2017年1月8日(日)



2016年12月15日(木)日本経済新聞 公告
自己株式の処分に関する取締役会決議公告
株式会社稲葉製作所
(記事)




2016年12月14日
株式会社稲葉製作所
投資家情報第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ
ttp://www.inaba-ss.co.jp/lsc/lsc-upfile/irtimely/00/17/17_8_file.pdf

 


過去の関連コメント

2017年1月7日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170107.html

 



【コメント】
昨日のコメントに一言だけ追記をします。
紹介している公告とプレスリリースは、自己株式の処分に関する内容になるのですが、昨日のコメントでは、

>2016年12月19日のプレスリリースや記事では、新株予約権を間違えているのだと思います。
>そもそも、新株予約権というのは会社が発行する新株式を新株予約権者が引き受ける権利のことです。
>発行済みの株式を他者から取得する約束をしている場合には、新株予約権を取得した、とは決して言わないのです。

と書いたかと思います。
これらのことを踏まえて一言だけコメントを書きたいのですが、今日書きたい論点というのは、
「新株予約権が行使された場合、会社は新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできるのか?」、という点になります。
まず最初に現行の会社法の規定について理解するため、会社法の教科書から解説を引用したいと思います。

>新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより、その株式会社の株式の交付を受けることができる権利である(2条21号)。
>会社は、新株予約権を発行することができる。
>新株予約権者が新株予約権を行使した場合には、会社は新株予約権を行使した場合には、
>会社は新株予約権者に対して株式を発行することもできるし、会社の有する自己株式(代用株式)を移転することもできる。

と書かれています。
結論だけ言いますと、現行の会社法の規定では、
「新株予約権が行使された場合、会社が新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできる。」、となります。

 



わざわざ先ほどのような疑問を呈した理由というのは、私は今まで漠然と、
「新株予約権が行使された場合、会社は新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできない。」と思っていたからです。
別の視点から言えば、「新株予約権が行使されると、会社の発行済株式総数は必ず増加する。」と私は今まで思っていました。
結論だけ言えば、私が今まで考えていたことは間違いであったわけです。
現行の会社法は、「会社が所有する自己株式は発行する新株式と全く同じである。」、と考えているということなのだと思います。
確かに、改めてよくよく考えてみますと、
現行の会社法の自己株式の捉え方では、その取り扱い方法で何の問題もないと今回思いました。
ただ、旧商法(2001年から2005年まで)における自己株式の捉え方では、先ほどの私の勘違いが実は正しかった、となると思います。、
つまり、旧商法では、新株予約権が行使された場合、会社は新株予約権者に所有する自己株式を交付することはできなかったのです。
この理由を一言で言えば、旧商法においては、会社が所有している自己株式は文字通り会社の財産(資産勘定)だったからです。
仮に、旧商法において、新株予約権が行使された場合に会社が新株予約権者に所有する自己株式を交付するとしますと、
一言で言えば、自己株式の交付の結果、会社に自己株式売却損益が計上されてしまう(損益取引になる)ことになるのです。
損益取引になってもよいのではないかという考え方もあるかもしれませんが、やはりそれは概念的におかしいと思います。
結局のところ、会社が新株予約権を発行する理由というのは元来的には「資金調達」である、
と理解するべきなのだと思います。
英語・カタカナで言えば、「finance、ファイナンス」が新株予約権を発行する元来的な目的である、
と考えなければならないのだと思います。
会社は資金調達を目的に新株式を発行することを考えているのだが、
会社が発行するその新株式を優先的に引き受けることができる権利を表象するのが、
他ならぬ「新株予約権」(旧名称は「新株引受権」)なのだと思います。
旧名称の方が事の本質をより良く表していると思います。
現在では、新株予約権が非常に様々な目的(取締役や従業員への報酬等)に使われていますので、
その本質・元来的な目的が見えづらくなっているだけなのだと思います。
そもそもの話をすれば、会社が新株式を発行する目的というのは資金調達しかないわけです。
1円で新株式を発行して交付しますので市場で売って売却益を得て下さい、などという株式発行は本来ないはずなのです。
以上のことを踏まえますと、新株予約権が行使されたら会社に売却損益が計上される、というのは根本的に話がおかしいわけです。
会社が他者に対しある所有財産を将来の期日に譲渡するという資産譲渡契約を締結することは商取引上当然あるわけですが、
それはあくまで資産譲渡契約というだけのことであり、それ以上でもそれ以下でもないわけです。
元来的な新株予約権の考え方とは根本的に異なる話であると考えなければならないわけです。
以上の話は旧商法での新株予約権と自己株式に関する取り扱いであり、現行の会社法では、自己株式は「マイナスの新株式」、
自己株式の取得は「マイナスの資金調達」(ただし、場合によっては「株主への利益還元」)、というふうに整理されています。
ですので、現在では、現行の会社法の規定通り、「会社の有する自己株式(代用株式)を移転することはできる。」となるのです。

 

Formerly, exercising a share option will inevitably increase the number of shares issued.

かつては、新株予約権を行使すると、発行済株式総数は必ず増加したものです。