2017年1月9日(月)



2016年4月29日(金)日本経済新聞 公告
転換価額調整公告
株式会社九電工
(記事)



2016年4月28日
株式会社九電工
転換社債型新株予約権付社債の転換価額の調整に関するお知らせ
ttp://www.kyudenko.co.jp/ir/docs/h28_info_20160428_05.pdf

>3. 調整事由
>平成28 年4月28 日開催の取締役会において決議された剰余金の配当が、第2回無担保転換社債型新株予約権付社債の
>社債要項に定める「特別配当」に該当したことに伴い、社債要項の転換価額調整条項に従い、当該転換価額を調整するものです。

 


2015年2月26日
株式会社九電工
第2回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行について
ttp://www.kyudenko.co.jp/ir/docs/150226%EF%BE%91%EF%BE%80%EF%BE%9D%EF%BE%8E%EF%BE%9F.pdf


2015年3月9日
株式会社九電工
第2回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行条件等の決定に関するお知らせ
ttp://www.kyudenko.co.jp/ir/docs/150309_Pj%2070%EF%BE%98%EF%BE%98%EF%BD%B0%EF%BD%BDsent_final%5B1%5D.pdf

 


過去の関連コメント

2017年1月8日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170108.html

 


【コメント】
転換社債型新株予約権付社債の転換価額の調整に関して一言だけコメントします。
「第2回無担保転換社債型新株予約権付社債」の転換価額が、「1,832円」から「1,820円80銭」に引き下げられる、とのことですが、
その理由について、プレスリリースには、会社が配当を行うからである、と書かれています。
そもそも転換価額に絶対的な基準はありません。
したがって、配当の結果利益剰余金が減少したことに伴い、転換価額を引き下げることは何ら間違いではありません。
むしろ、「資本の簿価」の観点から見れば、転換価額を引き下げる方が理論的には正しいと言えるでしょう。
ただ、上場企業の場合は、その時の市場株価が株式の価値を表すという考え方をします。
ですので、上場企業の場合は、たとえ配当の結果利益剰余金が減少したとしても、
転換価額を引き下げることにはあまり理論的根拠はないと思います。
社債部分そのものは確かに「簿価」(その時に、新たに社債を引き受けるわけでもなければ新たに現金を払い込むわけでもない)
が基準になります(すなわち、社債を時価で捉える・社債を時価で捉え直すことはしない)が、
新株予約権者は権利行使の結果、あくまで株式を取得するわけです。
そして、株式には市場株価という時価があるわけです(そして、時価に応じた転換価額であるべき、という考え方になるでしょう)。
転換価額を修正するのならば、上場企業の場合は、「資本の簿価」ではなく市場株価を基準に修正を行うべきなのです。
何を言いたいのか分かりづらいかもしれませんが、転換価額とは、新株予約権単体で言えば、「権利行使価額」ということです。
すなわち、転換価額を引き下げるということは権利行使価額を引き下げるということであり、
それは新株予約権者が権利行使に際し会社に払い込む現金額を引き下げる、ということです。
新株予約権付社債の場合は、たまたま新株予約権者は権利行使に際し会社に現金を払い込まなくてよいだけなのです。
つまり、転換価額を引き下げるということは、新株予約権者が権利行使に際し会社に払い込む現金額を引き下げる、
ということと同じであるわけですから、それは「社債を時価で捉え直す」ということと同じだ、と思ったわけです。
ただ、先ほども書きましたように、「社債を時価で捉え直す」という考え方はしない(簿価・元本金額に変動はない)わけですから、
「何を基準に転換価額を引き下げるのか?」という論点がここでは殊更に重要だと思ったのです。
概念的に言えば「新株予約権者が権利行使に際し会社に払い込む合計の現金額はもはや変動しない」という中で、
「株式の価値が減少した」という事象を転換価額に織り込みたい・転換価額により修正したい、
という思惑が会社にはあるという状況だ、と言えるわけです。
ではこの場合、「株式の価値が減少した」とはどのような状態を指すのでしょうか。
株式会社九電工は上場企業ですから、「株式の価値が減少した」とは「市場株価が下落した」ということではないでしょうか。
上場企業の場合は、「利益剰余金が減少した」は「株式の価値が減少した」とは言わないのです。
例えば、元来的には、たとえ上場企業が財務諸表上は財務超過であっても、全く上場廃止事由には当たらないのです。
債務超過であっても、上場企業の株式にはれっきとした価値がある(と理論的には考える)のです。
そして、その株式の価値は、市場で決まるのです。
ですので、上場企業の場合は、「利益剰余金が減少した」(配当を支払った)は転換価額を引き下げる理由にはならないのです。
ただし、非上場企業の場合は、「利益剰余金が減少した」(配当を支払った)は転換価額を引き下げる理由になります。
非上場企業の場合でも、所有資産の状況や業績予想や将来性を勘案すれば、「利益剰余金が減少した」(配当を支払った)が
転換価額を引き下げる理由にならない場面もあろうかと思います(それはまさにケース・バイ・ケースだと思います)が、
「株式の価値を第一義的には何を基準に見るのか?」が上場企業と非上場企業とでは大きく異なるのだけは確かであろうと思います。
上場企業の場合は、非上場企業と比較して、株式の価値を殊更に「市場株価」で判断しなければならない、が理論上の答えなのです。

