2016年6月17日(金)



2016年6月17日(金)日本経済新聞
ニフティのTOB終了 富士通、96%所有
(記事)




2016年6月16日
富士通株式会社
ニフティ株式会社(証券コード 3828)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ
ttp://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/06/16.pdf

 

2016年6月16日
ニフティ株式会社
支配株主である富士通株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果に関するお知らせ
ttp://www.nifty.co.jp/ir/pdf/20160616_01.pdf

 


過去の関連コメント

2016年4月28日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201604/20160428.html


 


【コメント】
2016年4月28日(木) にコメントしました富士通株式会社によるニフティ株式会社株式に対する公開買付が、
2016年6月16日に終了・成立したようです。
公開買付後、富士通株式会社はニフティ株式会社株式の96.74%を所有することになったわけですが、
公開買付前の時点でも、富士通株式会社はニフティ株式会社株式の66.59%を所有していたわけです。
完全子会社化が目的であるのなら、富士通株式会社は、公開買付は実施せずに、
市場内でニフティ株式会社株式を所有議決権割合が3分の2になるまで取得し、
完全子会社化のために必要な議案の決議を取るために、すぐに臨時株主総会を招集するべきだったと思います。
自社のみで3分の2以上の議決権を所有している以上、特別決議が通らないということは実務上も絶対にあり得ないわけです。
このような場面では、公開買付を実施する必要は全くないと思います。
それで、2016年6月16日に発表されたプレスリリースを改めて読んでいますと、興味深い記載があることに気付きました。
富士通株式会社が発表した「ニフティ株式会社(証券コード 3828)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」には、
以下のような記載があります。


1.買付け等の概要
(4)買付予定の株券等の数
(注3)
(2/3ページ)


>単元未満株式についても、本公開買付けの対象としております。
>なお、会社法(平成17 年法律第86 号。その後の改正を含みます。)に従って
>株主による単元未満株式買取請求権が行使された場合には、対象者は法令の手続に従い
>本公開買付けにおける買付け等の期間(以下「公開買付期間」といいます。)中に自己の株式を買い取ることがあります。


単元未満株式についても公開買付の対象となっている、という点については何の問題ありません。
というより、単元未満株式については買付の対象としない、という公開買付は金融商品取引法上実施できないかと思います。
ここでいう「単元」という概念は、会社法のみの概念に過ぎず、また、市場内における取引時に課せられる概念に過ぎません。
公開買付は、あくまで市場外の取引ですので、単元という概念には縛られないわけです。
また、非上場企業においても、株式に「単元」という概念を導入してもよいわけですが、
すなわち、非上場企業が定款に単元株制度を導入する旨定めることはできるわけですが、
たとえ定款に単元株制度の定めを置いている非上場企業であっても、
株式の譲渡自体は、単元株単位ではなく1株単位で行うことは会社法上全く問題ありません。

 


定款にその旨定めて単元株制度を採用している場合は、株式の譲渡は単元株単位でなければならないのではないか、
と思われるかもしれません。
しかし、それは実は間違いです。
株式の譲渡が単元株単位でなければならないのは、いわゆる上場株式を市場内で取引する場合のみです。
単元株制度を採用しても、議決権の発生が1単元単位になるというだけであり、株式の譲渡は従来通り1株単位で行えるのです。
”単元未満株式についても当然に公開買付の対象となっている”というのは、
公開買付だから単元未満株式も買付の対象となっている、ということでは決してなく、
そもそも単元未満株式は1株単位で譲渡できるものだ、という論理からきているわけです。
単元株制度と聞きますと、上場企業が思い浮かぶかと思います。
実際、非上場企業で単元株制度を採用している企業はほとんどないのではないかと思います。
しかし、証券取引所の上場規則には「株式の売買は単元株単位でなければならない」と書かれているでしょうが、
会社法には「株式の売買は単元株単位でなければならない」とは書かれていないかと思います。
会社法の教科書には、単元株制度の活用方法として、「株式の取引単位の引き下げ(投資単位の変更)」が書かれてあったり、

