2016年9月28日(水)
2016年9月23日(金) に「上場株式の相続」についてコメントしましたが、一言だけ追記をします。
2016年9月23日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160923.html
日本証券業協会が発表した「平成29年度税制改正に関する要望」には、「上場株式等の相続税評価額等の見直し」
について4つ提言がなされていますが、今日はその中でも、
”上場株式については、他の財産と比較して相続税の負担感が相対的に高いため、相続税評価額を見直すこと”
という提言についてコメントします。
「平成29年度税制改正に関する要望」の添付資料である【主要項目説明資料】から、
「相続税評価額」についての部分を再度紹介します。
「不動産(土地・建物)と上場株式との相続税評価額の比較」
端的に言いますと、相続税評価額は、土地の場合は公示地価(時価)の80%程度、建物の場合は建築費(取得費)の50〜70%
であるのに対し、上場株式の場合は時価の100%となっているわけです。
このことを、提言では”他の財産と比較して相続税の負担感が相対的に高い”と指摘しているわけです。
私としましては、それぞれの相続財産の相続税評価額は時価の何パーセントであるべきか(100%か0%かもしくはその中間か)、
については特に意見はありません。
ただ、私個人の独自解釈になりますが、現行の相続税法の相続税評価額に関する規定について一言だけ書きます。
現行の規定では、不動産に関しては、相続税評価額は時価よりも一定割合低い価額であると評価されるわけなのですが、
その理由は、時価と相続税評価額との差額は「家族の生活費」だからである、と私は解釈しています。
私の造語になりますが、時価と相続税評価額との差額は「maintenance
discount」なのです。
maintain には、「〈人・家族を〉(金を出して)養う, 扶養する」という意味があります。
maintenance
には、「扶養, 生計; 扶助料,
生活費」という意味があります。
それで、家族を扶養するための財産に関しては相続税を課さない、という理念に基づき、
相続財産のうち家族の扶養のための部分は非課税とする(=相続税評価額を引き下げる)、と相続税法では考えているので、
時価と相続税評価額との間に差額が生じているのだと思います。
それで私は、この差額のことを「maintenance
discount」(扶養割引)と名付けたいと思いました。
被相続人は家族のための生活費を遺しただけなのだ、だから、その部分は非課税だ、というわけです。
以上、時価と相続税評価額との差額について、説明を試みてみました。
One idea is that the difference between a current price of an inheritance
and
an appraised value of it on an inheritance tax is regarded as
"maintenance discount."
For example, concerning land, it can be explained
that approximately 20 percent of a current price
of an inheritance (land) has
been considered as maintenace for a family (the bereaved) by a inheritee.
To
put it simply, "20% is tax-free" means that "20% is maintenace."
From a
standpoint of the Inheritance Tax Act, listed shares are purely a luxury.
In
other words, they don't compose maintenance at all.
相続財産の時価と相続税評価額との差額は「メンナンス・ディスカウント(扶養割引)」であるとみなす、
という考え方もあります。
例えば、土地に関してであれば、相続財産(土地)の時価の20%程度は家族(遺族)の生活費であると被相続人は考えていたのだ、
というふうに説明付けが可能なのです。
簡単に言えば、「20%は非課税だ」ということは、「20%は生活費だ」ということです。
相続税法の立場から見ると、上場株式は純粋なぜいたく品なのです。
他の言い方をすれば、上場株式は生活費を全く構成しないのです。