 



それから、「新株予約権付社債」を題材に、昨日のコメントに一言だけ追記をします。
昨日のコメントで、新株予約権と自己株式の取り扱い方法の新旧の相違点を挙げる形で、
現行の会社法の規定では、「新株予約権が行使された場合、会社が新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできる。」が、
旧商法の規定では、「新株予約権が行使された場合、会社は新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできない。」、
と書きました。
それで、今日は、同じ論点に関し「新株予約権付社債」について考えたいと思います。
今日の論点を一言で言えば、
「新株予約権付社債が転換された場合、会社が新株予約権者(社債保有者)に所有する自己株式を交付することはできるのか?」
となります。
この問いに関しては、結局のところ、新株予約権そのものの取り扱い方法がそのまま当てはまることになると思います。
その理由は、「新株予約権付社債」は「新株予約権」の応用バージョンに過ぎない(むしろ同じ取り扱いになる)からです。
旧商法が、そして、現行の会社法が、理論に従って定められているならば、

旧商法
→「新株予約権付社債が転換された場合、会社が新株予約権者(社債保有者)に所有する自己株式を交付することはできない。」

現行の会社法
→「新株予約権付社債が転換された場合、会社が新株予約権者(社債保有者)に所有する自己株式を交付することはできる。」

となろうかと思います。

 


仮に、旧商法において、新株予約権付社債が転換された場合に会社が新株予約権者(社債保有者)に所有する自己株式を
交付するとしますと、会社には自己株式売却損益(損益取引)が計上されようかと思います。
仕訳で書けば次のような仕訳になると考えられます。

(新株予約権付社債) xxx / (自己株式) xxx
                        (自己株式売却損益) xxx

ただ、上記の仕訳は、現行の会社法の規定を応用する形で私が独自に考え出した仕訳です。
旧商法上は、そのような取引(自己株式の交付)自体が想定(規定)されていないため、旧商法は次の仕訳になると思います。

(新株予約権付社債) xxx / (債務免除益) xxx
(自己株式譲渡損) xxx      (自己株式) xxx
                
この仕訳はもはや「新株予約権付社債の転換」とは言えないわけですが、旧商法では取引自体を想定していないため、
旧商法の規定上結果的に、新株予約権付社債の消滅(債務免除)と所有資産(自己株式)の無償譲渡、
という2つ取引を組み合わせたものになります。
新株予約権者(社債保有者)は、結果、社債を放棄し株式を無償取得した、という取り扱いになります。
端的に言えば、物々交換(無償譲渡と無償取得)になるのか価額が引き継がれる取引になるのかは、
一言で言えばその旨法に規定があるか否かで決まる、ということになるわけです。
法に規定がない場合は、当事者(会社と新株予約権者)が想定した取引を行えない、ということになるわけです。
現行の会社法の規定と同じ取引を仮に旧商法で行ったとしたらこうなる、ということで書いてみました。

 


ところで、これは新株予約権そのものにもそのまま当てはまる論点になりますが、現行の会社法において、
新株予約権付社債が転換された場合に会社が新株予約権者(社債保有者)に対し、
@所有する自己株式を交付する場合と、A新株式を発行して交付する場合とで財務上根本的に異なると言える点があります。
それは、一言で言えば「分配可能額」です。
結論を端的に言えば、「@所有する自己株式を交付する場合」は、結果「分配可能額」が増加します。
しかし、「A新株式を発行して交付する場合」は、何ら「分配可能額」が増加しません。
このこと(会計事象)はあること(悪く言えばある矛盾)を示唆しているのでしょう。
昨日は、

>現行の会社法では、自己株式は「マイナスの新株式」、
>自己株式の取得は「マイナスの資金調達」(ただし、場合によっては「株主への利益還元」)、というふうに整理されています。

と書きましたが、自己株式の取得は「マイナスの資金調達」よりも「株主への利益還元」の側面が強いと言えるのかもしれません。
悪く言えば、自己株式を処分して資金調達をしたら「分配可能額」が増加した、というのは全く意味不明である、
と言わねばならないでしょう。
なぜなrば、資金調達をしたというだけでは、利益は増加しないはずだからです。
率直に言えば、自己株式そのものが矛盾の根源なのです。
自己株式は取得し次第消却するようにすれば、この矛盾はまだ小さいのかもしれませんが。

Formerly, converting a bond with share options will inevitably increase the number of shares issued.

かつては、新株予約権付社債を転換すると、発行済株式総数は必ず増加したものです。