです(このような株主の存在も証券制度構築上現実には想定される)。
つまり、閲覧者は、3つのうちどれか1つの書類を見るだけで、その人が必要とする全ての情報を入手できなくてはならないわけです。
@有価証券報告書もA決算短信もB事業報告も、見る義務があるものではないのです。
マーケティング戦略上、テレビCMの最後に「続きはWebで」とメッセージを流すのはよいのですが、
@有価証券報告書やB事業報告を見ていて、「この部分については既にA決算短信に記載していますので割愛します。
この部分についてはA決算短信をご覧下さい。」では困る(つまり、理論的におかしい)わけです。
「3つともインターネットで見れるじゃないか。」と考えるから、本質を間違えるのです。
「クリック(click)」から考えるのではなく、「モルタル(mortar)」から考えてみて下さい。
これら3つの書類の記載内容を整理・合理化することなど、本質的にできないと分かるはずです。
そういったことを考えますと、たとえ「上場会社法」を整備するということを考えましても、
理論的にはやはり、B事業報告と@有価証券報告書とを一本化することなど本質的に不可能なのではないかと思います。
私は中学校に入学してすぐに(中学1年生の4月に)、学校で「温故知新」という四字熟語を習いました。
「温故知新」という四字熟語が、私が中学校に入学して初めて学んだ四字熟語ではなかったかと思います。
まさに「温故知新」という言葉通り、旧制度について学びますと、現行の制度(もしくは新しい制度)のおかしさというものに
殊更に気が付くことがあり、皮肉なことに新旧の制度に関する理解が深まることがあります。
「以前はこのような制度になっていた。」、ということにはやはり合理的な理由があるように思うわけです。
かつては合理的な制度だったのにわざわざ改正してしまうと、今度は合理的ではない制度ができあがる、そう思いました。
今日のコメントを書いていて思ったのですが、これは英国法(英国の会社法制、証券法制)を調べて書いているのではありませんが、
おそらく英国には「上場会社法」が整備されていると思います。
そう考えないと英国の証券制度の整合性が取れないのです。
英国には「上場会社法」が整備されていると考えると英国の証券制度と辻褄が合うのです。
今日私が書きましたコメントを引用すれば、英国の「上場会社法」では、
俺はこの会社の創業者でありこの会社と一生を共にする(株式は絶対売らない)方針だから日本で言うB事業報告しか見ない、
という投資家(創業者株主)はいない(だから事業報告は作成しない)、ということが理論的前提となっていると思います。
つまり、英国の「上場会社法」では、日本で言う有価証券報告書しか見ない投資家しかない(株主・投資家が一様)、
ということが理論的前提となっていると思います。
というより、いざ「上場会社法」を整備するとなりますと、
日本で言う有価証券報告書しか見ない投資家しかない(株主・投資家が一様)、
という理論的前提を置いて法を構築することになりますので、
英国の証券制度を見るとそうなっているに違いないとコメントを書いていてピンときました。
英国の証券制度がこうなっているんだったら英国では「上場会社法」が整備されているに違いない、とピンときたわけです。
英国の証券制度についてはインターネットで調べたりして以前から少しだけ知っていました。
英国の証券制度については、スキーム・オブ・アレンジメントなどを題材に私自身コメントを書いたこともあるかと思います。
「英国の証券制度」の方から、「英国の会社法制度」(株式会社法とは別に上場会社法が整備されていること)が推測できた、
ということになったわけです。
日本と英国とで証券制度が異なっているということは、日本と英国とで会社法制度も異なっているはずだ、
と今日コメントを書いていて分かった(気付いた、ピンときた)のです。
Though information which a company discloses on the basis of laws and
regulations is various,
a receiver of the information is conceptually
one.
But, the purpose of the respective receivers is still various.
I must
correct what I have just said a bit.
The fact that "a receiver of the
information is conceptually one" is
a theory of the securities system in the
United Kingdom.
To put it simply, shareholders of a listed company in the
United Kingdom are universal (in theory).
The other way around, shareholders
of a listed company in Japan are various (in reality).
In other words, an
investor of a listed company in Japan has his own purpose and his own investment
policy.
会社は法令や規則に基づき様々な情報を開示しますが、その情報の受領者というのは概念的には1人なのです。
しかし、各情報受領者の目的は、やはり多種多様なのです。
前言を少し訂正しなければなりません。
「情報の受領者というのは概念的には1人」なのは、英国における証券制度の理論です。
簡単に言えば、(理論上は)英国の上場企業の株主は一様なのです。
逆に、(現実は)日本の上場企業の株主は個々別々なのです。
他の言い方をすれば、日本における上場企業の投資家には、それぞれの目的がありますし、それぞれの投資方針があるのです。