2016年8月11日(木)
ToSTNeT取引 取引の種類(日本取引所グループ)
ttp://www.jpx.co.jp/equities/trading/tostnet/01.html
証券用語解説集(野村証券)
立会外取引(たちあいがいとりひき)
ttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/ta/tatiaigai_tori.html
>証券取引所の取引において、立会時間内に行われる取引(立会内取引)外に行われる取引をいう。
>主な立会外取引として、単一銘柄取引(大口取引)やバスケット取引、終値取引、自己株式立会外買付取引がある。
>東京証券取引所の立会外取引は、電子取引ネットワークシステムであるToSTNeTを通じて、すべてToSTNeT市場で売買される。
>立会外取引は、特に大口取引をおこなう機関投資家にとって、
>他の一般投資家に影響を及ぼすことなく売買を成立させることができる点がメリットとされている。
>なお、従来の立会外取引は公開買付け規制の対象外だったが、2005年6月の証券取引法(現金融商品取引法)改正により、
>買付け後の株券等所有割合が3分の1を超える場合には、公開買付けによらなければならないとされた。
過去の関連コメント
2016年8月10日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160810.html
2016年8月8日
富士重工業株式会社
自己株式の取得枠拡大および自己株式消却に関するお知らせ
ttp://www.fhi.co.jp/press/file/uploads/news/2016_0808_21.pdf
2016年8月8日
富士重工業株式会社
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ
ttp://www.fhi.co.jp/press/file/uploads/news/2016_0808_3.pdf
2016年8月9日
富士重工業株式会社
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得結果に関するお知らせ
ttp://www.fhi.co.jp/press/file/uploads/news/2016_0809_11.pdf
2016年8月9日
富士重工業株式会社
自己株式の取得終了および自己株式の消却に関するお知らせ
ttp://www.fhi.co.jp/press/file/uploads/news/2016_0809_21.pdf
2016年8月9日
富士重工業株式会社
投資有価証券の売却に関するお知らせ
ttp://www.fhi.co.jp/press/file/uploads/news/2016_0810_1.pdf
【コメント】
株式の持ち合いを行ってきたスズキ株式会社と富士重工業株式会社が、
これまでお互いが保有してきた相手方株式を同時に売却した、という事例です。
経営的には、株式の持ち合いの解消、という意味合いがあるのだと思います。
スズキ株式会社は、2016年8月9日に、東京証券取引所の自己株式立会外買付取引
(ToSTNeT-3)を利用し、
保有する富士重工業株式会社の普通株式を全て売却した、とのことです。
富士重工業株式会社にとっては、自己株式立会外買付取引
(ToSTNeT-3)による自己株式の買付により、
スズキ株式会社から自己株式を取得した、という形になります。
また、富士重工業株式会社も、2016年8月9日に、保有するスズキ株式会社の普通株式を全て売却した、とのことです。
ただ、富士重工業株式会社がどのような手段でスズキ株式会社の普通株式を売却したかはプレスリリースには書かれていません。
記事をざっと読んだ時は、富士重工業株式会社もまた、自己株式立会外買付取引
(ToSTNeT-3)による自己株式の買付により、
スズキ株式会社に対しスズキ株式会社の普通株式を売却した、ということなのだろうと思いました。
しかし、プレスリリースには、この点について記載がないので、おかしいなと思いました。
ただ、記事をよく読みますと、富士重工業株式会社は、保有してきたスズキ株式会社の普通株式を、
>東京証券取引所の立会外取引を利用して9日、証券会社に売却した。
と書かれています。
このことは、相手方の立場から見ると、スズキ株式会社は、自己株式立会外買付取引
(ToSTNeT-3)による自己株式の買付により、
富士重工業株式会社から自己株式を取得した、というわけではないということになります。
長年続けてきた株式の持ち合いの解消を行う、という場面では、同じ取引方法によりお互いが保有してきた株式を売却する、
ということの方が円満な解消に見えるということもあるように思いますが、この事例では株式売却方法が異なっているようです。
東京証券取引所の立会外取引には、
単一銘柄取引(ToSTNeT-1)、バスケット取引(ToSTNeT-1)、終値取引(ToSTNeT-2)、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)、
の計4つの取引方法があるようです。
スズキ株式会社が富士重工業株式会社株式を売却した時は、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を利用し、
富士重工業株式会社がスズキ株式会社株式を売却した時は、単一銘柄取引(ToSTNeT-1)を利用した、
