2015年12月23日(水)


2015年12月23日(水)日本経済新聞 公告
臨時株主総会招集のための基準日設定公告
ウライ株式会社
(記事)



2015年12月11日
ウライ株式会社
株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ
ttp://www.urai.co.jp/design/pdf/ir/tanshin/info/20151211_ri_rinnsou.pdf

 

2015年12月22日
ウライ株式会社
臨時株主総会招集及び臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ
ttp://www.urai.co.jp/design/pdf/ir/tanshin/info/20151222_ki_kijyunn.pdf

 

過去の関連コメント

2015年11月12日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201511/20151112.html

 



【コメント】
ウライ株式会社が本日公告しています「臨時株主総会招集のための基準日設定公告」を読んでまず思ったのは、
臨時株主総会の開催日が「平成二十八年二月上旬の予定」というふうに記載されていることです。
まず、会社法上は、会社は株主総会の基準日を定めなければならないのですが、
基準日の翌日から権利行使日までの期間は3ヶ月を超えてはならない、と定められています。
つまり、基準日から3ヶ月以内に株主総会を開催しなければならないわけです。
そして、会社法上、まさにこのたびの「臨時株主総会招集のための基準日設定公告」のように、
基準日に関しては基準日の2週間前までに公告しなければならない、と定められています。
一方で、会社法上は、株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発信しなければならない、と定められています。
そうしますと、基準日を定めなければ株主総会招集通知を株主に送付できませんので、
最短日数で考えると、基準日設定の公告は株主総会の日の4週間前に公告しなければならない、ということになると思います。
つまり、株主総会の日から逆算して考えると、株主総会の日の2週間前の日を基準日と定めると同時に招集通知を発送する日とし、
その日(基準日)の2週間前までに基準日設定公告を公告しなければなりませんから、
最短日数で考えると、基準日設定の公告は株主総会の日の4週間前に公告することになるわけです。
例えば、基準日設定の公告を株主総会の日の3週間前に公告することはできない、ということになります。
それでは株主総会の招集手続きに瑕疵があることになるからです。
そういった会社法上定められた日数の観点から考えますと、このたびのウライ株式会社の臨時株主総会の場合は、
株主総会開催日は2016年2月上旬である一方、基準日は2016年1月7日、基準日設定公告日は2015年12月23日、ということで、
ぎりぎりの日程になっているということは全くない(日程には十分余裕がある)わけです。
ただ、瑕疵のない「株主総会の招集手続き」という観点から見ますと(招集手続きの流れを踏まえますと)、
結果的に”基準日は株主総会日の2週間以上前でありかつ基準日設定公告は基準日の2週間以上前になっている”ということであればよい、
ということではなく、やはり基準日設定公告の時点で基準日はもちろんのこと株主総会日も確定していなければならない、
と考えなければならないと思います。
要するに、株主総会が適法に開催されたかは株主総会日になって分かる、というようなことではなく、、
基準日設定公告日の時点で「この株主総会の招集手続きは正しく会社法を遵守している」ということが示されていなければならない、
というふうに思うわけです。
このたびのウライ株式会社の臨時株主総会の場合は、臨時株主総会の開催日が「平成二十八年二月上旬の予定」となっていまして、
仮に、臨時株主総会の開催日が2016年2月1日であっても、基準日設定公告日や基準日を踏まえれば、
会社法上は適法に株主総会は招集・開催された、ということにはなるでしょう。
さらに言えば、仮に、臨時株主総会の開催日が2016年1月21日(木)であっても、基準日設定公告日や基準日を踏まえれば、
会社法上は適法に株主総会は招集・開催された、ということにはなるでしょう(招集通知は2016年1月7日(木)に発送すればよい)。
ただ、私が思うのは、このような場合はそのように結果から適法性を判断するということではなく、
何と言いますか、正々堂々と言いますか、基準日設定公告を行う時点で、株主総会開催日まで含めて、
公告内容は全てが確定していてそれらは全て適法な招集手続となっている、ということが明確に示されているものでなければならない、
というふうに思います。

 



