2016年12月30日(金)



昨日のコメントに一言だけ追記をします。

2016年12月29日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161229.html

まず、語句が抜け落ちていましたので訂正をしたいのですが、昨日のコメントで、

>その理由は、法は公開買付者が所有株式を公開買付にすることを想定している(法はそのことを容認している)からでもなく、

と書きましたが、「応募」という語句が抜けていましたので、次のように訂正します。

その理由は、法は公開買付者が所有株式を公開買付に応募することを想定している(法はそのことを容認している)からでもなく、

 



それから、昨日は、公開買付者が所有株式を公開買付に応募した結果公開買付への応募数が十分な数に達した場合の問題点として、

>実際には公開買付は成立していないにも関わらず、
>公開買付が成立したと虚偽の公表・開示を行った(そして不成立にも関わらず決済代金を応募株主に支払った)、という解釈になる
>と思います(その場合の金融商品取引法上の罰則については今日は触れませんが(何も規定はないかもしれません))。

と書きました。
公開買付制度において、応募株主に決済代金を支払うのは公開買付代理人が排他的に担っている業務ということになりますので、
端的に言えば、本当に公正に公開買付が成立したかどうかを判断するのは公開買付代理人ということになると思います。
つまり、たとえ公開買付者が所有株式を公開買付に応募しても、公開買付者が応募した対象者株式は応募株式数には含まれない、
と判断するのは公開買付者ではなく公開買付代理人であるわけです。
判断と言っても、独自の判断をするのではなく、昨日書きましたように、明文の規定はなくても金融商品取引法上の解釈として、
当然に「公開買付者は所有株式を公開買付に応募できない。」という考え方をする、という意味ですが。
要するに、公開買付の成立・不成立を判定するのは公開買付者ではなく排他的に公開買付代理人だ、ということです。
したがって、実際には公開買付は成立していないにも関わらず公開買付が成立したと公開買付者が虚偽の公表・開示を行う、
ということはあり得ないと言っていいわけです。
なぜなら、公開買付は不成立に終わったと公開買付代理人が判定する場合は、
公開買付代理人は応募株主に決済代金を支払わないからです(したがって、公開買付者は対象者株式を買付・取得できない)。
公開買付代理人は、その意味において公開買付者から完全に独立している(独立していなければならない)、と言えるでしょう。
公開買付代理人は公開買付の判定者・審判と言っていいと思います。
スポーツと同じで、審判に文句を言った方の負けであるわけです。
その意味において、公開買付代理人は国が指定する(代理人としての報酬金額も国が指定する)、という考え方もあると思います。
公開買付代理人が判定を間違う(決済代金を支払ってはならないのに支払った等)ということは、
理論的には起こらないと考えるべきでしょう。

 


それで、今日書きたいことというのは、公開買付者や公開買付代理人の勘違いや誤りに関してではなく、
「公開買付が不成立に終わった場合に応募株主に決済代金を支払うことは金融商品取引法上認められるのか否か?」という点です。
端的に言えば、公開買付が不成立に終わった場合は、公開買付代理人は応募株主に決済代金を支払わないわけです。
ところが、例えば、公開買付者としては、当初は「買付予定数の下限」を設定し応募株式数が下限に達しない場合は
応募株式の全部を買い付けない方針であったのだが、買付期間中に状況が変化(対抗的買収者が現れた等)したので、、
公開買付自体は不成立に終わったものの、応募をしたということは応募株主は公開買付者に株式を買い取ってもらいたい
という意向を持っているということなのだから、応募株主に決済代金を支払い対象者株式を買付・取得したいと思っている、
というような場合はどうでしょうか。
公開買付において一番に考えなければならないことというのは、投資家保護であろうと思うのですが、
たとえ公開買付は不成立に終わったのだとしても、公開買付者が応募株式を買い付けること自体は投資家の利益に資する、
という考え方はあるのではないかと思ったのです。
公開買付の趣旨の1つは、公開買付が不成立に終わった場合は公開買付者は応募株式を買い付けなくてよい、
ということではないかと思ったのです。
つまり、投資家保護の観点のみから言えば、公開買付者は応募があった株式を成否に関わらず全て買い付けるべきだ、
という考え方になるところ、公開買付者に有利な株式取得制度とするために、
公開買付が不成立に終わった場合には公開買付者は応募株式を買い付けなくてよいとする(買付免除)規定を置いているだけだ、
という見方ができないだろうかと思ったわけです。
この見方から言えば、「公開買付が不成立に終わった場合に応募株主に決済代金を支払うことは自由だ。」、となるでしょう。
なぜなら、そちらの方が投資家保護の観点に適うと考えられるからです。
確かに、支配株主が誕生するということなら株式を売ってしまおうと考え公開買付に応募したのだが、
結局支配株主が誕生しないのなら引き続き株主のままでいたい、と考える投資家も中にはいるでしょうから、
不成立だったのなら決済はできないはずだ(決済はしない方が投資家保護に資する)、という考え方も一方にはあると思います。
また、十分な応募がなかったというのも1つの株主の意思であるわけですから、
決済を行うか否かは成立・不成立1本で判定するべき、という考え方はやはりあると思います(これが最も理論的だとは思います。
ただ、応募をしなかった株主や応募を解除した株主は株式の買い取りを希望していなかった一方、
終了日まで応募を解除しなかった株主というのは株式の買い取りを大なり小なり希望していた(少なくとも買付価格には納得した)、
という言い方はできるのではないかと思います。
少なくとも、公開買付が不成立に終わった場合に公開買付者が応募株式を買い付けても、
応募株主を差別的に取扱っているということにならない(応募株主を平等に取扱っていることになる)ことだけは確かでしょう。
絶対的な答えはないのかもしれませんが、不成立に終わったのなら応募株式は買い付けないで欲しい(応募株式は返還して欲しい)
と考える投資家は現実にはあまりいないように思います(買付価格で買い取ってもらった方が自分に有利だと投資家は判断したから)。
逆から言えば、仮に公開買付が成立なら支配株主が誕生するとしても、その買付価格に納得をしていないのならば、
株主はその公開買付に応募をしないという判断ができる、ということになるわけです。
公開買付に応募をしないならば所有株式が買い付けられることは絶対にありませんが、
公開買付に応募を行う場合は所有株式が買い付けられる可能性が必ず生じるわけです。
そのことを鑑みますと、成立の結果支配株主が誕生するか否かは応募株主にとって相対的に影響が小さいように思うわけです。
結局、公開買付が成立するのか成立しないのかは応募株主には事前には分からないわけですから、
その買付価格で所有株式が買い付けられることを前提に(覚悟、心の準備をして)株主は公開買付に応募をするわけです。
そういった株主の心理状況まで鑑みますと、不成立の場合に応募株式を買い付けることは投資家の利益に結果資する、と思いました。