2017年1月7日(土)



2017年1月5日(木)日本経済新聞
中国商務省がキャノンに罰金 買収巡り500万円
(記事)




2016年3月17日
キヤノン株式会社
東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ttp://www.canon.co.jp/ir/release/2016/p2016mar17j.pdf

 

2016年12月19日
キヤノン株式会社
東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ttp://www.canon.co.jp/ir/release/2016/p2016dec19j.pdf

 


過去の関連コメント

2016年3月17日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160317.html

 



【コメント】
キヤノン株式会社による東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)については
2016年3月17日(木) にコメントを書いていますので、参考にしていただければと思います。
ただ、2017年1月5日(木)付けの日本経済新聞を読んで、それは初めて聞いたぞという話が書かれていました。
2016年3月17日にキヤノン株式会社が発表した「東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
には、今後の「異動の日程」として

>普通株式取得日 未定

と書かれています。
日程が未定である理由は、東芝メディカルシステムズ株式会社の普通株式の取得のために必要となるクリアランスを
所要の競争法規制当局から得られ次第、取得する計画となっていたからです。
その後、2016年12月19日にキヤノン株式会社が発表した
「東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」には、

>キヤノン株式会社(以下「キヤノン」)は、東芝メディカルシステムズ株式会社(以下「TMSC」)の株式取得について、
>所要の競争法規制当局のクリアランス取得が完了したため、株式会社東芝との2016 年3 月17 日付株式等譲渡契約書に基づき
>取得した新株予約権を行使してTMSC の株式を取得し、TMSC を子会社化することを本日開催した取締役会で決議いたしました

と書かれています。
東芝メディカルシステムズ株式会社の普通株式の取得に関連し、キヤノン株式会社は新株予約権を取得した、
という話は今回初めて知りました。
2016年3月17日のプレスリリースにはそのようなことは一言も書かれていませんし、
他の関連記事でも新株予約権の話は書かれていなかったように思います。
この点について結論を言いますと、2016年12月19日のプレスリリースや記事では、新株予約権を間違えているのだと思います。
そもそも、新株予約権というのは会社が発行する新株式を新株予約権者が引き受ける権利のことです。
発行済みの株式を他者から取得する約束をしている場合には、新株予約権を取得した、とは決して言わないのです。

 


これまでも何回か書きましたように、
キヤノン株式会社による東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得(子会社化)については
明らかにおかしな会計処理が行われている(行われている取引・採られている手法自体が取引としておかしい)と思います。
東芝株式会社はキヤノン株式会社から2016年3月17日(木) に株式の対価(現金)を受け取った、ということですが、
株式の譲渡自体はまだである以上、対価(現金)を受け取っただけでは東芝株式会社は株式売却益を計上できないのです。
2016年3月17日のコメントでは、対価については、株式を実際に譲渡するまでは「仮受金」勘定で処理するべきだ、と書きました。
今後所定の期日に株式を譲渡する契約になっているのだから、
対価を受け取ったのであれば株式売却益を計上してもよいのではないか、という考えるのは間違いなのです。
引き渡す株式には金銭的な価額がありますが、株式引渡しの義務には金銭的な価額はないのです。
このことは株式を取得する契約になっているキヤノン株式会社にとっても同じことであり、
株式取得の対価を支払ったというだけでは、株式の取得にはなりません(貸借対照表に株式勘定はまだ計上されない)。
たとえ株式の対価を支払ったのだとしても、言わば”株式取得権”勘定を用いて支払った対価を会計処理することはできません。
”株式取得権”勘定というのは私の造語ですが。
2016年3月17日のコメントで書きましたように、
キヤノン株式会社側の会計処理については「前払金」勘定を用いるしかないのです。
一般論として、「新株予約権だけでは支配権取得には当たらない」(新株予約権を所有していても議決権はない)のは確かですが、
このたびの事例ではそもそも新株予約権は全く関係がない(TMSCは新株予約権など発行していない)という点には注意が必要です。
プレスリリースと記事の内容を踏まえますと、
キヤノン株式会社は対価を支払い新株予約権を取得した、
そして権利行使の結果、その取得価額はTMSC株式の取得価額を現在構成している、
と言いたいようですが、一言で言えばそれは間違いなのです。

 


It is a company that issues a share option.
Neither a shareholder nor an invwestor can issue a share option.

新株予約権を発行するのは会社なのです。
株主も投資家も新株予約権を発行することはできないのです。

 


In case an investor (a buyer) pays some amount of cash to a shareholder (a seller)
for the purpose of acquiring shares in the future,
does the amount which the investor paid to the shareholder compose an acquisition value of the shares?

投資家(買い手)が株主(売り手)に対し、将来に株式を取得することを目的としてある金額の現金を支払うという場合、
投資家が株主に支払ったその金額は株式の取得価額を構成するでしょうか?

 


It is the amount of cash which a shareholder pays in a company "as at the issue" of shares
that is the increase of a capital.
The amount of cash which a shareholder pays in a company "before the issue" of shares
doesn't compose the increase of a capital.

株式の「発行時に」株主が会社に払い込む現金の金額が資本金の増加額なのです。
株式の「発行前に」株主が会社に払い込む現金の金額は、資本金の増加額を構成しないのです。

 


It means that, from a standpoint of the other's, an acquisition value of a share option
doesn't compose an acqusition value of a share.

つまり、もう一方の立場から言えば、新株予約権の取得価額は株式の取得価額を構成しない、ということです。