2016年12月10日(土)



2016年12月6日(火)日本経済新聞
日中韓賢人会議 「通貨スワップ拡大を」 高齢化・環境でも協力加速
(記事)




過去の関連コメント

2016年12月7日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161207.html

 



【コメント】
2016年12月7日(水) に「株式の贈与」についてコメントを書きましたが、その時のコメントに追記をする形で一言コメントします。
現行の所得税法の規定では、株式の贈与を受けた時は、その時の時価で株式の贈与を受けたもの、と見なして収益を認識します。
2016年12月7日(水) のコメントでは、贈与を受けた際に株式を時価評価するのは間違いである、と書きましたが、
今日はこの「株式の時価評価」を題材に一言だけコメントを書きたいと思います。
紹介している記事については、内容に関してはコメントはないのですが、見出しに「通貨スワップ」という言葉が書かれていまして、
「株式の時価評価」と「通貨スワップ」とが今日書きたいことと関連があるなと思いましたので紹介しているところです。
株式の贈与を受けた際は、時価と相手方に支払った対価(贈与の場合は0円ですが)との差額を収益として認識するわけですが、
では、権利行使価額1円の新株予約権を行使して株式を取得した場合は、
時価と権利行使価額との差額は収益として認識されないのだろうか、と思いました。
現行の所得税法や法人税法の規定では、おそらく時価と権利行使価額との差額は収益として認識しないと思います。
これはこれで正しいと思うのですが、では贈与の場合はなぜ時価と相手方に支払った対価との差額は収益として認識するのか、
という問題が生じると思います。
新株予約権の行使の場合は時価との差額は収益として認識しないが、贈与の場合は時価との差額は収益として認識する、
ということでは、両取り扱いについて理論的に整合性を欠くと思います。
この規定の背景には、新株予約権を行使して株式を取得した場合は取得後すぐに市場で売却するからだ(譲渡益で認識するのでよい)、
という考え方がどこかにあるのではないかと思うのですが(逆に、贈与の場合は贈与物を保有し続けるという前提がどこかにある)、
新株予約権を行使して株式を取得した場合は取得後すぐに市場で売却しなければならない、などという考え方はどこにもないわけです。
新株予約権を行使して株式を取得し、そのまま株式を保有し続けても何らの問題もないわけです。
この点について考えてみますと、現行の贈与に関する規定を踏まえた上で極論を言えば、取得原価に関する一般論として、
「物を取得した時は常にその時価で取得したものとみなす。」、という考え方をしなければならなくなるように思うわけです。
この考え方は、譲渡する側から見ると、譲渡益の認識方法として、
「物を譲渡した時は常にその時価で譲渡したものとみなす。」、という考え方に通じるものがあると思います。
現行の規定でも、条文上はどこかそのような考え方をしているようにも思えます。
ただ、このように考えますと、では新株予約権の行使を受けて新株式を発行した会社は、時価の払い込みを受けたのか、
という話になるのではないかと思います。
そのようなことをすれば、資本金の増加は架空増資に過ぎず、また、
新株式発行と同時に会社は発行損失(新株式発行差金とでも言いましょうか)を計上しなければならなくなるでしょう。
やはり、「時価で取引を行った」と考えることがそもそもの間違いであるように思います。
当事者は、時価で取引を行ったのではなく、対価の金額で取引を行ったのではないでしょうか。
どのような取引においても、取得原価は「取得のために相手方に支払った対価の金額」であるわけです。
贈与であれ新株予約権であれ、時価で取引を行ったと考えるのは理論的には間違いなのです。

 



また、通貨スワップというのは例えば日本円と米ドルとを当事者間で予め決めたレートで交換することを言うのだと思いますが、
これはこれで、他国通貨を一資産と見なせば、理屈では考えられない取引ではないと思います。
新株予約権の行使の場合と同じで、通貨スワップも煎じ詰めれば、
1米ドルを日本円でいくらで買う、という取引を行うわけなのですが、
その米ドルの取得原価は理論的には「取得のために相手方に支払った日本円(対価)の金額」ということになるだけなのです。
つまり、理論的には、米ドルを取得時の為替レートで換算する(時価評価する)ようなことはしないわけです。
米ドルは基軸通貨なのだから、日本においても法定通貨と同じくらい現金(準通貨)と見なすべきなのではないか、
と思われるかもしれませんが、理論的には、日本においては日本円で全ての資産を評価する(価額を付ける)ことになります。
為替レートが1米ドル=100日本円の時に、1米ドルを90日本円で取得したからと言って、
その1米ドルを100日本円で取得したと評価する(資産に価額を付ける)のは理論的には間違いであるわけです。
現行の所得税法と法人税法の規定では、米ドルは時価評価する(その時の為替レートで取得したものと見なす)ことになり、
差額は税務上も収益(要するところ所得)であると見なすのではないかと思うのですが、
「日本における法定通貨は日本円である」という観点から見れば、やはり米ドルを時価評価するのは間違いであるわけです。
以前、相続税の物納に関するコメントの中でで、税務当局は財政支出のために徴税を行うのだ、と書きましたが、
国は日本円で財政支出を行うのです。
米ドルで財政支出を行うわけではありません。
相続税の物納の際、米ドルでの納付が可能なのかどうかは知りません(国際的・実務的には価額ははっきりしてはいますが)が、
税務当局としては、その後の財政支出という点を鑑みれば、米ドルで徴税を行っても理論的には意味はないわけです。
結局のところ、税務当局は、日本円で収益を得たか否かで所得を捕捉し、日本円で課税・徴税を行うしかないのだと思います。
為替レートが1米ドル=100日本円の時に、1米ドルを90日本円で取得した場合、
為替レートから見ると確かに10日本円得をしているわけなのですが、
しかしそれは10日本円の所得を得たこととは全く異なるわけです。
米ドルの取引であろうが日本国債の取引であろうが、
日本円(現金)でどれだけの所得を得たかのみで、所得額を捕捉するようにしないといけないわけです。
すなわち、時価評価(時価で取引を行ったものと見なす)の正反対の捕捉方法を行うようにしなければ、
理論的には税務当局は課税も徴税もできない、ということになるわけです。
時価による取引の正反対とは、何のことはなく、相手方に支払った対価の金額で取引を行ったと考える、ということです。
元来的には、実は、そもそも「相手方に支払った対価の金額」のことを「時価」と呼ぶのではないかと思います。
最後に、極論になりますが、米ドルも日本における準通貨だという観点から見た場合の通貨スワップの問題点について書きます。
為替レートが1米ドル=100日本円の時に、通貨スワップにより1米ドルを90日本円で取得することが認められるのならば、
例えば200日本円を100日本円で取得することも認められる、ということにならないだろうか、と思いました。
つまり、200日本円と100日本円の交換がおかしいと分かれば、米ドルも日本における準通貨だという考え方がおかしい
と分かるのではないでしょうか(通貨スワップでは実は米ドルを通貨ではなく無意識に・暗に一資産とみなしていると思います)。


Can a person swap 100 yen for 200 yen?

100円を200円と交換することができるでしょうか。