2016年12月7日(水)
キーエンス創業家の株式贈与、1500億円申告漏れ
キーエンスの創業者、滝崎武光名誉会長(71)の長男が大阪国税局の税務調査を受け、
贈与された資産管理会社の株式を巡り1500億円を超える申告漏れを指摘されたことが16日、関係者への取材で分かった。
株式の評価が著しく低いと判断されたといい、追徴税額は過少申告加算税を含め300億円超。既に全額納付したもようだ。
滝崎家の資産管理会社「ティ・ティ」(非上場、大阪府豊中市)はキーエンスの発行済み株式の17…
(日本経済新聞 2016/9/17
2:00)
ttp://www.nikkei.com/markets/company/article/?ba=1&ng=DGXLASDG16HBQ_W6A910C1MM8000&scode=6861
キーエンス創業家申告漏れ=株贈与で1500億円超−大阪国税局
電気機器大手「キーエンス」(大阪市東淀川区)の創業者滝崎武光名誉会長(71)の長男が大阪国税局の税務調査を受け、
滝崎氏から贈与された創業家の関係会社の株について、1500億円超の申告漏れを指摘されたことが17日、分かった。
申告した株の評価額が著しく低いと判断されたとみられる。
追徴税額は過少申告加算税を含め300億円超で、全額納付したもようだ。
関係者によると、滝崎氏らはキーエンスの筆頭株主である資産管理会社「ティ・ティ」(大阪府豊中市)を傘下に置く
非上場の関係会社を新たに設立。この会社の株を長男に贈与したとされる。
国税庁は、非上場など取引相場のない株の評価額は、業種が類似する上場企業の株価などに基づき算定するよう通達で求めている。
長男は通達にのっとって関係会社株を評価し申告したとされるが、国税局は、
関係会社がティ・ティを通じて大量のキーエンス株を間接的に保有しているとみなし、評価額が過小だと判断したもようだ。
(時事通信 2016/09/17-17:36)
ttp://www.jiji.com/jc/article?k=2016091700230&g=soc
>国税庁は、非上場など取引相場のない株の評価額は、業種が類似する上場企業の株価などに基づき算定するよう通達で求めている。
となっています。
これは一言で言えば、財産の贈与を受けた場合はその財産の時価で贈与を受けたものとみなす、ということであるわけです。
贈与を受けたことにより、その人には時価に相当する収益が発生した、と考え、その収益に贈与税がかかるわけです。
元来的には、財産の贈与を受けたというだけでは、やはりその人に収益は発生していないわけなのです。
時価で1500億円相当の価値がある株式の贈与を受けたというだけでは、その人に収益は発生しません。
配当を受け取ったり株式を売却したりして初めて、その人には収益が発生するわけです。
元来的には、いくらの価値がある株式の贈与を受けようとも、
配当を受け取ったり株式を売却したりした時に、その都度所得税を課するようすれば十分であろうと思います。
すなわち、贈与財産の時価評価を行わないとしても、実は税務上特段有利になるわけではないのです。
結局、贈与財産を時価評価した分、今度はその評価額が財産の譲渡時には取得原価(税務上の損金)になるわけです。
つまり、贈与財産の時価評価を行おうが行うまいが、トータルでは、課税所得額は同じなるわけです。
担税力という点から言えば、やはり贈与財産の時価評価は行うべきではない、ということになろうかと思います。
この点について言えば、例えば土地や不動産であれば、まだ贈与財産の時価評価を行う意味があると思います。
なぜなら、土地や不動産は、贈与を受けたことによりその本来の目的を享受することができる(その家に住むなど)からです。
例えば、時価1億円相当の家をもらってそのままその家に住むとします。
それは1億円の贈与(寄附)を受けたことと同じではないか、という考え方はあると思います。
ただ、そのように考える背景には、「家に住むこと」が家本来の目的だからではないでしょうか。
家の場合は、住むことが目的ですので、1億円の家をもらってそこに住むことは現金1億円をもらったことと同じと言えるのです。
しかるに、株式の場合は、敢えて言うなら「所有すること」しかできないわけです。
株式の贈与を受けても、そこに住むであったり他に便益を受けられるということはないわけです。
配当を受けた場合は、その時に受取配当金ということで課税すればよいというだけでしょう。
株式の場合は、譲渡を行って譲渡益を稼得するか、会社の清算を行って残余財産の分配を受けるかしないと、
収益を得られない(株式本来の目的を果たせない)わけです。
家は住むことが本来の目的ですが、株式を何らかの形で収益を得ることが本来の目的のはずです。
家はもらっただけで家本来の目的を享受できますが、株式はもらっただけでは株式本来の目的は享受できないのです。
ですので、株式の贈与の場合は、贈与財産の時価評価などせずとも、得られる便益(本来の目的)に影響は与えないわけです。
なぜなら、贈与株式の時価評価は、煎じ詰めれば取得原価の操作に過ぎないからです(時価評価の本質的意味がない)。
簡単に言えば、たとえ時価1億円相当の株式をもらっても、それは現金1億円をもらったことと同じではないのです。
ここで言う「本来の目的」に関連したことを言えば、「贈与財産を自己消費できるか否か?」という言い方もできると思います。
家は自己消費できます(住むことができる)が、株式は自己消費できない(単に所有することしかできない)のです。