2016年12月1日(木)


2016年12月1日(木)日本経済新聞
アデランス TOBが成立
(記事)



株式会社アデランス株券等に対するアドヒアレンス株式会社による公開買付についての過去のコメント

2016年10月17日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161017.html

 


2016年11月30日
株式会社アデランス
アドヒアレンス株式会社による当社株券等に対する公開買付けの結果
並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
ttp://pdf.irpocket.com/C8170/irQp/guv2/rasP.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)


2016年11月22日
株式会社アデランス
臨時株主総会および普通株主による種類株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ
ttp://pdf.irpocket.com/C8170/irQp/fTYL/aoPj.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




H28.11.30 15:46
公開買付報告書  
アドヒアレンス株式会社
(EDINETと同じPDFファイル)



H28.11.30 14:25
臨時報告書
株式会社アデランス
(EDINETと同じPDFファイル)

 



【コメント】
2016年11月30日に株式会社アデランスが発表したプレスリリース
「アドヒアレンス株式会社による当社株券等に対する公開買付けの結果
並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」を読んで思ったことを少しだけコメントします。
まず、「公開買付期間」は「平成28 年10 月17 日(月曜日)から平成28 年11 月29 日(火曜日)まで」であったわけですが、
「決済の開始日」は「平成28 年12 月6日(火曜日)」となっています。
公開買付の終了日から決済日まで丸1週間も間が開いています。
以前、「公開買付者が対象者株式の所有権を有するようになるのはいつの日からか?」、といった論点について書きましたが、
その問いに対する法理上の結論を一言で言えば、「株式の引渡しを受けた日」という言い方になると思います。
応募株主(売り手)にとっては公開買付への応募は既に撤回できない(再び応募株主の元に株式は戻らない、
応募株主は再び応募株式を占有できるようにははならない)状態にある以上、公開買付の終了・成立をもって、
「株式の引渡し」は行われたものという見方をするべきであり、したがって、株式の所有権は公開買付の終了日に応募株主から
公開買付者へ移転するもの、という見方をするべきだと思います(すなわち、代金の決済は所有権の移転とは無関係と考える)。
ただ、株式の場合は、通常の目的物の場合とは異なり、その所有権者は株主名簿により一意に明らかにされる、と考えます。
所有権の移転は、引渡しという物理的な行為により実現するのではなく、
株主名簿の書き換えという言わば抽象的・概念的・表象的な行為により実現する、と考えるわけです。
したがって、その点を鑑みれば、
対象会社は、公開買付の終了・成立をもって、速やかに株主名簿の書き換えを行わなければならない
ということになるわけです(すなわち、対象会社は代金の決済日に株主名簿を書き換えるのではない、と考える)。
公開買付の終了・成立をもって、公開買付者には未払金勘定が発生・計上されます(対象者株式勘定が相手方勘定科目)し、
応募株主には未収金勘定と株式売却損益勘定が発生・計上されます(応募株主は対象者株式の所有権は既に失っている)。
この考え方は、現代の「実現主義会計」と「発生主義会計」の考え方に合致するものです。
そして、終了・成立日の、すなわち、「2016年11月29日(火曜日)の最終の株主名簿の記載された株主」は、「公開買付者」なのです。
このように考えないと、2016年11月30日(水)から2016年12月5日(火)までの間は、株式の所有権は誰にあるのかが不明になるわけです。
もちろん、所有権の移転から損益の認識まで、「代金の決済日」でもって全てを認識する、という考え方もあると思います。
すなわち、株主名簿の書き換えも損益の認識も、全て「代金の決済日」に行う、という考え方です。
これはこれで確かに説明は付くとは思うのですが、応募株主は株式に対する支配権は終了・成立日に完全に失っているわけです。
現代の「実現主義会計」と「発生主義会計」の考え方を鑑みても、やはり、終了・成立日に全てを認識するべきだと思います。
現代の「実現主義会計」と「発生主義会計」では、「代金の決済」は全く関係がない、そう考えるわけです。
ですので、法理上も会社法上もそして現代会計上も、
「公開買付者が対象者株式の所有権を有するようになるのは公開買付の終了・成立日からである。」が答えなのです。