ということなのだと思います。
>なお、従来の立会外取引は公開買付け規制の対象外だったが、2005年6月の証券取引法(現金融商品取引法)改正により、
>買付け後の株券等所有割合が3分の1を超える場合には、公開買付けによらなければならないとされた。
と書かれています。
この記述を参考に、昨日のコメントに一言だけ追記したいと思います。
この記述は、従来は公開買付を行うことなく立会外取引により3分の1超の株式を取得できた、という意味になるわけですが、
その理由は、「立会外取引は市場取引だから」であるわけです。
そもそも市場取引により3分の1超の株式を取得することは全く自由(今でももちろん全く自由)であるわけですが、
立会外取引は市場取引であるという論理立てがあるからこそ、
立会外取引により3分の1超の株式を取得することは自由であったわけです。
しかし、2005年6月の証券取引法(現金融商品取引法)改正により、立会外取引は実質的には市場取引ではない、
という考え方に重きを置くようになったので、立会外取引は公開買付規制の対象となったわけです。
すなわち、2005年6月の証券取引法(現金融商品取引法)改正後は、立会外取引は実質的に相対取引である、
という見方をするようになったわけです。
「単一銘柄取引(ToSTNeT-1)」では、立会市場の直近値から上下7%以内の価格で相手方を指定した取引ができます。
相手方取引参加者・銘柄・数量等を指定し、呼値が合致すると同時に約定となります。
取引価格こそ「立会市場の直近値から上下7%以内の価格」と決められてはいますが、
取引に際し相手方取引参加者・銘柄・数量等を指定するとなりますと、
もはやそれは相対取引の側面が極めて強いと言わざるを得ないでしょう。
取引に際し相手方取引参加者を指定するとは、他の一般の市場参加者はその取引に参加できない、ということです。
一般の市場参加者は参加できない取引、というのはやはり市場取引とは呼べないでしょう。
2005年6月の証券取引法(現金融商品取引法)改正は、より直接的には2005年1月に行われた
ライブドアと村上ファンドによるニッポン放送株の立会外取引が原因だったのだろうとは思いますが、
理論的に考えても、立会外取引は従来から相対取引の側面が極めて強いものであったのだと思います。
それで、立会外取引は相対取引なのか市場取引なのか、という論点と近い論点になりますが、
公開買付は相対取引なのか市場取引なのかそれとも相対取引でも市場取引でもない第三の取引なのか、
という点について少しだけ考えたいと思います。
私はこれまで何回か書いていることですが、公開買付は実は相対取引である、と思っています。
その理由は、公開買付者が、「この価格で株式を私に売ってもらえませんか」と、
市場外で各株主に直接訴えかけている株式取得方法だからです。
株主に会いに行き、個別に交渉をするということこそしないものの、
一定数以上の株式をまとめて取得したい旨、公開買付者は全株主に対し訴えかけているわけです。
市場取引では、取引の都度、買い手が価格を提示し、1単元ずつ株式を買っていくことになるわけですが、
公開買付では、一定数以上の株式をまとめて買う、という形を取るわけです。
この辺り、公開買付者は買付条件を広く一般に公表して株式を買うものですから、
公開買付は市場取引の側面があるのではないか、と思われるかもしれませんが、
公開買付では市場取引とは異なり、買い手は取引の都度買値を提示したりはしないわけです。
売り手は市場内にいる全ての株主、という点から見ると、公開買付は市場取引の側面があるのは確かですが、
買い手は公開買付者ただ1人のみ、という点から見ると、公開買付はやはり相対取引の側面が強いと思います。
また、市場取引では、取引の都度、取引価格(株価)は変動しますが、公開買付では取引価格(買付価格)は一切変動しません。
買付条件に株主が納得をし公開買付に応募すれば、それは買い手と売り手とが株式の売買に合意をした、ということでしょう。
売買価格が取引成立のための重要なポイントであるという点では、公開買付は市場取引の側面があるわけですが、
株式の取得方法自体が、公開買付は市場取引とは大きく異なると思います。
以前私は、「時価」のことを、「one-time
price」と表現しました。
市場取引における株式の売買価格は、まさに「one-time
price」だと思います。
しかし、公開買付における買付価格は、全く「one-time
price」ではないわけです。
むしろ、それとは正反対に、買付価格はその公開買付における「universal
price」と呼ばねばならないのではないでしょうか。
「全株主様から同じこの買付価格で買い付けます。」と公開買付者は訴えかけているわけですから。
同じ「取引における売買価格が重要なポイント」でも、売買価格の位置付け・意味合いが、
公開買付と市場取引とでは全く異なるように思うわけです。
「公開買付は相対取引である。」というこの論点について、明日も書きたいと思います。
A takeover bid is partly a negotiation transaction and partly a market transaction.
公開買付は、一部分は相対取引であり一部分は市場取引なのです。
Compared with a stock price, a tender offer price is a "universal price" in a transaction.
株価と対比してみると、買付価格というのは取引における「全株主共通の価格」なのです。