2016年3月31日(木)


2016年3月31日(木)日本経済新聞 公告
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独立行政法人国立大学財務・経営センター
第21期決算公告
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第31期決算公告
ピクテ投信投資顧問株式会社
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社コロプラ
(記事)


2016年3月30日
株式会社コロプラ
株式会社エイティング株式(証券コード:3785)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1340426

 

2016年3月30日
株式会社エイティング
株式会社コロプラによる当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ
ttp://v3.eir-parts.net/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=1340398

 

過去の類似事例についてのコメント↓

2016年3月29日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160329.html

 


【コメント】
株式会社コロプラが株式会社エイティングを完全子会社化する、という事例です。
株式会社コロプラは最終的には株式会社エイティングの全ての株式を取得することを計画しているわけですが、
その第一段階として、株式会社コロプラは株式会社エイティングに対し公開買付を実施するとのことです。
また、その公開買付が第一回公開買付と第二回公開買付の計2回に分かれていまして、
第一回公開買付は創業者をはじめとする一部の大株主4名のみからの応募を念頭に置いた公開買付であり、
第二回公開買付は一般株主からの応募を念頭に置いた公開買付となっています。
第一回公開買付の買付価格は309円、第二回公開買付の買付価格は758円となっています。
このような、完全子会社化を目的として公開買付を実施するにあたり、公開買付を2回に分けて実施し、
第一回公開買付では特定の大株主からの応募を想定し、
第二回公開買付では一般株主からの応募を想定する、
という手法は、一昨日2016年3月29日(火) で書きました、
株式会社バンダイナムコホールディングスによる株式会社ウィズに対する公開買付でもありました。
2016年3月29日(火) にも、類似事例ということで、コメントを書いたかと思います。
どちらの「第一回公開買付」においても「応募予定株主」と表現されているわけですが、公開買付実施に先立ち、
公開買付者は、対象者の特定の大株主との間で、株式の応募に関する契約を締結しているわけです。
特定の大株主のみが応募する「第一回公開買付」は一般株主が応募する「第二回公開買付」よりも買付価格が非常に低いわけですが、
特定の大株主はその旨了承しており公開買付にも必ず応募する、という約束を、公開買付者と特定の大株主とは行うわけです。
公開買付者としては、自分が果たすべき義務を果たしているにも関わらず、
応募予定株主が応募を取り止めるというようなことが起こってしまうと、
その後完全子会社化の手続きが円滑に進められなくなる恐れが出てきますので、
計画立案上、応募予定株主は必ず公開買付に応募をする、という確約が欲しいと思うわけです。
公開買付において対象株主毎に買付価格を分けることはできませんので、便宜上公開買付を2回に分けているだけであるわけです。
株式会社コロプラが発表しているプレスリリースには、

>本件両公開買付けは実質的に一体の取引であり、対象者の株主の皆様には、
>第一回公開買付けに続けて第二回公開買付けが実施されるとの前提のもと、いずれかの公開買付けに応募するか、
>又は、いずれの公開買付けにも応募しないかをご判断いただくことになります。

と書かれてあり、「第一回公開買付と第二回公開買付は実質的に一体の取引である」旨、そして、
「第一回公開買付けに続けて第二回公開買付けが実施されるとの前提を持っていただきたい旨、明記されています(2/26ページ)。
また、プレスリリースの他の部分にも、例えば、

>第二回公開買付け及び対象者の完全子会社化手続は一連の行為として第一回公開買付けと一体のものとみなされる

と書かれています(9/26ページ)。
株式会社コロプラとしては、第一回公開買付と第二回公開買付は一連の完全子会社化の手続きにおいてあくまで一体的な取引である、
というふうに位置付けているわけです。

 


それで、プレスリリースを読んでいてふと思ったのですが、
一昨日の株式会社バンダイナムコホールディングスの事例と今日の株式会社コロプラの事例を踏まえた上でのことになりますが、
「応募予定株主」や「公開買付者と応募予定株主との間の公開買付応募契約」の位置付けについて、ふとあることを思いました。
「公開買付者と応募予定株主との間の公開買付応募契約」についてはプレスリリース中に多くの場所に記載があるわけですが、
一番まとまった形で記載があるのは次の部分になると思い、キャプチャーしてみました。


「株式会社エイティング株式(証券コード:3785)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
1.買付け等の目的
(4) 当社と対象者の株主との間における公開買付けへの応募等に係る重要な合意に関する事項
(6/26ページ)



「公開買付者と応募予定株主との間の公開買付応募契約」においては、応募予定株主の応募の前提条件が定められているようです。
端的に言えば、プレスリリース記載の「前提条件@」から「前提条件B」が全て満たされている場合は、
公開買付応募契約に従い、応募予定株主は必ず公開買付に応募しなければならない、という意味です。
ただ、プレスリリースには応募予定株主の権利・義務について但し書きも書かれており、

