2016年1月10日(日)


2015年12月14日
株式会社TASAKI
定款一部変更に関するお知らせ
ttp://www.tasaki.co.jp/wp-content/uploads/2015/12/whats209.pdf

 

過去の関連コメント

2015年12月18日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201512/20151218.html

 


【コメント】
2015年12月18日(金) に、株式会社TASAKI発表のプレスリリース「定款一部変更に関するお知らせ」についてコメントを書きました。
2015年12月18日(金) は、優先株式に対する「剰余金の配当」について書きましたが、
今日は、会社倒産時における優先株式に対する「残余財産の分配」について一言だけ書きたいと思います。


「定款一部変更に関するお知らせ」
別紙1 A種優先株式の内容
2. 残余財産の分配
(3/5ページ)




プレスリリースの文言は冗長に書かれていますので、論点を損なわない範囲で、少しだけ要約して書きます。
会社倒産時の「残余財産の分配方法」は以下のようになります。

@優先株主に対し、普通株主に先立ち、優先株式1株当たりの残余財産分配額として、200円を分配する。
 この「分配@」のことを「優先残余財産分配金」という。

A優先株主に対し、分配@「優先残余財産分配金」を行ってなお残余財産が残存する場合(この残余財産を「残存残余財産」と呼ぶ)で、
 (a)残存残余財産の額が残余財産分配時の発行済普通株式数に、分配@「優先残余財産分配金」を乗じた額に満たない場合には、
 残存残余財産については優先株主に対して残余財産の分配を行わない。
 優先株主に対し、分配@「優先残余財産分配金」を行ってなお残存残余財産が残存する場合で、
 (b)残存残余財産の額が残余財産分配時の発行済普通株式数に、分配@「優先残余財産分配金」を乗じた額を超える場合には、
 残存残余財産のうち上記額を超えない部分については優先株主に対して残余財産の分配を行わず、
 上記額を超える部分(「再残存残余財産」と呼ぶ)については、優先株主に対して、優先株式1株当たり、
 普通株式1株当たりと同じ金額だけ、普通株主と同順位にて支払う。

 


これだけは会社倒産時の「残余財産の分配方法」についてイメージがわきにくいと思いますので、
具体的な数値で考えてみましょう。
簡単な設例を設けてみましょう。
会社倒産時の、普通株式の発行済株式総数を100株、優先株式の発行済株式総数を10株、とします。
この時、会社倒産時の残余財産の金額が、@100円、A1,000円、B2,000円、C3,000円、D4,000円、E10,000円、
F20,000円、G22,000円、H30,000円、I50,000円の場合における、
普通株式、優先株式それぞれの1株当たりの残余財産分配金額は以下の表のようになります。


「普通株式、優先株式それぞれの1株当たりの残余財産分配金額」

(PDFファイル)

 

(キャプチャー画像)




注:
まず、上記@〜Bが、分配@「優先残余財産分配金」となる。この場合、普通株式には残余財産の分配は行われない。
優先株式に対する分配額が200円となる、残余財産の金額が2,000円の場合が、1つの閾値である。
次に、上位C〜Gが、分配Aの(a)の場合である。
優先株式に対し分配@「優先残余財産分配金」を200円に達するまで支払った後、
さらに残余財産がある場合は、普通株式に対し分配金額が200円に達するまで、普通株式に対し残余財産の分配を行う。
優先株式、普通株式共に、分配金額が200円となる、残余財産の金額が22,000円の場合が、1つの閾値である。
上記HとIが、分配Aの(b)の場合である。
優先株式、普通株式共に、分配金を200円に達するまで支払った後は、
さらに残りの残余財産については、平等に各株式に分配することになる。
この分配Aの(b)の場合では、再残存残余財産の分配額計算に際しては、株式数は110株として計算する。
例えば上記Hの場合で言えば、正しいと言うと語弊があるが一番スタンダードな計算式は、あくまで
両株式への分配額=200円+(30,000−22,000)÷110
であると考えるべきであろう。
確かに、”30,000÷110”という計算をしても同じ答えになるが、それはどちかと言うと検算用と考えるべきであろう。