次に、このたびウライ株式会社が開催を予定しております臨時株主総会は、株主による臨時株主総会の招集請求によるものです。
臨時株主総会の目的は、取締役3名の解任、ということで、
何と言いますか、会社側から見ると、敵対的な株主からの株主総会の招集請求、という言い方ができるのかもしれません。
他の言い方をすると、取締役の解任を請求する株主というのは、
会社側からすると望ましいとは言えない株主、と言えるのかもしれません。
特に上場企業においては、会社にとって望ましい株主と望ましくない株主とがいる、ということになるわけですが、
敵対的な株主が株式を取得する(もしくはより大きな議決権を取得する)ことを回避しようとしている、という内容の記事がありました。


2015年12月22日(火)日本経済新聞
中国の万科、新株発行へ 不動産大手 敵対的買収に対抗
(記事)



敵対的な株主が会社の22.45%の株式を取得したわけですが、会社としては対抗措置を考えている、という記事になります。
会社が考えている対抗措置とは、記事には具体的には書かれていませんが、
会社にとって望ましい株主に対し第三者割当増資を実施すること(そして敵対的株主の所有議決権割合を低下させること)、
というふうに記事の見出しなどからは読み取れます。
この点についてですが、日本の会社法の場合は、条文上は、そのような第三者割当増資は認められる、と思います。
たとえ敵対的株主の所有議決権割合が過半数となっていようとも、会社法上は取締役会決議だけで新株式を発行できます。
その敵対的株主が会社側に正式に新株式発行の差し止めを請求しようとも、会社はあくまで取締役会決議のみで新株式を発行できます。
会社法上、会社が取締役会決議のみで新株式を発行できるのは、授権資本枠(定款の発行可能株式総数)の範囲内でのみなのですが、
多くの上場企業の場合、発行済株式総数は発行可能株式総数の4分の1(強)しかありません。
現在の発行済株式総数の3倍弱もの新株式を、会社は取締役会決議のみで発行できるわけです。
株主は確かに会社の最高の意思決定者ですが、おそらく会社法上は、臨時株主総会を招集し新株式発行の差し止めを決議しても、
会社はやはり取締役会決議のみで新株式を発行できると思います。
なぜなら、結局のところ、株式会社において新株式の発行は取締役会の専決事項だからです。

 


より正確に言いますと、現行会社法上は、株主総会の権限については、

取締役会設置会社でない会社→会社法に規定する事項および株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について
                           決議をすることができる。
取締役会設置会社→会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

となっています。
ですので、現行会社法上、取締役会設置会社でない会社であれば、株主総会決議により、新株式の発行を差し止めることができる、
という考え方になると思います。
しかし、現行会社法上、取締役会設置会社の場合は、株主総会決議により、新株式の発行を差し止めることはできない、
という考え方になると思います。
上場企業の場合は、まず100%が取締役会設置会社でしょうから、
上場企業では、株主総会決議により、新株式の発行を差し止めることはできない、という考え方になると思います。
「新株式の発行は株主総会決議による」と事前に定款に定めていれば、取締役会設置会社においても
株主総会決議により新株式を発行することになる(逆に取締役会決議では新株式を発行できない)わけですが、
定款に特段の定めがない場合は、新株式の発行は取締役会の専決事項となるわけです。
ですので、敵対的株主が、会社側の第三者割当増資を差し止めたい場合は、臨時株主総会を招集し、現在の取締役を解任し、
自分の意向に沿う取締役会決議を行う人物を新たに取締役に選任する、という手続きが必要になるわけです。
ただ、取締役会決議により一旦適法に発行された新株式は、たとえ臨時株主総会の招集手続き中であろうが、
有効に発行された新株式になります(第三者割当増資が無効になることはない)。
最初に書きましたように、臨時株主総会の開催までは最短でも4週間かかるわけです。
一方、ウライ株式会社のプレスリリースにもありますように、
株主からの株主総会招集請求に会社が即座に応じない(悪く言えばごねて時間稼ぎをし引き伸ばす)ことも会社法上は可能です。
その間、支配株主の意思に反し会社が取締役会決議により第三者割当増資を実施することは、会社法上は何の問題もないことなのです。
そういったことを考えますと、上場企業の場合は通常非常に多くの授権資本枠がありますので、
過半数取得後の会社による第三者割当増資を敵対的株主が防ぐことは、実際には非常に難しい、ということになると思います。
有利発行であれば株主総会決議が必要になりますが、有利発行ではない範囲であれば、
発行価額も取締役会決議のみで決めることができます。
ある上場企業の株式の過半数を取得したことをもって、「もう詰んでいる。」と表現した某敵対的買収者がかつて日本にいましたが、
実は全く詰んでいなかった、というのが当時の商法を踏まえた実態であったと思います。
たとえ敵対的株主に過半数の株式を取得された後でも、第三者割当増資や新株予約権発行や焦土作戦やクラウン・ジュエルを、
会社は取締役会決議のみで自由に行ってよかったわけです(現行の会社法でも考え方は同じです)。
過去実際にあった事例ですが、ある連結子会社が親会社以外の会社に対し親会社の意思に反し第三者割当増資を実施し、
突然その別の会社の連結子会社になったことがあった(親会社は最後まで連結子会社の第三者割当増資に反対していた)のですが、
商法上は第三者割当増資は「連結子会社の取締役会決議」のみで決めてよかったため、その第三者割当増資は認められました。