>単元株では、議決権を行使できる最低株数がそのまま売買単位となる。

とまさにそのまま書かれてあったりします。
しかし、これらの記述は上場株式を暗に(著者自身意識しないで)前提にしているのだと思います。
会社法上は、単元株も1株が売買単位です。
「単元株も1株が売買単位である」理由は、そう考えないと、例えば単元未満株式の買取請求が実施できなくなるからであったり、
公開買付に単元未満株式を応募できなくなるからでは決してなく、
そもそも株式は1株が売買単位である、という法理からきているのだと思います。
株式は1株のみで自身の権利を表象する、という株式に関する根本概念があるわけです。
「1株が1議決権を有する。」という基本概念(法理上の原則)があるわけです。
「議決権を行使できる最低株数がそのまま売買単位となる」という考え方はまさに正しいわけです。
株式の譲渡を行ったのに議決権が異動しない、というのは考え方としておかしいわけです。
しかしそうであるならば、やはり法理的には、単元株という考え方がおかしい、という結論に行き着くと思います。

 



それで、議論の都合上単元株制度は所与のこととしますが、引用した「注3」で私が気になっていたのは、
会社法に従って株主による単元未満株式買取請求権が行使された場合には、
対象者は法令の手続に従い公開買付期間中に自己の株式を買い取ることがある、
という部分です。
会社法に単元未満株式買取請求権についての定めがありますので、まずは会社法から該当部分の条文を引用したいと思います。


>(単元未満株式の買取りの請求)
>第百九十二条 単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。

>(単元未満株式の価格の決定)
>第百九十三条 前条第一項の規定による請求があった場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、
>当該各号に定める額をもって当該請求に係る単元未満株式の価格とする。
>
>一 当該単元未満株式が市場価格のある株式である場合
>当該単元未満株式の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額

>2 前項第二号に掲げる場合には、前条第一項の規定による請求をした単元未満株主又は株式会社は、
>当該請求をした日から二十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。


まず最初に私が思ったのは、会社法でいう単元未満株主というのは、1単元未満の株式数を所有している株主の全てを指すのだろう、
ということです。
つまり、1単元未満の株式数しか所有していない株主のことを単元未満株主というわけではないのだろう、ということです。
一見意味が分かりづらいかもしれませんが、例を挙げて言いますと、単元株式数が100株であるとして、
50株所有している株主も150株所有している株主も、どちらも会社法でいう単元未満株主に該当する、と私は思うわけです。
50株所有している株主は会社法でいう単元未満株主に該当するが、150株所有している株主は会社法でいう単元未満株主に該当しない、
というわけではない、と私は思うわけです。
そう解釈しないと、150株所有している株主は、50株分について単元未満株式買取請求権を行使できないわけです。
私のこの解釈については、それほど異論はないのではないかと思います。
50株所有している株主も150株所有している株主も、どちらも会社法でいう単元未満株主に該当する、
という解釈で正しいかと思います。
しかし、このように解釈しますと、株式の根本概念にそぐわないものを感じるわけです。
というのは、150株所有している株主が所有している150株の株式は、全て無差別だからです。
概念的な話になりますが、150株の中から、50株を取り出すことなどできないのではないか、というふうに感じるわけです。
つまり、150株のうちどの部分が単元未満なのか、という問いには答えられないように感じるわけです。
株式は、1株1株が独立している中で、その株式が150集まり、「150株」と呼ぶわけです。
「150株」のうち、一部分だけは会社側に買い取れと請求できる、というのはおかしいように感じるわけです。

 



株式は1株1株が全て無差別だから、どの50株でもよいのではないか、という考え方自体が非常に浅薄であると感じるわけです。
150株のうち50株について単元未満株式買取請求権を行使した後は、100株で1単元を構成する、
という考え方自体が概念的に非常に浅薄であると感じるわけです。
特段に「単元未満の部分だけを会社が買い取る」と言っているわけですから、
単元未満の部分というのは、他の部分に比べて、譲渡される目的物として特段に区別できないといけない、と感じるわけです。
英語で言えば、「単元未満の部分」というのは、
譲渡される目的物として他とは「distinguish」できないといけない、と感じるわけです。
形容詞で表現すれば、「単元未満の部分」が「distinguishable」でなければならない、と感じるわけです。
そうでなければ、「資産の譲渡」という取引として、どの資産を譲渡したのかが明確にならないと感じるからです。
150株のうち、どの50株が単元未満部分を構成しているのかが明確でなければならないと感じるわけです。
英語で端的に言えば、

An object should be distinguishable. (目的物は他と区別できなければならない。)

