2016年12月24日(土)



2016年4月28日(木)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
理研ビタミン株式会社
(記事)




2016年5月10日(火)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社レッグス
(記事)


2016年5月26日(木)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社メニコン
(記事)


 

公開買付における「買付予定数」の設定に関する過去のコメント

2016年12月22日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161222.html

 


2016年4月27日
理研ビタミン株式会社
自己株式の取得及び自己株式の公開買付け並びに資金の借入れに関するお知らせ
ttp://www.rikenvitamin.jp/profile/ir/160427_03.pdf


2016年6月1日
理研ビタミン株式会社
自己株式の公開買付けの結果及び取得終了並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ
ttp://www.rikenvitamin.jp/profile/ir/160601.pdf


2016年6月24日
理研ビタミン株式会社
自己株式の消却及び別途積立金の取崩しに関するお知らせ
ttp://www.rikenvitamin.jp/profile/ir/160624_02.pdf

 


2016年5月9日
株式会社レッグス
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.legs.co.jp/ir/ir_news/pdf/20160509_2.pdf


2016年6月7日
株式会社レッグス
自己株式の公開買付けの結果及び取得終了に関するお知らせ
ttp://www.legs.co.jp/ir/ir_news/pdf/20160607_1.pdf

 

2016年5月25日
株式会社メニコン
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08353/2b0682bd/b253/4f66/bef0/b8ae5416b301/140120160525499393.pdf


2016年6月23日
株式会社メニコン
自己株式の公開買付けの結果及び取得終了に関するお知らせ
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08353/76e5de00/9a89/4cf0/ad51/23dc92b8aeee/140120160622431121.pdf

 


【コメント】
2016年12月22日(木) に、三菱商事株式会社による株式会社ローソン株式に対する公開買付についてコメントしました。
三菱商事株式会社は、このたびの公開買付において、正しくは「買付予定数の下限」を設定しなければならなかったのに、
間違えて「買付予定数の上限」を設定してしまっていた、という点についてコメントを書いたわけです。
この時のコメントで、「買付予定数に上限や下限を設定しないのならば、公開買付制度を活用する意味がない。」と書いたわけです。
端的に言えば、応募数が不十分な場合は全部の買い付けを行わなくてよい、というのが公開買付制度の特長であり、
また、応募が極めて多くても設定した株式数以上は買い付けを行わなくてよい、というのが公開買付制度の特長であるわけです。
買付予定数に上限や下限を設定しないのならば、これら公開買付制度の特長を全く活用できていないことになるわけです。
それで、今日改めて他の公開買付の事例を何例かざっと見ていましたところ、
「買付予定数の下限」も「買付予定数の上限」も設定していない事例があることに気付きました。
もちろん、「買付予定数の下限」や「買付予定数の上限」を設定するか否かはケースバイケースであり、
まさに「公開買付を行う目的」に応じて適切に設定すればそれでよいわけなのですが、
三菱商事株式会社が根本的に間違っていただけに、他の公開買付の事例ではどうだろうかと気になっているところです。
それで、今日は、1つの事例ということで、「自己株式の公開買付」における買付予定数の設定について、
一言だけコメントを書きたいと思います。
紹介している3つの「公開買付開始公告についてのお知らせ」は全て「自己株式の公開買付」になります。
3社ともパターン(プレスリリースの文言等)は似ていますので、
今日は特に理研ビタミン株式会社の事例を題材にしてコメントを書きたいと思います。
まず、各プレスリリースから「買付予定数」についての記述をキャプチャーして紹介します。


「自己株式の取得及び自己株式の公開買付け並びに資金の借入れに関するお知らせ」
3. 買付け等の概要
(4)買付予定の株券等の数
(6/10ページ)


「自己株式の公開買付けの結果及び取得終了並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」
2. 買付け等の結果
(1) 買付け等を行った株券等の数
(3/6ページ)

 



