2016年9月29日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160929.html
2016年9月29日(木)
のコメントで、「株式の追加取得を目的に2回目の公開買付を開始する場合」について設例を設け書きました。
これは、2回目の公開買付価格は1回目の公開買付価格よりも高く設定しても投資家保護の観点には反さないのか、という論点でした。
それで、私は2回目の公開買付では買付価格を上げても何の問題もないと書き、その理由として次のように書きました。
>公開買付者にとっても投資家にとっても、2回目の公開買付が実施されるという保証は事前にはどこにもないわけです。
>1回目の公開買付の終了日になって初めて、2回目の公開買付の可能性が公開買付者・投資家双方にとって出てくるというだけなのです。
>つまり、「2回目の公開買付」から物事を見ると、投資家保護の観点に反しているかのように見えるだけなのです。
>「2回目の公開買付」を行うことを前提に1回目の公開買付を実施する公開買付者はいないのです。
この2016年9月29日(木)
のコメントを書いた後、公開買付者が確信犯的に一般投資家を欺こうとする場合もあるのかもしれない、
と思い、「2回目の公開買付の買付価格を上げることの問題点」として、ふとある場面を頭に思い浮かべました。
公開買付者は対象者株式の全てを取得する計画なのですが、できるだけ少ない金額で済むように、
一般株主からは低い買付価格で買い付け、公開買付成立を左右する特定の大株主からは高い買付価格で買い付けることを思いつきました。
公開買付者は、公開買付を2回実施することは意図的に伏せておき(公表しない)、特定の大株主にだけ2回目の公開買付を実施する旨、
事前に告げておく(2回目の買付価格の方が高いので1回目の公開買付には応募しないで下さいと事前に話をしておく)とします。
このような手法を用いると、2回目の公開買付が実施されることを知らない一般投資家は、
買付価格が低い1回目の公開買付に応募することになるわけです。
公開買付者としては、1回目の公開買付が終了・成立した後、目的とする株式数の応募がなかったことを理由に、
買付価格を引き上げて2回目の公開買付を開始するわけです。
そして、2回目の公開買付には、話を事前に聞いていた特定の大株主が応募する、という流れになるわけです。
この一連の流れを見ていた投資家(一般株主)は、特定の大株主はなぜ1回目の公開買付に応募しなかったのだ、
買付価格を引き上げた2回目の公開買付が実施されることを特定の大株主は事前に知っていたのではないか、
と言いたくなるわけです。
1回目の公開買付に応募をした一般株主からは、公開買付者と特定の大株主とが結託して
意図的に公開買付を2回実施しているのではないか、というふうに見えるのではないかと思います。
公開買付者と特定の大株主は一般株主を騙したのではないか、と見えるのではないかと思います。
1回目の公開買付価格と2回目の公開買付価格とが異なっていると、以上のような問題が生じるのかもしれないな、
と自分で思ったわけです。
このような公開買付は果たして、投資家保護の観点には反さないのでしょうか。
結論だけを言いますと、今日書きました「公開買付者と特定の大株主とが結託する2回の公開買付」は、
投資家保護の観点には反さない、と私は思います。
また、金融商品取引法の定めにも反してはいないと思います。
その理由を一言で言えば、「一般株主は自分の意思で公開買付に応募したから。」となります。
一般株主は自分の意思で公開買付に応募した、というのはどういうことかと言いますと、
一般株主は買付価格に納得した(十分に高い買付価格であると判断した)、という意味です。
仮に、一般株主が1回目の公開買付の買付価格に納得していないのであれば、
一般株主は公開買付に応募しなければよいわけです。
もちろん、一般株主は2回目の公開買付が実施されることを事前には知らないわけですが、
公開買付に応募しないと例えば株主ではなくなってしまう、などというわけでは全くないわけです。
結局、一般株主が判断しなければならないのは、「その買付価格で所有株式を売るか売らないか?」だけなのです。
2回目の公開買付が実施されないとしても、株主には所有株式を市場で売却する機会は与えられたままであるわけです。
つまり、1回目の公開買付に応募しないと金輪際株式売却の機会を奪われてしまう、などということは一切ないわけです。
結局、さらに高い買付価格の公開買付がすぐに実施されると判断するのか、それとも、
市場において1回目の買付価格よりも高い価格で株式を売却する機会が訪れると判断するのか、
それとも、1回目の買付価格で所有株式を売却してしまった方が自分の利益は最大化されると判断するのか、
それらの判断というのは、投資家の投資判断(自己責任)という部分であるわけです。
例えば、2回目の公開買付にも一般株主は応募できるわけです。
特定の大株主のみが応募できる公開買付、などというものは金融商品取引法上絶対に認められないわけですから。
1回目の買付価格に納得できないのであれば、公開買付に応募しなければよい、というだけであると私は思うわけです。
公開買付者にしても、公開買付者は一般株主に1回目の公開買付に応募することを強制することはできないわけです。
公開買付者は、「この価格で株式を買いたいのですが。」と言っただけなのです。
その価格に納得できないのであれば、株主は株式を売らなければよい、というだけでしょう。
「この買付価格では誰も応募しないはずだ。ひょっとすると、買付価格を引き上げて2回目の公開買付が実施されるかもしれない。
だから、2回目の公開買付が実施される方に賭けてみよう。」
と判断することも一般株主にはできるわけです(逆から言えば、「2回目の公開買付は行われない。」という保証もない)。
そう判断はせずに、1回目の公開買付に応募したのであれば、それはやはり投資家の投資判断(自己責任)ということになるでしょう。
したがって、今日書きました「公開買付者と特定の大株主とが結託する2回の公開買付」は、投資家保護の観点には反さないのです。
The fact that shareholders accept a tender offer means that they are
satisfied with the tender offer price.
If they wanted a higher tender offer
price, they would not accept the tender offer.
They accept a tender offer
voluntarily, not compulsorily, therefore it's no problem.
株主が公開買付に応募したということは、株主はその買付価格に納得しているということです。
仮に、株主がもっと高い買付価格を望んでいるのなら、株主は公開買付に応募しないことでしょう。
株主は自主的に―強制的にではなくー公開買付に応募した、だから、問題はないのです。