となります。
目的物を区別できなければ、何を譲渡し何を譲渡しなかったのかが分からなくなる、と感じるわけです。
株式は1株1株が全て無差別だからこそ、150株の中から50株を区別できない、と感じるわけです。
例えば、単に株式を10株所有しており5株だけ譲渡した、というだけであれば、どの5株を譲渡しても同じ、と理解できるわけです。
なぜなら、所有している10株には始めから区別はないからです。
しかし、この場合は、株式の譲渡に「単元未満の部分だけ」という条件が付いているわけです。
すると途端に、「どの部分が単元未満の部分なのか?」が問題になるように感じるわけです。
150株は全て無差別のはずなのに、単元未満の部分だけを譲渡しようとすると、50株だけを区別しなければならないわけです。
150株は全て無差別だからこそ、50株だけを区別することはできない、と感じるわけです。
この点、「50株所有している株主」の場合は話は簡単であるわけです。
「50株所有している株主」が所有している50株の株式全てが単元未満株式であるわけです。
その50株を区別する必要は全くないわけです。
50株の全てが単元未満の部分を構成する、というだけです。
以上の議論のように、「どの株式が単元未満部分を構成しているのかは明確でなければならない。」と私が思う理論的背景としては、
もし株式を他と区分できなければ、単元株主も単元未満株式買取請求権を行使できる、という解釈が出てくる、
という矛盾点が挙げられます。
例えば、100株所有している株主がいるとして、そのうち50株について単元未満株式買取請求権を行使できるでしょうか。
条文上は、「100株所有している株主」は単元未満株主に該当しないのではないか、と思われるかもしれません。
確かに条文解釈としてはそうだと思います。
しかし、「50株」は単元未満株式であるわけです。
そして、誰が譲渡するにしても、「50株」は「50株」であるわけです。
つまり、「50株所有している株主」が所有している50株と、「100株所有している株主」が所有している50株にはそもそも区別はない
というふうに思うわけです。
「50株所有している株主」が所有している50株は買い取るが、「100株所有している株主」が所有している50株は買い取らない、
というのは、株主を差別していることになるのではないか、と思うわけです。

 



会社が発行している株式には区別はないからこそ、
「50株所有している株主」が所有している50株は単元未満株式であり、
「100株所有している株主」が所有している50株は単元未満株式ではない、
と区別をすることができない、と思うわけです。
本来は線を引けないはずの株式に、単元未満株式買取請求権では株式に線を引いているわけです。
甲さん所有の50株は買い取りますが乙さん所有の50株は買い取りません、というのは株主平等の原則に反するのではないでしょうか。
極端な言い方をすれば、単元株制度というのは、単元株というくくりで株式や株主を差別することだ、と表現してもいいと思います。
甲さんが所有している50株と乙さんが所有している50株は異なる株式です、と。
また、単元株制度という考え方は、他の意味でも区別できないはずの株式を区別していることになります。
例えば、甲さんは株式を50株所有しており、乙さんは株式を150株所有しているとします。
この時、甲さんが所有している50株については、50株全てについて議決権はないと言えるわけです。
しかし、乙さんが所有している株式については、単元未満株式とされる50株分について議決権があるともないとも言えないわけです。
なぜならば、株式に区別はないのですから、
乙さんが所有している株式150株を、100株(単元株式部分)と50株(単元未満株式部分)とに分けられないからです。
仮に、1単元以上の株式を所有していることを理由に、乙さんに1議決権を認めるならば、
それは区別できないはずの株式を区別していることになるでしょう。
つまり、区別のない全150株を、1単元を構成する株式と、1単元を構成しない株式とに区別しているわけです。
換言すれば、つまり、区別のない全150株を、1議決権を構成する株式と、1議決権を構成しない株式とに区別しているわけです。
さらに換言すれば、どの株式も1単元を構成し得る、と表現できるわけです。
ですので、50株分について議決権がないとは言えない(全150株のうちどの50株に議決権がないかは分からない)わけです。
単元株という考え方を行うと、株式1株1株が独立しなくなる、と言えると思います。
単元株という考え方を行うと、株式が、1株単位ではなく、単元株単位になってしまう、と言ってもいいと思います。
そのことはむしろ、単元株制度からくる必然の結果であり、単元株の趣旨ですらあるのかもしれません。
しかし、そもそもの話をすると、出資を小口に細かく分割して、出資の最小単位として定義したのが株式(1株)であるわけです。
それなのに、出資の最小単位として定義した株式が会社には依然としてあるにも関わらず、
株式とは異なる別の出資の最小単位を会社に導入していることが、矛盾の根源なのではないでしょうか。
株式会社では、出資の最小単位は1株と設立時に定義している以上、他の何かを出資の最小単位と再定義することはできないのです。

 