まず、「買付予定数」の設定についてなのですが、
「通常の公開買付」と「自己株式の公開買付」とで買付予定数の設定方法(文言や様式)が異なっているようです。
「通常の公開買付」の場合は、「買付予定数」と「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」の3つを設定するのですが、
「自己株式の公開買付」の場合は、「買付予定数」と「超過予定数」の2つを設定するようです。
「自己株式の公開買付」の場合は、「通常の公開買付」とは異なり、必ず応募があった株式の全部の買付けを行わなければならない、
という考え方(規定)になっているようです。
すなわち、「自己株式の公開買付」の場合は、「買付予定数の下限」が設定できないようです。
そして、「自己株式の公開買付」の場合は、「買付予定数」に加え、「超過予定数」と呼ばれる閾値が設定できるようです。
この「超過予定数」というのは、「通常の公開買付」における「買付予定数の上限」と同じ意味合いではないかと思います。
正確に言えば、、「買付予定数」と「超過予定数」の合計株式数が「通常の公開買付」における「買付予定数の上限」と同じ意味、
ということになるのだと思います。
「超過予定数」を設定しない場合は、「買付予定数」が
そのまま「通常の公開買付」における「買付予定数の上限」と同じ意味になるのだと思います。
すなわち、「買付予定数」という文言の意味が、
「通常の公開買付」と「自己株式の公開買付」とで根本的に異なる、ということになるわけです。
それはイコール、「通常の公開買付」と「自己株式の公開買付」とで「買付予定数」(上限と下限を含む)の設定方法が
根本的に異なる、ということです。
「自己株式の公開買付」の場合は「買付予定数の下限」が設定できない、というのが実務上の最大の相違点であると言えるでしょう。
この相違の背景には、「通常の公開買付」は一定規模の議決権を取得する(支配権の獲得等)ということが普遍的な目的である一方、
「自己株式の公開買付」は何ら議決権の取得を目的にしたものではない(敢えて言うなら株主への利益還元の側面がある)、
という相違があると思います。
すなわち、「通常の公開買付」の場合は、取得できる議決権割合が一定規模に達さない場合は、
公開買付を行った意味がないわけであるから、応募が「買付予定数の下限」に達しない場合は全部の買付を行わなくてよい、
という考え方になる一方、
「自己株式の公開買付」の場合は、「これだけの応募がなければ株式の取得を行った意味がない」と考えられる閾値は
全くないのだから、「買付予定数の下限」に相当する概念・設定もない(応募のあった株式の全部を買い付けなければならない)、
という考え方になるのだと思います。

 



2016年12月22日(木) のコメントでは、「『買付予定数の下限』を設定しない公開買付は制度の趣旨を鑑みれば考えられない。」、
と書きました。
例えば、議決権の30%だけ取得したいと公開買付者が考えた時は、「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」を30%に設定する、
というだけのことであるわけです。
ここで「買付予定数の下限」を設定しないとなりますと、応募が少ない場合、例えば5%や10%だけの取得で終わってしまうわけです。
その取得には何らの意味もありませんので、公開買付の際は「買付予定数の下限」を必ず設定するわけです。
「買付予定数の上限」は、設定する場合もあれば設定しない場合(全株式の取得が目的の場合)もあるでしょう。
それほどまでに、「買付予定数の下限」を設定することは公開買付において極めて本質的だと思います。
「自己株式の公開買付」の場合は「買付予定数の下限」が設定できないわけですが、
その理由は「会社はまとめて(一定額以上)利益還元をしなければならないわけではないからだ」、と説明付けられると思います。
また、「自己株式の公開買付」の場合には、絶対的に「買付予定数の上限」に相当する概念・設定が必要です。
なぜなら、公開買付に全株式の応募があった場合は、
会社から株主がいなくなってしまう(社外株式数が0株になってしまう)からです。
金融商品取引法上は、「自己株式の公開買付」を行う場合には「買付予定数」の設定が必要になるわけですが、
公開買付者(=会社自身)はその際、「買付予定数の上限」の設定を行っているもの、と考えて設定をしなければなりません。
妙な言い方ですが、「買付予定数の上限」に幅を持たせたい場合は、「超過予定数」を追加的に設定する、
という設定方法になります。
ただ、改めてよくよく考えてみますと、その設定方法ですと、結局「超過予定数」を加算した株式数を始めから「買付予定数」と
設定したことと同じになってしまうかと思います(つまり、この場合「買付予定数の上限」に幅など生じない)。
結局のところ、「自己株式の公開買付」の場合には「超過予定数」の設定は全く不要、ということになります。
ざっとインターネットで検索する限り、「超過予定数」を設定している「自己株式の公開買付」の事例は見当たらないのですが、
それはそのはずなのかもしれません(設定しても何の意味もないから)。
ひょっとして、「超過予定数」という文言は、旧証券取引法(本質的内容は現行の金融商品取引法と全く同じ)での文言だった
のではないかという気がします。
「買付予定数の上限」と「買付予定数の下限」という文言は、現行の金融商品取引法になってからの文言なのかもしれません。
私のこの記憶が正しいとすると、あることに気が付きます。
それは、今で言う「買付予定数の下限」の株式数のみ買い付けるのが公開買付制度なのだ、と。
他の言い方をすると、今で言う「買付予定数の下限」が本来は「買付予定数」なのだ、と。
旧証券取引法でいう「買付予定数」に応募が達しない場合は、応募があった株式の全ての買い付けを行わない、
という取り扱いに旧証券取引法ではなっていたのだと思います。
このように考えますと、このことは、
現行の金融商品取引法では「『買付予定数の下限』を設定しない公開買付は制度の趣旨を鑑みれば考えられない。」
という私が先ほど書きました指摘と完全に整合するわけです。
現行の金融商品取引法では「買付予定数の下限」を設定しない公開買付は実務上は一応できるわけなのですが、
旧証券取引法では「買付予定数」(今で言う「買付予定数の下限」)を設定しない公開買付は実施できなかったのです。
現行の金融商品取引法でいう「買付予定数」が今では全く不要なのではないかと思います(上限と下限のみで設定すれば必要十分)。
旧証券取引法では、下限以上に一定数株式を買い付けることを公開買付者が許容する場合は、「超過予定数」を追加的に設定できた、
というだけであるわけです(公開買付制度の趣旨を鑑みれば、元来的には「超過予定数」という概念・設定もなかったと思います)。

