2016年8月31日(水)
2016年8月30日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160830.html
昨日は、買収する側のベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブの株主総会承認決議についてコメントを書きましたが、
今日は、買収される側の英国のSABミラーの株主総会承認決議について一言だけ書きたいと思います。
記事で言っている「英国の株式公開買い付け」は、日本の会社法で言うところの「株式交換」に近い取引なのだとすると、
株式の取得条件を株主毎に分けることはできない、ということになると思います。
SABミラーという会社において、株主総会という会社機関は1つしかないわけです。
そして、その株主総会という会社機関の構成員は全株主である、ということになります。
株主総会という会社機関を、第1位株主と第2位株主のみを構成員とする株主総会と、
第3位以下の株主のみを構成員とする株主総会の2つに分ける、ということはできません。
これは、日本の会社法においてだけではなく、英国の会社法においても同様であろうと思います。
ですので、株主総会承認決議自体は1回しか取りようがないと思います。
仮に株主総会を2回開催するにしても、株主総会の構成員はどちらも全く同じにしかならないからです。
ですので、英国の会社法でそのようなことができるのかどうかは分かりませんが、
「英国の株式公開買い付け」の承認に関する議案を工夫すれば、
株主毎に取得条件を変えた「英国の株式公開買い付け」を実施できるのかもしれません。
すなわち、「第1株主と第2位株主の取得条件は何々であり、第3位以下の株主の取得条件は何々である。」
という議案を作成し、全株主を構成員とした株主総会において、議案を可決させれば、
記事で言っているような「英国の株式公開買い付け」は実施できるのかもしれません。
ただ、そもそもの話をすると、株主総会決議というのは、「株式の取り扱いはどの議案内容に統一するか。」を決めるものです。
”株主毎に株式の取り扱いを異なるものにする”という内容の議案というのは、
そもそも株主総会議案として、株式会社の原理原則に反するものがあると思います。
記事で言っている「英国の株式公開買い付け」は、日本の会社法で言うところの「株式交換」に近い取引なのだとすると、
要するところ、「英国の株式公開買い付け」は、仮に議案に反対の株主がいてもその反対意見は完全に度外視するという、
「強制取得」を目的としていると言えるわけです。
ですので、全株主を構成員とした上で、議事を決する必要があると思います。
例えば、第1位株主と第2位株主のみを構成員とする株主総会では議案は可決されたが、
第3位以下の株主のみを構成員とする株主総会では議案は議決された、としたら、どのような取り扱いになるというのでしょうか。
仮に第1位株主と第2位株主からのみ株式を取得することにしても、インベブの経営目的は全く達成されないわけです。
確かに、両方の株主総会で議案が可決された場合のみ、インベブは全株式を取得する、という考え方はできなくはありませんし、
このたびの事例ではそうする流れとなっているのかもしれません。
しかし、やはり、「株主総会の構成員を2つに分けること自体ができない。」というふうに、理解をするべきであろうと思います。