2016年1月22日(金)
2016年1月14日(木)日本経済新聞
パナソニック、来期から新制度 事業部自ら「増減資」 資本コストの意識一段と
(記事)
債務者になることができないならば、会社は資本金を任意に減少させることができます。
というのは、現代の株式会社制度における資本金の金額は、債権者のため会社が内部に留保している資産の金額を表しているからです。
ただし、資本金を減少させることができるのは、株主の数が1人の場合のみに限ります。
その理由は、株主の数が2人以上の場合は、たとえ会社には債権者は一切いないとしても、
資本金を減少させた後の会社清算の際の残余財産の分配が株主間で不公正になる恐れがあるからです。
他の観点から言えば、発行済株式総数が1株のみの場合は、会社は資本金を減少させることはできません。
法理上は、資本金の減少には、株式の買い戻しがすなわち株式の払い戻しが必ず伴う、ということです。
この記事の場合は、この文脈における資本金は本当の資本金ではないのかもしれませんし、
株式も実際には発行されていないのかもしれません。
ですので、この記事では、概念的に資本金を減少させることができる、と言っているわけです。
A capital in this context is, if anything, something like a kind of a
borrowing, I suupose.
The term of the borrowing is below.
The amount of
the interest is 8.4% of a principal (i.e. a capital).
The borrower (i.e. the
business unit) can repay the principal arbitrarily.
The business unit must
pay the dividend (i.e. the interest)
even though the business unit can't
record a net profit nor retained earnings.
To conclude, the business unit
doesn't have specific financial resources of a dividend on its imaginary balance
sheet
and there doesn't exist the order of the payment of the interest.
A
capital in this context is far different from an actual capital.
この文脈における資本金は、どちらかと言えば、一種の借入金のようなものだと思います。
借入の条件は以下になります。
○利息の金額は元本(すなわち資本金)の8.4%である。
○借入人(すなわち事業部)は元本を任意に返済できる。
○事業部は、純利益や利益剰余金をを計上できなかったとしても、配当(すなわち利息)を支払わなければならない。
結論を言えば、事業部の仮想貸借対照表に配当の財源というのはありませんし、利息の支払いの順位というのもないのです。
この文脈における資本金は、実際の資本金とは大きく異なっているのです。
From another viewpoint, the minimum individual on which the amount of its
profit and the amount of its asset
are calculated is a person including a
natural person and a juridical person.
A person is the minimum unit of
calculating a profit and an asset.
Therefore, on law, it is impossible to
calculate the amount of a profit of a part of a person.
And, still, this is
true also on accounting.
If a company wants to calculate the amount of a
profit of a business unit of the company,
the company must allot its various
costs to the respective business units.
But, the allotment basis is often
arbitrary, and it can be conceived at least in more than one ways.
On the
Income Tax Act of 1899, the minimum unit of calculating an income was a
transaction.
On the Income Tax Act and the Corporation Tax Act of
today,
the minimum unit of calculating an income is as it were a period "one
year."
Of course, existence which actually pays the income tax is a person
himself.
For existence which actually makes a transaction is a person.
他の観点から言えば、利益の金額や資産の金額を計算する最小単位は、自然人と法人を含む人なのです。
人が、利益や資産を計算する最小単位なのです。
したがって、法律的には、人の一部分の利益額を計算することはできないのです。
そして、やはり、このことは会計上も当てはまります。
会社が事業部の利益額を計算しようと思えば、会社は自社の様々な費用を各事業部に配賦しなければなりません。
