2016年12月2日(金) 


2016年11月30日(水)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社中電工
(記事)


2016年11月29日
株式会社中電工
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けについて
ttp://www.chudenko.co.jp/release/images/p161129_02.pdf


2016年11月29日
株式会社中電工
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.chudenko.co.jp/release/images/p161129_01.pdf

 


公開買付代理人(こうかいかいつけだいりにん)
公開買付けにより、買付会社が株券等の買付けをおこなう場合に、買付対象会社の株券等の保管・返還や買付代金の支払等の事務を
買付会社の代わりにおこなう代理人のこと。
金融商品取引法では、このような事務手続きをおこなう公開買付代理人を証券会社または金融機関の中から選ぶように定めている。
(野村證券株式会社 証券用語解説集)
ttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/koukai_dairi.html

 


関連する昨日のコメント

2016年12月1日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161201.html

 


【コメント】
株式会社中電工による自己株式の取得及び自己株式の公開買付の事例を見て、思ったことを一言だけ書きます。
公開買付者は、公開買付の開始に先立ち、公開買付代理人に対し買付代金を預け入れなければなりません。
これは、投資家保護の趣旨(代金の決済が必ず行われるように制度設計されている)から当然のことであるわけですが、
公開買付代理人に対し買付代金を預け入れた際の公開買付者の仕訳はどうなるのだろうか、とふと思いました。
公開買付代理人に対し事前に預け入れた買付代金は、公開買付の開始から公開買付の終了・決済までの間、
公開買付者の手元を離れており、公開買付者は自由にそのお金を使えないわけですから、何らかの会計処理が求められるでしょう。
教科書などには勘定科目としては載っていないのですが、私は「公開買付決済代金預入金」という勘定科目を考えてみました。
公開買付者が公開買付代理人に対し買付代金を預け入れた時の仕訳は例えば次のようなります。

(公開買付決済代金預入金) xxx / (現金) xxx

その後、公開買付が成立した場合は、公開買付者は次の仕訳を切ることになります。

(対象者株式) xxx / (公開買付決済代金預入金) xxx

公開買付が不成立の場合や、買付予定数の最大値未満の株式数しか買い付けなかった場合は、差額は公開買付者に返還されます。

(現金) xxx / (公開買付決済代金預入金) xxx

 



昨日私が書きました論点を踏まえますと、公開買付の終了・成立日から代金の決済日までの間は、公開買付者に未払金勘定が
発生・計上されることになるわけですが、その結果、この間は公開買付者には公開買付決済代金預入金勘定と
未払金勘定の両方がそれぞれ借方と貸方に計上される(この時点では公開買付決済代金預入金に変動はない)ことになります。
昨日私が書きました論点を踏まえた上での公開買付の終了・成立日の公開買付者の仕訳は、実は次のようになります。

(対象者株式) xxx / (未払金) xxx

そして、代金の決済日には公開買付者は次の仕訳を切ることになります。

(未払金) xxx / (公開買付決済代金預入金) xxx

代金の決済日に、すなわち、公開買付代理人が応募株主に実際に買付代金を支払った日に、
公開買付決済代金預入金勘定は取り崩される(代金の支払いに充当される)ことになります。
代金の決済日までは、公開買付決済代金預入金勘定に変動はない(公開買付代理人も依然として同額を保管したまま)のです。
公開買付者は、公開買付の成立により、株式取得の代金を支払う義務を負うことになったわけです(確定債務の発生)。
この義務自体は、やはり公開買付者本人が負っていると言えるわけです。
ただ、その義務の履行に当たり、義務の履行を確実なものとするために公開買付代理人が事前に決済代金を預かっていますので、
代金の支払いには公開買付代理人が預かっているお金が充当される(それにより確定債務は履行されたことになる)、
と考えるわけです。
一見すると、公開買付決済代金預入金を事前に公開買付代理人に保管してもらっているのだから、
公開買付者には未払金は発生しないのではないか(公開買付者には債務は発生しないのではないか)、と思われるかもしれません。
しかし、公開買付代理人はその間まだ買付代金を応募株主に支払っていませんし、
また、かといって公開買付代理人が債務者になる、という考え方もおかしいでしょう。
公開買付が成立した場合、応募株主に対し買付代金を支払う義務を負うのは公開買付代理人になるのではないか、
という捉え方もできるとは思いますが、第一義的に買付代金を支払う義務を負っているのはやはり公開買付者であろうと思います。
公開買付代理人はただ単に制度上買付代金を公開買付者から預かり保管しているだけだ、という捉え方をするべきなのだと思います。
ですので、やはりその間は公開買付者が債務者になるのです。
これが、公開買付の終了・成立日から代金の決済日までの間、
公開買付者には公開買付決済代金預入金勘定と未払金勘定とが両建てで計上される理由です。

 


それから、「公開買付の期間」についてですが、お知らせやプレスリリースによりますと、
「平成28年11月30日(水曜日)から平成28年12月28日(水曜日)まで(20営業日)」となっています。
買付期間は「20営業日」ということで、法令上の最低日数が設定されているわけですが、改めて考えてみますと、
「発行者による公開買付」では支配株主の異動は生じない、という見方ができないだろうか、と思いました。
発行者以外の者が公開買付を行う場合に、公開買付者が株式を買い付ける結果支配株主の異動が生じ得る、と言えると思います。
確かに、「発行者による公開買付」でも、大株主や少数株主それぞれの応募状況次第では、
公開買付の結果例えば突然支配株主が誕生する、ということは考えられます。
しかし、その支配株主の異動や新たな支配株主の誕生は、
少なくとも公開買付に伴い公開買付者の所有議決権割合が増加した結果というわけではない、と言えるわけです。
他の言い方をすれば、少なくとも公開買付者がその支配株主になるわけでは決してないわけです。
その意味において、発行者以外の者が公開買付を行った場合とは、支配株主の異動・誕生の状況が異なるのではないか、
と思ったのです。
発行者以外の者が公開買付を行った場合は、公開買付の結果仮に支配株主が異動・誕生するとしたら、
必ず公開買付者がその支配株主になるわけです。
ですので、一つの考え方として、「発行者による公開買付」と「発行者以外の者による公開買付」とで、
公開買付期間に関して、法令上の最低日数が異なっていても考え方としてはおかしくないのではないか、と少し思いました。
「発行者による公開買付」の場合は、公開買付者が支配株主になることは絶対にないことから、
法令上の最低日数は相対的に短くても問題は少ないのではないか、と少し思いました。
他の言い方をすると、「発行者による公開買付」の場合は、「誰が支配株主になるか事前には分からない。」わけです。
なぜなら、「誰が支配株主になるか」は、株主の応募状況次第で変わるからです。
「あの人(公開買付者)が支配株主になるのなら、応募をしよう・応募はするまい。」という投資判断がこの場合できないわけです。
ですので、投資家は支配株主に関連する投資判断自体がこの場合できないということになりますので、
相対的に短い日数の買付期間でも投資家の利益は害されないと言えるのではないか、とふと思いました。
投資家が投資判断できる部分というのは、この場合は本当に買付価格の部分だけということになろうかと思いますので、
買付期間は短くても投資家の利益保護の観点には反さないように思いました。