 


紹介しています記事についてもう少しだけ追記します。
記事には、

>宝能による株式の買い占めを受け、万科は18日午後から、香港証券取引所、深セン証券取引所での取引を停止した。
>新株発行の詳細な計画を発表するまで当面、両取引所での取引停止を継続する。

と書かれています。
これは、会社が証券取引所での取引を停止した、という意味に取れますが。
会社に証券取引所での株式の取引を停止する権限がある、というのはやはりおかしいと思います。
会社には(自主的な)株式の上場廃止を決定する権限がある、というなら、まだ意味は分かるのですが、
証券取引所での株式の取引を任意に停止する権限がある、というのは恣意性を感じる部分があると思います。
株式を上場させるとは、人単位で言えば、株主が株主でなくなる、という意味です。
なぜなら、株主が株主でなくならないと株式の譲渡(証券取引所における株式の取引)が成立しないからです。
他の言い方をすれば、人単位で言えば、株式の譲渡により、株式の所有者は所有者ではなくなるわけです。
もちろん、株式の新所有者が新たな株主になるという意味では会社にとっての総体としての株主に変動はないわけですが、
株式の上場と言いますと、個人株主であったり零細株主を前提にしているという面がありますので、
どうしても「株主が物事を決める」という側面が弱くなるのだと思います。
つまり、株式会社の成り立ちや原理から言えば全くおかしな話なのですが、
上場企業では、投資家保護も含めて株主のことも会社が決める・配慮する、といった具合になっているように思えます。
会社のコーポレート・ガバナンスなどは株主が決めなければならないと思いますが、
投資家保護の観点から株式の取引を停止する権限は、株主や会社ではなく、証券取引所にある、と考えるべきなのだと思います。
要するに、会社が株式の取引を停止するとなりますと、会社が株主を選択しているという面が出てくるように思うわけです。
少なくとも、証券取引所における株式の譲渡を会社が停止するというのは、やはりおかしな考え方だと思います。
会社に(自主的な)株式の上場廃止を決定する権限がある、という点については、意見は分かれるかもしれませんが、
法理的には、株式の上場とは株式の譲渡の活性化の意味しかないわけです。
あとは、そこにどれだけ投資家保護という観点を入れるか、だけの話であるわけです。
そういったことを考えますと、上場の位置付け自体が難しいため、上場の意思決定や(自主的な)上場廃止の意思決定は誰が行うべきか、
という問いには答えはない(もしくは、意思決定は株主総会決議による、くらいは考えられるが)、と言っていいと思います。

 

It is not a controlling shareholder but exclusively a board of directors
that is able to make a decision about stock issue.

株式の発行について意思決定を行うことができるのは、支配株主ではなく、専ら取締役会なのです。