2016年9月18日(日)



昨日のコメントに一言だけ追記をします。

2016年9月17日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160917.html

昨日のコメントでは、「会計監査人が会計監査を行う場合の監査役の会計監査責任」について次のように書きました。

>会社法の条文だけから言えば、会計監査人が会計監査を行う場合の監査役の会計監査責任については定めがありません。
>会社法上は、上場企業においても監査役は会計監査を行うべきなのか否かについては判然とはしません(明文の定めがない)。

この点について、今日改めて別の会社法の教科書を読んでいましたら、次のような記述がありました。

>会社法上、業務監査については取締役および監査役が、会計監査については監査役および会計監査人が監査を行うこととしている。

この教科書では、解説の都度、逐一その解説は第何条の条文に該当するのかの記載があるのですが、
この引用文に関しては第何条なのかは書かれていません(おそらく条文には直接的にその旨書かれてあるわけではないのでしょう)。
”会計監査については監査役および会計監査人が監査を行う”という言葉の意味は、
”会計監査については監査役が行う場合もあれば会計監査人が行う場合も合う”という意味なのか
”会計監査については監査役と会計監査人の両方が監査を行う”という意味なのか、どちらなのかは分かりません。
ただ、この引用文の少し後に「監査役の歴史」について書かれてあり、そこには次のように書かれています。

>50年の改正で、監査役の監査はもっぱら会計監査に限られることとなった。

この旧商法の定めは1974年に改正され、監査役は会計監査のみならず取締役の業務執行を監査する権限も持つこととなったのですが、
それまでの間は旧商法上は「監査役の監査はもっぱら会計監査に限られていた」という事実は、
昨日と今日の論点では非常に重要な点だと思います。
すなわち、法改正の中で監査役の役割・権限は拡大してきたものの、
監査役の中心的役割・権限はあくまで会計監査に関するものである、と考えるべきなのだと思います。
この点を鑑みると、仮に会計監査人が会計監査を行う場合は監査役は会計監査は行わないと考えてしまいますと、
会計監査人が会計監査を行う場合は監査役は遂行するべき職務がない、ということになってしまうわけです。
会社法上、上場企業においては、会計監査人と監査役の両方が計算書類の監査を行わなければならない、と考えるべきでしょう。

 



また、この教科書には、「会計監査人設置会社の会計監査報告」について、次のように書かれています。

>会計監査人設置会社では、会計監査については監査のプロである会計監査人が一次的に監査を行い、会計監査報告を作成する。

私は昨日、”会社法上は、上場企業においても、会計監査人だけではなく監査役もまた計算書類の監査をしなければならない。”
という点に関して、次のように書きました。

>Abstractly speaking, in listed companies,
>company auditors are still main and financial auditors are additional or complementary.

>抽象的に言えば、上場企業においては、監査役がやはり主であり、会計監査人は追加的若しくは補助的な位置付けなのです。

引用した教科書の記述内容をこのコメントに即して言えば、会計監査人設置会社における会計監査は、

Financial auditors are main and company auditors are additional or complementary.
(会計監査人が主であり、監査役は追加的若しくは補助的な位置付けである。)

となるでしょう。
会計監査人設置会社における会計監査は、監査役がメイン(一次的)なのか、それとも、会計監査人がメイン(一次的)なのか、
私の意見とこの教科書の執筆者の考えとは異なるようです。
「計算書類に関する直接的な監査結果」(ここでは会計監査報告)に署名をするのは、会計監査人である、
という点を鑑みると、会計監査人設置会社における会計監査は会計監査人がメイン(一次的)である、という考えに分があるでしょう。
ただ、会計監査人が計算書類の監査を行うのは、監査役による通常の会計監査に加えて、
さらに計算書類の適正さの確保を図るためである、と考えるならば、
やはり、会計監査人設置会社における会計監査はあくまでも監査役がメイン(一次的)である、という考えるべきだと思います。
株主は、計算書類の適正さの確保を図るために監査役に加え外部の会計専門家の力も借りただけだ、と考えるべきだと思います。
それから、上場企業においては、会計監査人は計算書類の監査を行い会計監査報告を作成しなければならないわけですが、
会社法上、その会計監査報告に関しては、監査役が、会計監査人の監査の方法または結果は相当であるか否か、
監査報告の内容として意見を表明しなければならないようです。
(このような二段構えの会計監査報告方法ですと、この時監査役は明らかに「二次的」の位置付けにあるということになるでしょう。)
しかし、「会計監査人の監査の方法または結果は相当であるか否か」を監査役が判断するためには、
監査役自身も会計監査を行わなければならないわけです。
会計監査人が行った会計監査は適正であるか否かは、自分自身も会計監査を行ってみなければ、判断は到底付かないものでしょう。
その意味においても、やはり、上場企業においては、会計監査人と監査役の両方が計算書類の監査を行わなければならないわけです。
また、「会計監査人の監査の方法または結果は相当である」と監査役が認めたということは、
会計監査人の会計監査には実が問題があったことが後で発覚した場合は、
会計監査人同様、監査役も相当程度の責任を負わなければならない、ということを当然に意味していると言わねばならないでしょう。