2015年8月22日(土)
2015年8月21日
日本毛織株式会社
連結子会社の生産停止および特別損失の計上に関するお知らせ
ttp://www.nikke.co.jp/uploaded_pdfs/release150821renketsu.pdf
2015年7月10日
日本毛織株式会社
2015年11月期 第2四半期連結決算のお知らせ
ttp://www.nikke.co.jp/ir/settlement/pdf/2015_2shihanki_guide.pdf
【コメント】
日本毛織株式会社は、2015年10月19日に海外子会社を清算する手続きを開始する旨、
2015年8月21日付けで取締役会決議を取ったとのことですが、この結果計12億円の特別損失を計上することなったわけですが、
この12億円の特別損失を計上することについて、記事には、
>既に公表している15年11月期の連結業績見通しには織り込み済みという。
と書かれています。
2015年8月21日に日本毛織株式会社が発表したプレスリリース「連結子会社の生産停止および特別損失の計上に関するお知らせ」には、
>これに伴い、特別損失として構造改善費用が凡そ12億円発生する見込みであります。
>なお、平成27年7月10日付の当期連結業績予想には当該損失を織り込み済みです。
と書かれています。
プレスリリースに記載がある”平成27年7月10日付の当期連結業績予想”とは、
2015年7月10日に日本毛織株式会社が発表した決算短信等のことなのですが、
「2015年11月期 第2四半期連結決算のお知らせ」には、業績予想について、
>中間配当につきましては、前期と同様に一株あたり8円といたします。
>なお、期末配当は今期業績に応じ、増配も視野に入れております。
>通期の連結業績につきましては、セグメント別では増減があるものの、
>連結合計では前回発表の売上高1,030億円、営業利益70億円、経常利益72億円、当期純利益40億円
>を据え置くことといたします。
と書かれています。
同日発表の「2015年11月期 第2四半期決算短信」には何も書かれていません。
2015年8月21日
株式会社モリタホールディングス
関連会社の持分譲渡及び特別損失の計上に関するお知らせ
ttp://www.morita119.com/ir/pdf/20150824.pdf
>5.日程
>(1)取締役会決議日 平成27 年8月21 日
>(2)持分譲渡契約締結日 平成27 年8月21
日
>(3)持分譲渡時期 平成27 年9月(予定)
この日程の場合、株式売却損は一体いつ計上するべきでしょうか。
2015年8月21日でしょうか、それとも、実際に株式を譲渡する2015年9月であるべきでしょうか、
それとも、記事やプレスリリースには記載はありませんが、
株式譲渡の対価(譲渡価額は1米ドルではありますが)の受取日であるべきでしょうか。
というのは、寄付や社債・借入金とは異なり、目的物(現金以外の何らかのもの)の引渡しが伴う場合は、
費用や収益の認識のタイミングが法律と会計でズレることになるからです。
発生主義会計そして実現主義会計という考え方を行う場合は、株式の譲渡は行ったが株式譲渡の対価は受け取っていない場合は、
このたびの事例に即して言えば、
株式の譲渡を行った日に確定債権(未収入金勘定)が発生すると同時に損失も発生する、
という考え方になるわけです。
ただ、株式譲渡に関する取締役会決議日や株式譲渡契約締結日には、
会計上は何らの債権債務関係も、費用・収益も発生・実現しません。
会計上は、あくまで金銭に関連する債権債務関係のみを、そして、実現した収益・発生した費用のみを把握の対象としています。
たとえ法律上の義務や権利があるとしても、会計上は義務や権利としては全く認識されない(場面・取引がある)、ということ自体は、
会計と呼ばれる帳簿記載の技術・金銭に関する把握方法の特徴・特性を鑑みれば、何らおかしくはないと言わねばらないと思います。
会計では、全商取引・全商行為の中で、金銭や価額のみをその対象としているのだ、と理解する必要があると思います。
この点については、2015年9月9日(水)
に書きました内容が参考になると思います。
2015年9月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201509/20150909.html
2015年9月9日(水) に書きました、
「甲さん(買い手)と乙さん(売り手)との間で有体物の売買契約を締結した場合
ケースA:掛取引の場合」
が参考になると思います。
株式譲渡の対価は後で受け取る(例えば2015年10月以降)と想定し、
このたびの株式会社モリタホールディングスの事例に即して書けば以下のようになります。
買い手を「合弁パートナー」、売り手を「モリタ」と記載します。
合弁パートナー(買い手)とモリタ(売り手)との間で合弁会社株式の売買契約を締結した場合
ケースA:掛取引(株式譲渡の代金を後払いする)の場合
@売買契約を締結した日(2015年8月21日)
法律上は、どちらにも行為に関する確定した債権債務関係が発生する。
合弁パートナーには、合弁会社株式を買う権利と買う義務が発生する。
モリタには、合弁会社株式を売る権利と売る義務が発生する。
ところが、会計上は、どちらにも確定した債権債務関係が発生しない。
合弁パートナーには、代金を支払う義務(金銭債務)はまだ発生していない。
モリタには、代金を受け取る権利(金銭債権)はまだ発生していない。
A合弁会社株式を引き渡した日(2015年9月)
法律上は、行為に関する債権債務関係は消滅し、金銭に関する債権債務関係が発生する。
合弁パートナーには代金を支払う義務が発生する。
モリタには代金を受け取る権利が発生する。
会計上は、ここで初めて確定した債権債務関係が発生する。
また、会計上はここで(初めて)確定した売却損益が計上される。
合弁パートナーには代金を支払う義務(未払金勘定)が発生する。会計帳簿には株式の取得原価が記載される。
モリタには代金を受け取る権利(未収入金勘定)が発生する。会計帳簿には株式売却損が計上される。
B代金の決済を行った日(2015年10月)
法律上は、全ての金銭債権は消滅する。
会計上も、全ての金銭債権は消滅する。
合弁パートナーはモリタに株式譲渡の代金を支払う(未払金勘定が消滅する)。
モリタは合弁パートナーから株式譲渡の代金を受け取る(未収入金勘定が消滅する)。
代金の決済を行った日(2015年10月)にモリタに売却損益が計上されるわけではない。
モリタの2015年9月期(2016年3月期第2四半期)の財務諸表には、
貸借対照表には未収入金勘定が、損益計算書には株式売却損が計上されます。
発生主義会計・実現主義会計では、「取引の相手方は将来必ず代金を支払うことができる」ということを前提にしている、と言えます。
他の言い方をすると、「債権債務関係は将来必ず履行される」ということを前提にしている、と言えます。
もちろん、常識的に考えて、債権債務関係は必ず履行しなければなりません。
しかし、法律というのは、必ず性悪説に立って定められなければならないものです。
なぜなら、この世が全員善人なのであれば、すなわち債権債務関係は必ず履行されるのであれば、はじめから法律はいらないからです。
法理的には、大切なのは、実は債権債務関係が発生しないことなのです。
Not obligations, but cash.
債権債務関係ではなく、現金なのです。
【解説】
Concerning a commercial transaction, be neither an obligor nor an
obligee.
You should settle a bill by cash on the spot of a commercial
transaction.
商取引に関しては、債務者にも債権者にもなってはなりません。
商取引が行われたその場で、現金によって勘定を決済しなければなりません。
簡単に言えば、商取引では債権債務関係の状態になるのではなく、その場で現金で決済することが大切だ、という意味です。