>各応募予定株主は、その任意の裁量により、これらの前提条件の全部又は一部を放棄の上、
>第一回公開買付けに応募することは制限されません。

と書かれています。
これは簡単に言うと、プレスリリース記載の「前提条件@」から「前提条件B」が満たされていない場合であっても、
応募予定株主が第一回公開買付に応募することは自由だ、という意味です。
プレスリリース記載の「前提条件@」から「前提条件B」は、どちらかと言うと、
公開買付者側が果たすべき義務(前提条件)についての記載であり、応募予定株主を縛る意味合いは相対的にはないわけです。
もちろん、プレスリリース記載の「前提条件@」から「前提条件B」が全て満たされている場合は、
応募予定株主は応募する義務があるわけですが。

 



それで、以上の議論を踏まえた上で、今日ふとと思ったのですが、では、
”プレスリリース記載の「前提条件@」から「前提条件B」が全て満たされていたにも関わらず、
応募予定株主が第一回公開買付に応募しなかったとしたら、どのような考え方をしなければならないだろうか?”
と思いました。
公開買付者と応募予定株主との間のいざこざについては、公開買付応募契約の定めに従うなり当事者間で話し合うなり
してもらうしかないわけですが、ここでは、「株式市場への影響」という点について考えてみたいと思います。
株式会社コロプラが実施する第一回公開買付には下限が設定されており、
その下限は、応募予定株主からの応募株式数と同数になっています。
つまり、応募予定株主が応募予定数よりも1株でも少なく応募した場合は、第一回公開買付そのものが成立しないことになります。
第一回公開買付と第二回公開買付とでは、買付価格の価格差が非常に大きいので、
第一回公開買付に応募する一般株主はまずいないとは思います。
しかし、例えば、第一回公開買付と第二回公開買付とで、買付価格の価格差はあまり大きくない場合は、
株主の資金繰り等の日程の都合上、第一回公開買付に応募してしまおう、と考える一般株主がいてもおかしくはないわけです。
一般株主が第一回公開買付に応募することは全く自由ですし、
公開買付者としても、第一回公開買付では一般株主からの応募株式は買い付けない、ということは認められないわけです。
他の言い方をすれば、公開買付への応募株主に区別はない(どの株主からの応募株式かは無関係である)わけです。
そこで、1つの想定として、第一回公開買付に応募株主が契約違反をして一部の株式を応募しなかったのだが、
他の一般株主が一定数第一回公開買付に応募したため、応募株式数が下限に達し、第一回公開買付が成立した、
という場面を考えてみましょう。
この場合、応募予定株主からの応募に関し一部契約違反があったため、第一回公開買付の成立は無効である、
などとは公開買付者は主張できないわけです。
公開買付の成立は、応募株式数が下限に達したか否かのみで金融商品取引法上は判断されるわけです。
ですので、公開買付者は、応募予定株主からの応募に関し一部契約違反があったものの、第一回公開買付は成立した以上、
第一回公開買付に応募があった株式はこの場合は全てを買い付けねばならないわけです。
一応、これでも、第一回目の公開買付としては成功と言いますか、
公開買付者としては、当初の計画通り目的とする下限以上の株式を取得できたことには変わりないわけです。
ただ、応募予定株主との間で一部契約違反があった、ということで、その点はもちろん問題ではあるわけですが、
金融商品取引法や証券取引制度としては、公開買付者と応募予定株主との間の契約違反までは関知しない、ということになるわけです。
金融商品取引法や証券取引制度としては、第一回公開買付は成立である、というだけであるわけです。
そして、公開買付者が第二回公開買付を続けて行うかどうかも、金融商品取引法や証券取引制度としては、関知しないわけです。
公開買付者としては、応募予定株主が第一回公開買付において契約違反をしたことを理由に、
第二回公開買付を実施しないことにする(撤回する)ことは、金融商品取引法上は自由であると思います。
また逆に、公開買付者が第二回公開買付を続けて行う場合、第一回公開買付への応募予定株主が第二回公開買付に応募をする
ということもまた金融商品取引法は自由ということになるわけです。
応募予定株主が第一回公開買付において契約違反をしたことを理由に、
第一回公開買付への応募予定株主が第二回公開買付に応募をした株式については公開買付者が買い付けない、
ということは金融商品取引法は認められないわけです。
簡単に言えば、「契約違反による応募なので、あの応募は認められない・無効だ。」、とは公開買付者は主張できないわけです。

 