最初の方で単元株制度は所与のこととすると書きましたが、
議論の都合上再び単元株制度の問題点を指摘することになってしまいました。
ここからは、本当に単元株制度は所与のこととします。
最初に引用した「注3」を読んで気付いたのですが、会社法に従って株主が単元未満株式買取請求権を行使した場合に、
対象者が法令の手続に従い公開買付期間中に自己の株式を買い取る際の買取価格が考察の対象として興味深いと思いました。
すなわち、この場合の会社による株式買取価格は、買付価格と同じでなければならないのだろうか、
という点が興味深いと思いました。
単元未満株式買取請求権を行使する場合の「単元未満株式の価格の決定」については、上の方で会社法の条文を引用しました。
簡単に言いますと、上場株式の場合は、買取価格は、市場価格が算定の基準になっています。
上場株式以外の場合は、買取価格は、株式会社と請求をした単元未満株主との協議によって定める額となっています。
上場株式以外の場合、買取価格に不満がある場合は、株主は、裁判所に対し価格の決定の申立てをすることができるようです。
第百九十三条の第二項を読む限り、上場株式の場合は、買取価格に不満があっても、
株主は、裁判所に対し価格の決定の申立てをすることができない、と解釈できるように思います。
第百九十三条の第二項の「前項第二号に掲げる場合には、」という文言は、
「第一項の第二号」の場合、すなわち、「上場株式以外の場合には、」という意味ではないでしょうか。
上場株式以外の場合は、価格の決定の申立てがあった場合には、

>3 裁判所は、前項の決定をするには、前条第一項の規定による請求の時における株式会社の資産状態その他
>一切の事情を考慮しなければならない。

と定められています。
いずれにせよ、上場株式の場合は、会社法上、買取価格は市場価格が算定の基準になっているのは確かであるわけです。
富士通株式会社が公開買付を発表した2016年4月28日(木)の終値は1,063円であったわけです。
一方、買付価格は1,495円であったわけです。
市場価格と買付価格との間に非常に大きな差異があります。
仮に、ニフティ株式会社が株主からの単元未満株式買取請求に応じる場合、買取価格はいくらであるべきなのだろうか、
と思いました。
会社法上の解釈としては、2016年4月28日(木)の終値である1,063円を算定の基準にすればよいのではないか、とは思います。
買付価格はあくまで公開買付者と応募株主とが市場外で合意をした価格というに過ぎず、市場価格とは異なるからです。
単元未満株式買取請求権を行使する株主は、公開買付への応募株主ではありません。
買取価格と買付価格とは関係がない、と言っていいわけです。
大まかに言えば、公開買付期間中であろうとも、会社法上は買取価格は1,063円であると算定される、となろうかと思います。
引用しました「注3」を読んだ時は、例えば投資家保護の観点から、買付価格を考慮に入れた買取価格でなければならないだろうか、
と思ったのですが、買付価格が市場価格に対しプレミアムが付いていようが市場価格からディスカウントされていようが、
会社法上の解釈としては、単元未満株式買取請求はあくまで市場価格に基づいた会社と請求株主との相対取引に過ぎないのだから、
公開買付の事実や買付価格の高低のことは一切考慮に入れなくてよい、という解釈になろうかと思います。
金融商品取引法という法律は、会社法という名の一般法の特別法(証券取引分野の特別法)という位置付けになるのだと思います。
単元未満株式買取請求は、会社法のみで完結する取引であり、金融商品取引法の影響は受けない、
という言い方をしてもいいのかもしれないな、と思いました。

 



In the case of a demand for cash-out provided in the article 179, it is a subject company that approves the demand.
On the other hand, in the case of the other procedures of a transfer of shares,
it is shareholders that approve the transfer.

第179条に規定のある株式売渡請求の場合、株式売渡請求を承認するのは対象会社なのです。
一方、株式譲渡に関する他の手続きの場合は、株式譲渡を承認するのは株主です。

 


A holder of shares less than one unit is a legal shareholder,
whereas a holder of fractions of less than one share is not a legal shareholder.

単元未満株主は法律上の株主なのですが、一株に満たない端数となるものの所有者は法律上の株主ではないです。

 


An object should be distinguishable.

目的物は他と区別できなければならない。

 


Nobody knows which share constitutes one unit of shares and which share constitutes less than one unit of shares
because all of the shares are indistinguishable.

どの株式は1単元の株式を構成しどの株式は1単元未満の株式しか構成しないのかは誰にも分かりません。
なぜなら、全ての株式は区別できないからです。

 


A share unit system diminishes the independence of shares.

単元株制度は、株式の独立性を弱めてしまうのです。