 


関連する実務上の論点になりますが、「決済の方法」としては、プレスリリースには、

>公開買付期間終了後遅滞なく、本公開買付けによる買付け等の通知書を応募株主等(外国人株主等の場合はその常任代理人)の
>住所宛に郵送いたします。買付けは、現金にて行います。
>買付けられた株券等に係る売却代金を応募株主等(外国人株主等の場合はその常任代理人)の指示により、
>決済の開始日以後遅滞なく、
>公開買付代理人から応募株主等(外国人株主等の場合はその常任代理人)の指定した場所へ送金するか、
>公開買付代理人の応募受付けをした応募株主等の口座へお支払いします。

と書かれています。
公開買付期間終了後遅滞なく、公開買付の通知書を応募株主の住所宛に郵送する、とのことです。
そして、買付けられた応募株式の売却代金を応募株主の指示により、決済の開始日以後遅滞なく、
公開買付代理人から応募株主の指定した場所へ送金するか、公開買付代理人の応募受付けをした応募株主等の口座へ支払いをする、
とのことです。
「公開買付代理人から応募株主の指定した場所へ送金する」というのは、おそらく郵便局の現金書留が想定されていると思います。
これは法理ではなく極めて実務上の話になってくるわけですが、代金決済に関する事務として郵送という手段を用いるとなりますと、
「買い手が代金を支払った日」と「売り手が実際に代金を受け取った日」との間に数日のズレが生じることになるわけです。
その場合はやはり、株式の所有権はいつ移転するのか、が問題になるわけです。
買い手は「自分が代金を支払った日」だと主張するでしょうし、売り手は「自分が代金を受け取った日」だと主張するでしょう。
そういった点を鑑みても、「株式の所有権は公開買付の終了・成立日に移転するもの。」と整理した方が実務上もよいと思います。
これならば実務上、郵便物(通知書と現金書留)の到着に数日の遅れが生じようとも、何らの問題も生じないと言えるでしょう。
目的物の所有権の移転に関しては、目的物の「引渡し」に着目するべきであり、
株主名簿の書き換えもその考え方に沿うべきなのです。
目的物の所有権の移転に関しては、現代会計の考え方から言っても、「代金の決済」には一切着目するべきではないのです。

 


それから、このたびの公開買付後の「今後の見通し」についてですが、プレスリリースには、

>公開買付者及び根本信男が当社の発行済普通株式の全て(但し、当社が所有する自己株式を除きます。)を取得するための
>一連の手続を実施することを企図しているとのことです。

とのことです。
公開買付者は、自社が対象者の唯一の株主となる(株式を100%所有する)ことは想定していないようです。
会社の非上場後も、創業者はその後も株式を保有し続ける形の経営を行っていくことを目的としているのだと思います。
当初から、公開買付に際して、創業者は、公開買付者との間で、
所有株式については公開買付に応募しない旨を合意していたようです。
性善説に立てば、これも1つの経営方法だとは思います。
しかし、性悪説に立てば、実は始めから確信犯的に、公開買付者はこれから2回目の公開買付を実施することもできるわけです。
このたび終了した公開買付の買付価格は1株につき「620円」であったわけですが、一般株主を欺くため公開買付者と創業者が共謀し、
例えば、買付価格を1株につき「1000円」と設定し、2回目の公開買付を実施し、創業者からのみ高い価格で株式を買い付ける、
ということは、金融商品取引法上何ら問題のない買付方法なのです。
買付価格が低い1回目の公開買付に応募した何も知らない一般株主がバカを見るわけですが、金融商品取引法上は何ら問題ありません。
強制取得という場面ですと、判例上、買取価格は買付価格と同じでなければならないと考えなければなりませんが、
買付価格を引き上げた2回目の公開買付を実施することを禁止する規定や判例はないのです。
そして、買付価格を引き上げた2回目の公開買付を実施することは禁止するべきだという考え方にはあまり理はないのです。
なぜならば、1回目の公開買付に応募した株主は、その1回目の買付価格の納得をしたからです。