ここでの論点は、「公開買付応募契約の効力の強さ・法律的な位置関係」、ということになろうかと思います。
法律の基本的考え方・一般論として、契約違反による法律行為は無効、というような考え方はあるのではないかと思います。
商法分野で言えば、例えば代表権がない取締役が代表権があるふりをして商行為を行ってもそれは法理的には無効、
という考え方になると思います。
取引先を保護する趣旨では、”表見代表取締役”という考え方をする場合もありますが、
基本的考え方は、代表権がないなら代表権がないものとして取り扱われる、というだけかと思います。
代表権がない取締役が代表者として行った法律行為は無効であるわけです。
このような考え方が1つの参考になるかと思いますが、公開買付者と応募予定株主とが、
「第一回公開買付に応募をする(所有株式数を鑑みれば、第二回公開買付には当然に応募できない)」
という契約を締結した上で、応募予定株主が契約違反を行って第一回公開買付に一部応募しない、
さらには第二回公開買付に一部応募する、となりますと、公開買付者としてはその応募について無効を主張したいわけです。
しかし、金融商品取引法としては、公開買付者と応募予定株主との間の契約まではカバーし切れない、
という考え方になっているわけです。
金融商品取引法としては、一般投資家の保護や株式市場の秩序維持に重点を置いているわけですから、
個々の応募契約までは保護や規制の対象とはしていないのだと思います。
公開買付者としては、完全子会社化の手続きにおいて、できるだけ少ない金額で株式を取得していきたいわけですから、
第一回公開買付に想定外に多くの株式の応募がある分には、それほど大きな問題はないわけですが、
今までの事例とは逆に、第一回公開買付(一般株主のみが対象)の買付価格は高く、
第二回公開買付(特定の大株主のみが対象)の買付価格は低い、という株式取得計画になっている場合ですと、
公開買付者としては、特定の大株主に第一回公開買付に応募をしてもらっては困るわけです。
第二回公開買付には一般株主は絶対に応募しないわけですから。
本来の意味とは異なりますが"Time is money."だったからこそ、買付価格の低い第一回公開買付に応募する一般株主は想定される
わけですが、第二回公開買付の方が買付価格は低いとなりますと、そういった時間的要素(早期に現金化したいという目的)は
一切ないため、第二回公開買付の方が買付価格は低い場合は第二回公開買付には一般株主は応募を絶対にしないわけです。
もしくは、一般株主の中で、第一回公開買付では買い付けてもらえなかった分は渋々第二回公開買付に応募する、
というようなことも考えられますが、それでは公開買付者の目的とは異なり、一般株主の保護の観点に反するといえるでしょう。

 


この場合、公開買付者は、応募予定株主には買付価格の低い第二回公開買付のみに応募をしてもらわなければなりません。
ですので、「公開買付応募契約」に第一回公開買付に応募をした分については、
応募予定株主は公開買付者に返金をしなければならない、といった内容の条項を事前に盛り込んでおく必要があるでしょう。
契約に反し行為を行った・行為を行わなかった、というのは概念的にどこか漠然としているのだと思います。
契約違反を行った場合は金銭債務が生じる、という形にすると、法律上取り扱いが容易なのだと思います。
法律上取り扱いが容易とは、そもそも相手の行為を束縛しやすい、また、契約違反があった場合の罰則が分かりやすい、
裁判その他でも話がしやすい、という意味です。
刑法の分野では「財産刑」と呼ぶようですが、
一私人として相手を牽制する手段というのは現実には「お金」しかないのだと思います。
「応募予定株主は私との契約に違反しましたので、罰としてしばらく入ってもらいたいので、刑務所を貸して下さい。」
と国に言っても貸してはもらえないわけです。
「自由刑」を人に科することができるのは、刑法だけなのです。
契約書に事前に「契約違反があった場合は刑務所に入らなければならない。」という条項を盛り込んでも、
そのような罰則は現実には科しようがないわけです。
もしくは、契約違反をした相手をどこかの倉庫などに監禁しようものなら、そのこと自体が刑法に違反していることになるでしょう。
結局、一私人が契約違反をした相手に科することができるのは、刑法で言うところの「財産刑」だけなのです。
一私人が契約違反をした相手に科する罰則として、「自由刑」は全面的に禁止されているわけです。
簡単に言えば、お前は契約を違反をしたではないか、と言って相手をとがめる場合は、法律上は現実には「お金」になるわけです。
ですので、契約書では、契約違反を行った場合は金銭債務が生じる、という形になるように定めなければならないわけです。
そうでないと、相手を牽制する手段にならないわけです。
金融商品取引法の分野では、人に刑法上の責任が生じるという場面もあると思うのですが、「公開買付応募契約」を題材に、
契約違反があった場合、一私人としてどのような罰を相手に与えることができるのか、という点について考えてみました。
性悪説に立つと、公開買付応募契約は応募予定株主の応募行動を束縛する効果はあまりないのかもしれないな、と思いました。

 

A breach of a contract between a tender offerer and promissory shareholders
has nothing to do with investors in the market.

公開買付者と応募を約束している株主と間の契約違反は、市場の投資家には関係がないことです。

 

Law and a contract presuppose the view of human nature as fundamentally depraved.
If you stand on the view of human nature as fundamentally good, neither law nor a contract is needed from the beginning.

法律や契約は、性悪説を前提にしています。
性善説に立つのなら、はじめから法律も契約もいらないのです。