 



旧証券取引法と現行の金融商品取引法で用いられている文言を比較する中で、
「『買付予定数の下限』を設定しない公開買付は制度の趣旨を鑑みれば考えられない。」、
ということが分かり、私自身頭の整理が付いたわけなのです(このことは私自身にとって想像以上の収穫でした)が、
理研ビタミン株式会社の自己株式の公開買付の事例に戻り、少しだけコメントを書きます。
まず、「自己株式の取得及び自己株式の公開買付け並びに資金の借入れに関するお知らせ」の「1. 買付け等の目的」には、

>本公開買付けに応募せず当社普通株式を引き続き保有する株主の皆様の利益を尊重する観点から、
>資産の社外流出を可能な限り抑えるべく、市場価格に一定のディスカウントを行った価格により
>買い付けることが望ましいと判断いたしました。

と書かれています(2/10ページ)。
国によっては、法令もしくは自主規制により、買付価格に一定の制限を課しているようです。
通常、買付価格は高ければ高いほど投資家の利益に適うと言えるわけですが、
自己株式の公開買付の場合は、必ずしも買付価格は高ければ高いほど投資家の利益に適うとは言えません。
むしろ、公開買付に応じなかった株主のことを鑑みれば、
買付価格は低ければ低いほど投資家の利益に適うという考え方もあると思います。
なぜなら、ここで言う「投資家」とは、「対象者株主」のことだからです。
特に、この文脈では、公開買付後も「対象者株主」でいる投資家、の利益のことを考慮しなければなりませんので、
自己株式の公開買付の場合は、買付価格は低ければ低いほど投資家の利益に適うという考え方もあると思います。

 



次に、「自己株式の公開買付けの結果及び取得終了並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」
を主な題材としてコメントを書きます。
まず、買付期間は、「平成28 年4月28 日(木曜日)から平成28 年5月31 日(火曜日)まで(20 営業日)」となっていますが
「V. 主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動」の「1. 異動が生じる経緯」には、

>本公開買付けの結果、本公開買付けの決済の開始日である平成28 年6月22 日をもって、
>キッコーマンは当社の主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社に該当しないこととなり、また、
>当社の第二位の株主である武田薬品工業株式会社が新たに主要株主である筆頭株主に該当することとなります。