会社倒産時の「残余財産の分配方法」は以上のようになるわけですが、
分配@「優先残余財産分配金」が「200円」というのはどこから算定された金額なのだろうか、とふと思いました。
1つ考えられるのは、この「200円」というのは優先株式の払込金額ではないか、ということです。
優先株主は優先株式を引き受けるに際し、1株当たり200円を払い込んだ(優先株主の株式取得価額は1株当たり200円)、
だから、優先株主は、普通株主に先立ち、優先株式1株当たりの残余財産分配額として、200円の分配金を受け取ることができる、
という定めになっていると考えられます(優先株式の貸借対照表価額が1株当たり200円ということであるわけです)。
確かに、この分配方法は、優先株式は償還されるものという考え方に合致するとは思います。
しかし、普通株式への分配(分配Aの(a)の場合)に関しても、200円という一種の閾値があるというのは、
論理的には少しおかしいような気がします。
確かに、まず優先株式に対し分配金を200円支払ったのだから、普通株式に対しても200円に達するまで分配金を支払う、
というのは、一見株式間の整合性が取れているようにも思えます。
普通株式に対する分配額の閾値200円は、特段普通株式の払込金額を表しているわけではない、というのも理解できます。
しかし、私が思うに、優先株式への残余財産の分配は、最初の200円で終わりなのではないだろうか、という気がします。
この分配方法ですと、優先株式が二重に残余財産の分配を受け取っているかのように感じるわけです。
他の言い方をすれば、優先株主が有する残余財産分配請求権は1株当たり200円まで、という考え方になるのではないか、
というふうに思うわけです。
昨日の三菱地所株式会社のハイブリッド債ではありませんが、優先株式というのも、償還されるという点において、
負債の性質を持つ”ハイブリッド資本”と表現してもよいものなのかもしれません。
優先株式は”ハイブリッド資本”だから、普通株式に追随する形で言わば2度目の残余財産の分配を受け取れる定めになっているわけです。
しかし、優先株式を償還する時というのは、払込金額で償還する、という考え方をするわけです。
「償還する」とは、「払い込まれた金額を返す」という意味ではないでしょうか。
そうしますと、負債同様、優先株式が受け取ることができる残余財産の金額は払込金額(この場合200円)まで、
という考え方になるように思うわけです。
なぜ優先株式は普通株式に優先して残余財産の分配を受けられるのかと言えば、端的に言えば負債の性質があるからであるわけです。
それなのに、今度は資本の性質を持ち出して、普通株式と同じだけ・同じように再び残余財産の分配を受け取るというのは、
虫がいいといいますか都合がいいといいますか、それはいいとこ取り過ぎやしないだろうか、という気がするわけです。
残余財産の分配に関して資本の性質を持ち出すのなら、はじめから普通株式と同順位で分配を受けるべきではないでしょうか。

 



ハイブリッド債や”ハイブリッド資本”というのは、相対的に他方の性質もあると見なせる証券、というような意味合いであって、
法的にはその証券は負債か資本かは一意に明確に決まりますし、決まらなければならないものです。
より正確に言えば、特に会計上は、ある証券が負債か資本か明確に決まっていないと、
貸借対照表のどの区分に計上すればよいかが分からなくなりますし、また、
計上後は各計上区分に応じた会計処理が求められる(負債は決済する、資本は決済しない、と一意に決まる)わけです。
概念的にはハイブリッドでも、法律上そして会計上はハイブリッドな証券など存在しないのです。
煎じ詰めれば、ハイブリッド証券という考え方が間違いだというだけであるわけですが、仮にハイブリッド証券を所与のことしますと、
ハイブリッドであるのはマクロで見た場合にと言いますか総じて言えば両方の特長があると言えるだけのことであって、
例えば、ある同一の場面・同一の取引(この場合、残余財産の請求・分配)において、
この証券は両方の性質を持っていると主張するのは間違いである(どちらか一方の性質のみに応じた取り扱いを受けるべきだ)
と思います。
端的に言えば、この分配方法ですと、優先株式が二重に残余財産の分配を受け取っていることになるように思いました。

 


The amount of the distribution of residual assets.

残余財産の分配金額

 

As soon as a company enters into a liquidation procedure,
both common shareholders and preferred shareholders will be one of the creditors.

会社が清算手続きに入ると同時に、普通株主も優先株主も債権者の1人になります。