しかし、その配賦基準はしばしば恣意的なものであり、少なくとも複数方法考えることができるのです。
明治三十二年所得税法では、所得額を計算する最小単位は取引でした。
今日の所得税法や法人税法では、所得額を計算する最小単位は、言わば「1年間」という期間なのです。
もちろん、所得税を実際に納付する存在というのは人自身です。
というのは、取引を実際に行うのは人だからです。
以上のコメントが、記事を読んで私が思ったことなのですが、以上のコメントを聞いた後、
では「本社が事業部に資本コストを課す場合における事業部の貸借対照表」は一体どうなるだろうか、と考えました。
会計処理としては会社法上の会社分割を行った場合の貸借対照表に概念的に近くなるのだろうと最初思っていたのですが、
頭を整理してみると、この文脈でいう資本というのは、事業部にとっては借入金に近いものだ、というふうに理解が進んだところです。
それで、管理会計上は、会社法の計算規則とは全く異なる事業の捉え方・損益の捉え方・資産負債の捉え方・資本の捉え方を
行わなければならない、というふうに理解をしたところです。
ここでのポイントは、事業部に借入金はない、という点になると思います。
事業部の事業運営の元手となる資金調達源泉は、本社からの出資のみなのです。
本社は、法人として借入金を負っているかもしれません。
そして、支払利息を負担しているかもしれません。
しかし、それは資本コストという形で事業部に課するべきであり、
管理会計上は事業部の資金調達源泉は本社からの出資に一本化しなければならないのです。
記事で言っている資本金(内部資本金)というのは、実際には全く資本金ではないのです。
資金調達源泉としての性質を鑑みれば、記事で言っている資本金(内部資本金)というのは、むしろ借入金と言わねばなりません。
ただ、経営管理上は、”事業部への貸付”と表現するよりも”事業部への出資”と表現する方が有り体に言えば聞こえがいいので、
経営上は出資だ内部資本金だ、と言っているだけであると思っていいと思います。
以上の考え方に基づき、管理会計上の各事業部の仮想貸借対照表を作成してみました。
会社法上の会社分割を行った場合の貸借対照表との違いに注意をして下さい。
会社法上の会社分割では分割会社は借入金を承継会社に承継させますが、
事業部制における事業部の仮想貸借対照表では管理会計上本社は借入金を事業部に承継させません。
その理由は、事業部の資金調達源泉を本社からの出資に一本化するためです。
事業部は法人ではない以上、法人税法上の取り扱いの影響を避けるため、また、費用の配賦ということを避けるため、
経営管理上は、事業部の資金調達源泉を一本化した上で事業部の業績を判断する必要があるのです。
(PDFファイル)
(キャプチャー画像1)
(キャプチャー画像2)
(キャプチャー画像3)
「ケース2:事業部制のまま事業部毎の仮想貸借対照表を作成する場合の各貸借対照表(管理会計ベース)」
の意味が分かりづらいと思います。
これは、本社は各事業部の損益を「営業利益」ベースで把握している、という意味です。
つまり、本社は各事業部の損益を支払利息を控除した経常利益ベースでは見ていない、という意味です。
「資本コスト」という考え方がこの文脈においては事業部に関する1つのキーワードになると思いますが、
支払利息と配当という2つの金融費用は、資本コストという形で言わばまとめて本社は事業部に対し管理会計上負担させている、
というふうに捉えると、各仮想貸借対照表の意味が分かると思います。
事業部制という考え方は、仮想的な部分があるわけです。
事業部自体は法人ではありませんので、例えば法人税は負担しないわけです。
法人税を負担するのはあくまで初芝電産株式会社という法人であるわけです。
そうしますと、会社法の規定に従うような形では事業部の配当の原資が算定できないわけです。
また、借入金の支払利息は法人税法上損金に算入できますが配当は法人税法上損金に算入できません。
したがって、事業部毎の損益の管理・把握の上で、支払利息と配当の整合性を図るのが難しいわけです。
ですので、本社としては、営業利益ベースで各事業部の損益を把握した上で、資本コストを各事業部に課している、
という管理方法を行うわけです。
仮想貸借対照表上、各事業部には借入金はありません。
各事業部の資金の調達源泉は全て本社からの出資(仮想上の資本金)のみです。
ただし、各事業部には各事業に直接関連のある仕入債務はあります。
仕入債務には支払利息はかかりませんので、法人税法の影響云々は度外視できるわけです。
事業部は法人ではない以上、資本と負債(借入金)との区別が付けられないわけです。
ですので、各事業部の「資金調達源泉(事業の元手)」に関しては、管理会計上本社からの出資に一本化し、
その上で、本社は各事業部に「資金調達源泉(事業の元手)」の費用(資本コスト)を課している、
という管理方法を取っているわけです。
本社としては、管理会計上、できる限り費用の「配賦」ということを行いたくないわけです。
なぜなら、配賦基準を設け配賦を行えば行うほど、恣意性が増してしまうからです。
費用は全て法人に帰属している以上、費用を各事業部に割り当てようとしても、
事業部毎の各負担金額というのは厳密には正確に計算できないわけです。
したがって、配賦を行わずに各事業部の損益を管理・把握しようとすれば、
本社は事業部の「営業利益」ベースで管理・把握することになります。
しかし実際には、本社は法人としては支払利息を負担していますし、さらには株主に配当も支払います。
ですので、事業部が本社からの調達資金を効率的に使っているかどうかを測る指標として、
資本コストという考え方を導入しているわけです。
少ない調達資金で事業運営を行っていけば、本社に余剰資金を返還することで、事業部は資本コストを削減することができるわけです。
以上の考え方を踏まえ、事業部の資金調達源泉は本社からの出資(仮想上の資本金)のみとなっており、
事業部の資金調達源泉として借入金は一切ない(仮に事業部に資金調達が必要な場合は本社から出資をしてもらう形になる)わけです。