と書かれています(5/6ページ)。
株主の異動予定年月日は、「平成28 年6月22 日(本公開買付けの決済の開始日)」となっているわけです。
私はこれまで何回か、「株主の異動日」は決済日ではなく「公開買付の成立日」だ、と書いてきました。
このプレスリリースの記載は、私の主張とは異なっているわけなのですが、
私としましては、法理的にはやはり「株主の異動日」は決済日ではなく「公開買付の成立日」だ、と主張したいと思います。
旧証券取引法や現行の金融商品取引法では、決済についてのみ定めがあり、
株主の異動(所有権の移転)については特に定めはないのかもしれません。

 



最後になりますが、「自己株式の消却及び別途積立金の取崩しに関するお知らせ」の「1.自己株式の消却」には、

>(4)消却予定日 平成28 年7 月15 日

と書かれています(1/2ページ)。
しかし、自己株式の消却は、法理的には実は、公開買付の成立日である「2016年5月31日(火曜日)」に行うことができます。
買い付けた株式の決済はまだなのではないかと思われるかもしれませんが、この場合決済は全く関係がないのです。
公開買付の成立により、買い付けた株式の所有権は公開買付者に既に移転しています。
会社法上は自己株式に議決権はないわけです。
旧商法(2005年以前)では、会社には自己株式の所有権はあると考えていたわけですが(しかし議決権はなかったかと思います)、
現行の会社法(2006年以後)では、会社には自己株式の所有権はないと考えるのです(したかって当然に議決権もないと考える)。
しかし、現行の会社法においても、会社は株主から株式を「取得」する、と考えるわけですから、
公開買付の成立により(成立日に)応募株主は株式の所有権を失う(株式の所有権が移転する)、と考えるべきなのです。
したがって、会社は公開買付の成立日に買い付けた・取得した自己株式を消却できるのです(もちろん、処分もできる)。
会社法上の文言としては、”会社は自己株式を保有できる。”だと思います。
改めて「保有」という言葉を辞書で調べますと、「自分の物として、持っていること。」と書かれています。
辞書的な意味合いとしては、「自分の物として」と言っている時点でその物の所有権はその人にある、という意味になるでしょう、
また、法理的には「所有権を有していないものを持っている」ということはできないかと思います。
その理由は、「物を持っている」という状態は、占有との区別が付かないからです。
法理的には、「物を持っている」という時点で、その人はその物を占有し所有権を有している、という考え方になります。
簡単に言えば、「所有権があるから保有している」と言っていいわけです。
その意味では、現行の会社法上も、会社には自己株式の所有権はある、という考え方もあるかもしれません。
しかし、旧商法では自己株式の処分は損益取引であったのに対し、現行の会社法では自己株式の処分は資本取引である、
という明確な違いがあります(法人税法上の取り扱い、そして、貸借対照表上の計上区分が新旧法では明確に違う)。
したがって、現行の会社法では保有はできるものの会社には自己株式の所有権はない、と考えるべきだと思います。
法理的には、所有権があるからこそ保有できる、ということになりますので、私としては、

No ownership, no possession nor holding. (所有権がないなら保有できない。)

という言葉を思いつきました。
ただ、辞書を引きますと、possession の説明として、

>(所有権の有無に関係なく)占有
>Possession is nine tenths [points] of the law. 《諺》 現実の占有は九分の勝ち目 《預かり物はわが物》.

と書かれています。
現実には(実生活上は)所有権がなくても占有する(人から一時的に借りているだけ等)、ということはありえると思います。

 


参考までに、会社法の教科書から、自社が「筆頭株主」となっている企業に関するグラフをスキャンして紹介します。
といっても、このグラフの出所は、2011年6月18日付けの日本経済新聞の夕刊となっています。
これらは5年半以上前のグラフであり、現在ではまた状況は異なっているかもしれませんが、参考にはなると思います。
株主への利益還元の一手法ということで、今では自社株買いは世の中に定着した感がありますので、
自社が「筆頭株主」となっている企業の数はますます増加していると思います。
ただ、現行の会社法では、保有している自己株式については、ただ単にまだ消却していないだけのものに過ぎない、
という考え方になるように私は思います。
会社法上の「発行済株式総数」の減少こそ伴うものの、自己株式を消却したところで、
各株主の保有議決権割合も変動せず株主に帰属している利益額も減少せず財務上の影響も会社には全く生じないわけです。
ですので、結局のところ、今までに何回も書いたことですが、自己株式は取得と同時に消却をするべきである、と私は思います。


「自社が「筆頭株主」となっている企業に関するグラフ」